ゆりの木動物病院|阪急庄内駅すぐ近く|大阪府豊中市

阪急宝塚線・庄内駅3分、犬・猫・ウサギを診る動物病院です。

お目よごしですが・・・。

うそっ、鶴屋八幡さんって…。

ちょっと前の休日。
千里中央の本屋へ行った。

ついでだ。
久しぶりにデパートの地下街へと足をのばす。

御座候が食べたくなったから…。
あの、姫路が生んだ、うまくて安い回転焼きを…。
へへへ。

さらについでだ。
隣の551蓬莱にも顔を出す。
息子の好きな豚まんも購入しよっ…。

と思った途端、ふと病院の近所に住む90代のおばあちゃんの顔が脳裏に浮かんだ。
そういや、あのおばあちゃん、和菓子が好きだと言ってたな…。

この頃、おばあちゃん、元気がない。
私と会うたびに「私な、体は元気やけど、最近耳が遠くなって困ってるんよ」。
いつもそう言って愚痴をこぼす。

会話も耳元だ。
けど、同じことを何度言っても、なかなかこちらの発言は伝わらない。
聞き取れず、おばあさんはなんだかもどかしそう。

そりゃ、元気も出んわな。
だって、去年までは聞こえんでもええことまで、よう聞こえてはったもん。
そんなおばあさん、このごろ、ほんまに山口さんちのツトムくんみたいにみえる・・・。

あかんあかん。
こんなたとえ、若い人にはわからんな…。

ま、ええわ。
よし、決めた。
和菓子でも買ってたろ。
551やめや。

で、何にしようかな。
歩きながら、いくつかの和菓子屋店舗の商品を見比べていると、鶴屋八幡の店員さんに声をかけられた。

「何をお探しですか?」
「日持ちして、あんこで美味しそうなやつ」
「なら、これなんかええんとちゃいます?」
と指さして教えてもらったのは、鶴屋八幡のもなか。

「美味しいですよ。うちのは百楽って言います」

おお。
これならええやん。
わしも食いたいし。
じゃ、ちょうだいするわ。
別々の袋にいれてくれる?

って後日、百楽持って、おばあちゃんのところへ。

「これ、いります?」
「何、それ」
私の手にある白い袋を見て、おばあさんは首をかしげた。
「もなかです」
「はあ?」

聞こえんか。
すんません。
じゃ、失礼して、耳元で声を張り上げまっせ。

「も・な・か」

その途端、おばあさんの顔が急に明るくなった。
「先生、ありがとな。わたしな、これ大好きやねん」
「そうですか。よかったよかった」

袋ごと渡しながら、昨日初めて知ったことをふと口にした。
「そういや、鶴屋八幡さんの本店って、今堀にあるんですね」
「へ?」
「今堀」
「はあ?」
「僕、八幡っていうくらいだから滋賀の近江八幡に本店があるもんだと勝手に思ってました」
「はあ?」

そう言った途端、おばあさんの眉がわずかにグネっと歪んだようにみえた。
なんだか怪訝そうだ。

聞こえんのかな。
よし。
もう一回、声を張り上げたろ。

「鶴屋さんの本店って今堀にあるんですね」

耳元に近づき、マスク越しから声を張り上げる。

でも、おばあさんの顔は曇ったまま。
口をぐっと閉じ、押し黙ったまま、つぶらな瞳でこちらをじっと疑い深そうに見ている。

まだ聞こえんかいな。
しゃーないな。
私はもう一度、繰り返した。

「今堀が本店ですって」

そしたら、ようやくおばあさんが怒ったように口を開いた。
「嘘やろ」
「いいえ」
「ほんまか?」
「ほんまですって」
「そなアホな…」
そう呟くと、また口を閉じた。
明らかに疑っている目だった。

なんでそんな疑うの?

