激動の時代を生きる・・・
私が淹れるコーヒーは絶望的にまずい。職場に来て、朝の一準備が終わるとほぼほぼ必ずコーヒーを飲むが、それがほぼほぼ必ずまずい。
いつも「まずい。まずい」とぶつくさ言いながら飲むので、スタッフが呆れたように「ちゃんと分量を量って淹れたらどうですか」とアドバイスをくれるが、違う、違うんだよ。そうじゃないんだ、ツンドラよ。
これは考え方さ。マニュアル通りに生きてはいけない、っていうさ。
な~ぁんちゃって、なぁんちゃって。
単にスプーンで量る手間がめんどくさいだけ。屁理屈をつけ、めんどうだからどうしても目分量を押し通してしまっているだけ。
だからどうしても今まで奇跡的にうまい一杯に出会えたことは記憶にほとんどない。
このまえの日曜日。
入院なし。たまにはおいしいコーヒーでも飲むか。
マスクをしての散歩がてら、通りすがりの近場の喫茶店を窓から覗いてみた。
新型ウィルスのせいか、人が少ない。
入るとやっぱりとても静かだった。
コーヒーを頼み、啜る。
うまい。
喫茶店の、とりわけ静かな空間で飲むコーヒーはやはりうまい。
少し感涙しながら、時代考察を含んだ硬派な記事を読んでいた。
うむむ。
確かにすごい時代だ。自動車業界は100年に一度の変革期を迎え、AIは人間知能を凌駕するどころかさらにどんどん発展している。
プラスチックごみや温暖化などの環境問題。
地球にやさしいエコカーやらエコグッズ、エコ、エコとたくさん関連商品が出始めたと思いきや、今度は人に優しいぺこぱが出現。
視点を変えれば、国同士がちょっとばかし言い合いをし、アメリカでは民主党選挙戦が盛り上がり。トランプさんは意気盛んで・・・。
で、そんな背後からひたひたと新型コロナが忍び寄ってきたかと思っていたら、瞬く間のうちに世界を席巻して、株価まで連動してブラックマンデー以来の急落をし・・・。
さらにはさらには・・・。
あれ・・・?。
何かがおかしい。
静かに読書に耽っていた我が身に、背後からにぎやかな声がひたひたと忍びよってきた。
観葉植物を挟んだ、すぐ背後のブース。
元気な貴婦人方の声がそこで。
仲の良いグループそう。
本当にとても楽しそう。
話がどんどん弾んでいく。
「で、で」
「そうなんよ」
「えー、うそやろ」
【え~って、な、なに。ちょっと・・・】
にぎやかな声。
どうしても耳が、意識が・・・そちらへ行く私の心が・・・。
話題は近所の話から始まったはず。
それがどういう展開か、エリカ様からえりかちゃんへ、そのままスカーレットの恵梨香さんへと話題が飛んだと思ったら、ゆうこりんを経由し、落語さんの元アイドル妻へ見事に着地。さらにさらにはマーシーからマッキー逮捕まで話がどんどんどんどん飛んでいく。
「次は誰やろ」「あの人ちゃう?」「うそぉ~」「やってるってう・わ・さ」「え~っ!!」
【嘘っ、あ、あの人が・・・!!】
休日の静かなコーヒータイムが脆くも消えた。
コーヒーはとっくに冷えている。
ちょっとばかし、もうまずい。
我がコーヒーに似てきたかも・・・。
手元の文章に目を落とす。
【激動の時代を生き抜くには・・・】
うむ。
うむうむ。
考えることはやはり多々ある。
で、でも・・・。ま、まだ、まだ大丈夫・・なのかもしれない。
こんなあほな私も、そして背後の楽しそうな三人の貴婦人方も・・・。
いまのところではあるが、いわゆる激動のこの時代を、たぶん、まだ安穏と、十分目を輝かせて楽しんではいる。
いろいろと大変ではあるけれど・・・。
ありがたや。ありがたや。
そう思おう。
先日は、そう考えた日曜の午後でした。
2020年03月10日 19:34