私は仕方なしに続けた。
「ほんまですって。今堀が本店ですって」
「はあ? そんなんぜったい嘘やわ…」
「いいえ、店員さんがそう言ってましたもん」

おばあさんは、しばし黙りこむ。
こちらを見る目は、なんとも言えない、悲しさも混じっているようにも見えた。

「…ほんまか? ほんまにほんまか」
「はい。ほんまです」
私はもう一度うなづいた。
「へえ。そうなんか…」
そういうと、おばあさんはうつむき、ポツリと地面に吐き捨てるように、つぶやいた。
「本店、ナポリやったんか…」
えっ。
驚いた私をよそに、おばあさんはくるりと私に背を向ける。
「わたし、知らへんかったわ…」

そう言い残すと、袋を抱えて私からさっさと離れていく。
「ちょ、ちょっと待って…」

慌てて小さな丸まった背中に声をかけるも、私に訂正する暇もくれない。
おばあさんはそのままサンダルを土間で脱ぎ捨てると、逃げるようにそそくさと家の中へ入っていってしまった。

あかん。
どうしよ。
私は否定することもできず、しばらく道端に呆然と佇むしかなかった。

ほんま、どうしよ。
わし、いらんこと言ってもうた…。

帰り道、なんとも言えない気持ちを抱えたまま。
反省しながら、自転車で夜道を急ぐ。

途中、セブンイレブンの前を通りすぎると、店の前で、イタリアンフェアと書かれた幟の文字が大きく踊っていた。

ま、まさか…。
ああ、わかっているさ。

いくら天下のセブンイレブンでもそんな都合の良いことを私とおばあさんのためにしてくれるはずはなかろう。

だってだ。
鶴屋八幡だぞ。
イタリアンフェアにあるわけなかろう…。

だってナポリじゃないもん。
今堀だもん。
そうだもん。
和菓子だもん。

そうわかってはいても、どうしても否定したくなる。
あかん。
もう、気になって気になってしゃーないわ。

自転車で何度もぐるぐる店の前を行き来を繰り返し、やっぱり決めた。
寄ったろ。

鍵をかけ、レジを通り過ぎ、イタリアンフェアの棚を探した。

そして、なんと。

おおおおっ。
あるやん。
嘘やろ。
あるぞ…。
鶴屋八幡の百楽がこんなイタリア軍団のど真ん中に…。

……んなことあるわけないないということを、嫌というほど何度も何度もしかと確認して、渋々ため息つきながら店を後にしました。

さすが天下のセブンイレブン。
嘘つかねぇな。

で、私は…。
あれからもおばあさんと気まずいまま。
おばあさんは私の姿を見ると、ニコッと悲しげな笑みを浮かべ、そそくさ、スタスタ逃げていく。

その丸まった背中に向かって「待って!」と声を張り上げるもおばあさんには届かない。

もはや私の声は聞こえないのだろうか。
それとも聞きたくないだけなのだろうか。

なんとか誤解を解きたいのだけど…。
そう願って、はや一ヶ月近く経ちました。

今日もです。
「おばあさん! ちょっと!」

声をかけても、おばあさんは聞こえないふりをして、サンダルで、スタスタスタと逃げていく。

皆様、気付いていられたでしょうか。
実は、最近、毎日毎日、こんな熱い熱いやりとりが、当院の近くで繰り返されていたことを・・・。
今年は、とりわけバカみたいに暑い暑いバトルの夏となりそうです。
もう熱中症で頭がほんまのバカバカになりそうです。

願わくば、おばあちゃんがまえみたいに戻ってくれへんやろか。
おばあちゃんの耳が、半年前みたいに、また聞こえんでもええことまでちゃんと聞こえるようになってくれへんやろうか。
そうなったらどんなにありがたいか。

でも無理やろうな。
それなら、鶴屋八幡さんで構いませんわ。
どうか本店をナポリに変えてください。
じゃないと私、もう、ほんまに頭がどうかなってしまいそうです。
ぱかぱか言うてます。

ま、どちらも無理だとわかってはおりますけどね…。
へへ。

 
2022年06月30日 14:42

さらば、金色ウィークよ

さらば、金色ウィークよ。
あーばよ。

なーんちっち。
連休も終わり、普段の日常が始まりました。
皆様はいかがお過ごしでしたか。

今年は外出制限もなく、どこの行楽地も盛況だったよう。
中には海外旅行を選択された人もいたとのこと。

いいですな。
海外ですか。
私も行きたかったですな。
自分だったら、どこへ行ったかな。

やっぱモスクワかな。
だって、あの男にアントニオ猪木ばりのビンタを喰らわしてやりたいもん。

でも、そんなことできっこないよな。
あの人、人の命などなんとも思ってないから。
きっと、私ごときなど秒で抹殺だ。
ここに戻ってくるどころか、この世にも戻ってこれなくなる。

ならば、仕方ない。
この際、腹立たしい男への、感情任せの平手打ちはウィル・スミスにお任せして……って、あれ?
そういやぁ、あの人はあの人で、アカデミー賞から抹消されとったな。
おまけに、あれあれ?
熊本の方でも暴力沙汰で監督やコーチが現場から消されようとしてる。

なんかあっちこっちでバタバタしてるな…。
ほんま、地位の高い人が増長するとあかんね。
舵取りまちがえると、下が巻き込まれるもん。
下手すりゃ、沈没。
みーんな暗い海底へ沈んでしまうことになる。
あの小さな遊覧船みたいに。
悲しむ人が増えるだけ。
人間、傲慢になったらあかんな…。

と、学ぶべきことは学んで。
世の中よく見て、我がふりなおそっと。

で、話題を連休に戻す。
ニュースを見る限り、ゴールデンウィークはどこも混んでいた模様。
人混みを考えるとどこにも出かける気にならない。
それにお出かけはこの前の京都でじゅうぶん懲りた。

されど、ゴールデンウィーク。
何かしたい。
だって、連休中の入院がなかったので、今年は休みをしっかり取れる。

では何をしよっか。
せっかくの良い機会だ。
今までの人生をアーカイブ的に振り返ろう…って誰がするか、そないもん。

人生、振り返っても、いまさらムダ、ムダ。
くだらん時間が多すぎて、はなからやる気せん。
やーめた、やめたっと。
寝よ、寝よ。
と豊満な光に満ち溢れた近くの公園へ出向き、木陰の芝に百均で買ったビニールマットを敷いて、ふて寝を決め込む。

木陰で寝ては起きて、起きては寝て。
気が向いたら、時たま読書。
そんなんを繰り返し、夕方はただただ走る。

でも、実はこれが私にとって、とても素敵な時間の過ごし方でした。

世間は大抵、お出かけしてるため、普段込み合う公園も人がまばら。
散歩中の柴が、芝でじょじょじょっと小便してるくらい。
柴も芝も、なんだかとても気持ちよさそう。

天気は快晴。
草木は心地良さげに揺れている。
耳元で、かさこそと風のそよぐ音を聞きながら寝そべっていると、時間がとてもゆったりと流れていく。
まったりとして、なんとゴージャス…。

これ以上に、豊饒で有意義な時間な過ごし方はあるのだろうか。
平和ってほんまええな。
そう思いたくなるくらい、とても良い連休でした。
おかげで、いま私はとても満ち足りた気持ちです。

あとは、戦争さえ起きなければ、ほんとうに心が晴れ渡るのですが…。

でも、どうにもならんか。

ならば、えい。
なるがままよ。
目に映る嫌な映像は、とりあえず心の片隅にしまい込んで。

週が始まる。
気持ちを新たに。
さあさあ、前を向いて。

いざ、モスクワへ…。
って、ちゃうちゃう。

さ、働こ、働こ!
2022年05月08日 16:41

そうだ、京都へ行こう! でも、京都のどこ行こ?

4月中旬の日曜日。
とても天気が良かったので、朝早くから散歩に出かけた。

桜はだいぶ散り、あちこちに新緑が溢れ始めている。
気温は良。
風も心地よい。
なんと最高の日曜日。
気持ちが自然とうきうきしてくる。

歩いていると高架を走り去る電車が見えた。
晴天に駆け抜けるマルーンの車両がカッコよい。

そういや、電車に長いこと乗ってないな。
この数年、コロナのせいでどこにも行ってないもんな。
梅田にも出かけてないし。

もう、そろそろ頃合かもね。
三回目のワクチンも打ったし。
思い切って、ちょっと遠出でもしてみよっか。
よし。

改札口に向かう。
でも、行きたい場所など特段ない。
切符売り場の上に掲げられた路線図を見上げ、ふむと思案する。
「さて、どこいくべ?」

すぐに答えが出てこなかった。
そんな時には、やっぱりあのフレーズ…。

「そうだ、京都へ行こう!」
目的地は乗車してから決めればいいさ。

乗り込んだ特急はなかなか混んでいた。
仕方なく通路を歩いて行くと、ありがたいことに四人掛けの通路側の座席がひとつぽつんと空いていた。

見れば、隣は20代くらいのお姉さん。
ラッキーじゃないか。

ネーちゃん、京都まで一緒にいこか。
でへへへ。

にやついた顔で彼女の横にスッと腰を下ろすも、発車して、すぐに異変に気づいた。

横のお姉さん、本を読みながら、休むことなく、こほん、こほんしてる。
小さな空咳をずっーと。
必死に堪えようとしているけれど、無理みたい。

かわいそうに。
ちょっと心配だな。
話しかけてみよっか。

あんた、花粉症か?
喉、痛いの? 
ふーん。
飴ちゃん、やろか?
これ?
りんご飴や。
ちがうって? そういうことを聞いているんじゃない?
溶けてる?
そりゃ、しゃーないわ。これ、だいぶ前からカバンに入ってるやつやもん…。
いつくらいから?
うーん、かれこれ三年くらいになるかな…。
いらない?
なんで?
いらないものはいらないから?
なんでぇ。
リンゴ、じゅうぶん熟成してんで。
いやだって? ねばっと包装袋にはりついてるって?
大丈夫、大丈夫。
食えるって。
え、いらん? 
遠慮せんでええって。
ほら、あーんしてみ。
ほれ、ほれ。

なーんて声かけたら、迷惑がられるだけでなく、ここにいる大勢の乗客を全員敵にするな。
その上で、わし、ぽいっと鉄道警察につまみ出される…。

あかん。
想像しただけで空恐ろしくなってきたわ。
とにかくあかん、あかん。
それだけはやめとこ。

じゃ、どない声かけよ。
どっしよっかなぁー。

私が悶々と悩んでいる間も、お姉ちゃん、ずっと隠すように小さな咳を続けている。
そして、はたと気づいた。

おい、待て。
それで、ここだけ席が空いていたのか…。
つまりは…空咳ゆえの空席。

あかん、あかん。
悠長にそんなダジャレを言うとる場合ちゃうわ。
わし、明日、仕事あんねん。
こんなとこで統計に現れない濃厚接触者になっとる場合ちゃうぞ。

急に怖くなってきて、席を立ち上がった。
とりあえず外気に触れよっと。

ありがたいことに次にきた準急は、乗客が少なかった。
緑の長椅子を独占するように腰をかけて思う。

やっぱり、コロナの見えない影に怯えている自分がまだいるんだな。
ということは、遠出するほどの心の準備がまだ自分にはできていないってことか。

かと言って、もう高槻。
次は上牧。

今さら帰る気にもならず、されど終着の河原町までいく気もならない。
はああ。
フレーズ頼みはこれだから困る。
「そうだ、京都に行こう」。でも、結局「京都のどこ行こ?」ってなるもん。

さてさて。
どうしたら良いものか。

乗客用の長椅子に一人ぽつんと取り残されたように座って考えてこんでいると、ふと前に「ごりやくさん」という番組で賀茂別雷神社の特集していたことを思い出した。
別名、上賀茂神社。
世界遺産だと言ってたな。
厳かな雰囲気の境内だった。
スマホで調べると、京都最古の神社で、雷の強い力で厄を祓う、有名な厄除けの神様らしい。

さすがだ。
なんだか急に、上賀茂から「カモ〜ン」と呼ばれている気がしてきたわ。

すぐにGoogleで行き方を検索し、烏丸で地下鉄に乗り換える。
降りた北大路の街並みを見て、びっくり。
とても整然としている。
京都ってこんなに広々としてたっけ。
普段から大阪のごちゃごちゃした街並みに慣れているせいか、まるで見当がつかない。
とりあえず道路脇にあった地上図を頼りに、賀茂川を目指す。

河川敷はのんびりしていた。
とてものどかだ。
堤防の並びには、風情あふれる住宅が続き、向こうには街を見下ろす山々が連なっている。
やはり盆地だな。
山が迫って見える。
なんてことを思いながら、北山大橋、北大路橋とくぐって、お目当ての御薗橋。

右手を見ると、目印の大きな赤い鳥居がみえた。
その向こうに綺麗な芝生が広がっている。

鳥居横では馬が数頭繋がれ、柵越しには観光客。
何かの催しのようだ。
掲示板に貼られたポスターを見ると、賀茂競馬だって。
どうやらゴールデンウィークに開催される行事らしい。

ふーん。
その練習か。

そのまま鳥居をくぐって歩き続ける。
なんとなく来た道を振り返ると、鳥居の向こうからゾロゾロと厳かな正装の行列が現れた。

先頭には袴と白無垢の新郎新婦。
長い正装行列がゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。

前を歩く新郎新婦は神妙な顔つき。
緊張を隠せないでいる。
けれど、春の穏やかな日差しのおかげか、とても華ぎ幸せそう。
そんな二人の姿を眺め、私は新郎に我が身をふと重ねてみる。

君はまだ知らないんだな。
幸せが今だけと言うことを。

若人よ。
伝えておこう。
君の横を歩く、そのうるわしき新婦の真実を。
その白き角隠しの下にはね、本物のツノが生えているんだよ。

嘘じゃないさ。
本当さ。
流行りのフェイクなわけがない。

だって私は知っているんだ。
そのツノの怖さをね。
この身に突き刺さる痛みと言ったら、想像するだけで今も身震いしたくなるほどさ。

そうさ。
君も、日頃の行いには気をつけるが良い。
でないと、危険だ。

さあ、耳穴かっぽじって聞きな。

いずれ、君は餃子と一緒にホットプレートで踊り焼きにされる。
泣いてもダメだ。
喚いても無駄だ。
土下座したって許されやしない。
君は、熱き鉄板の上で、カンカン娘のようにひたすら踊り続けるしかない。
そんな慌てふためく君を見て、子供たちだって大喜びだ。

だはは。
めでたい、めでたい。

正装の行列を微笑ましく眺めながら、そそくさと行列に背中を向ける。
第二の鳥居をくぐり、境内に入ると「おっ、ここにも」
新郎新婦が、こっちにもあっちにも。

いるいる。
おるおる。

映像でも見た、有名な立砂の前では、白無垢に包まれた新婦を囲み、友人たちが記念撮影を行っていた。
ここでも、まだツノの存在を知らない新郎が、和やかな顔つきで、はしゃぐ新婦たちの姿を眺めている。

今日は、なんというハレの日なのだ。
いずれ快晴は曇天へと変わるというのに。
ひどい日には、土砂降りだ。
雷だって鳴り響く。
もうすぐおうちは落雷のドンチャン騒ぎだ。

いやいや、めでたい、めでたい。
さっ、いこ、いこ。

邪魔にならないように歩きながら、小さな祠を拝んで回る。
橋を渡り、楼門をくぐる。
本殿へと続く階段が見えた。
拝殿前には小さな列ができている。

では、順番待ちをして、祈祷。
しっかりとお祈りしておこっ。

なんとか頑張っていけますように。
ちゃんと生きていけますように。
世界が平和でありますように。

そして名残惜しそうに周囲を見渡しながら、拝殿場を後に。
そのまま階段を降りようとして、「えっ!」

階下へ出した右足が、スッと感触もなく抜けていった。
そのまま、ずでん。
石段から踏み外した右足が、ずるずると滑る。

気づけば、見事なまでに最上段の石畳に尻餅をついていた。
肘も強打。
頭は打たなかったけれど、滑り落ちた右足のせいで、自分でもびっくりするほど仰向けに倒れ込んでいた。

見上げた眼前には、とんでもなく澄み渡った青空。
青い。
青すぎる。
しばし、呆然。

驚いた祈祷客が寄ってきて、「大丈夫?」と声をかけてくれるも、こちらは恥ずかしだけ。
「大丈夫です。大丈夫です」
本当はお尻が痛くて仕方がなかったけれど、慌てて立ち上がるしかない。
お尻をパンパン払いながら、逃げるように階段を降りた。

はああ。
まさか拝殿前で尻餅つくとはね。
それも、見事なまでにすってんころりと。

なにが厄祓いじゃい。
大厄やないか。

神様に日頃の行いを見透かされたのだろうか。
今日は阪神と一緒に反省会だな。
気持ちがズドンと落ち込むのを覚えながら「早く帰ろ」と二の鳥居をくぐった。

芝では競馬の練習が始まっており、馬を鎮める乗り手たちの姿があった。
観光客が見守る中、一人の乗り手が暴馬から振り落とされるのが見えた。
放り出された男性が竹の柵に腰を強く打ち付け、痛そうに地面にうずくまっている。

きっとこの人も日頃の行いが悪いんだな…。
同類、憐れみの思い…。
ハハハ。
飯でも食お。

「昨日、賀茂別雷神社へ行ってきた」
「どこですか、それ」
「京都。世界遺産」
「へえ」
「そんでな、わし、コケた。拝殿前でびっくりするくらい見事に尻餅ついた」

翌日、神社でコケたことをスタッフにカミングアウトしてみた。

「わし、いよいよ神様に見放されたかもしれん」
「そんなことないですよ」
 温暖さんが慰めてくれる。
「神社にお尻をつけて、逆に運をつけてきたと思えばいいんですよ」
「おお、なるほど。そういう考え方もできるか。いやぁ、ありがとうありがとう」
気持ちが一気に立ち上がったのも束の間。
ツンドラ君が私のいたいけな心を粗雑に踏みにじってくる。
「へへ。なわけないっすよ。日頃の行いっすよ」
嬉しそうだ。
おかげで月曜から、また心がズドン。
抜け出せそうにない深いぬかるみへ、どっぷり沈み込んでいく。

お前、今度、暗闇で頭抱えてうずくまることになっても知らんからな。
ふん。

と、まあまあ。
でもまあね。
あれだよね。

外出にはまだ早かったということで。
軽はずみに「京都へ行こう」などと思ったのがいけなかったのだ。
他人はどうであれ、自分はまだ気持ちが追いついてなかったということ。
今度こそ本当に神様から見放されるかもしれん。

それよりも、とにかく。
日頃から行いだけはしっかりしておこ。
見直すべきは見直して。
そう学んだ、日帰り京都旅でありました。
2022年05月05日 22:02

今日は何の日?~Part2~

本日、4月8日。
おぁ~!

カルテに日付を書いてて、気付いた。
そういえば、お釈迦さまの誕生日だと昨年ツンドラから聞いたっけな。

なるほどなるほど。
なんとめでたい。
で、カレンダーを見て、また「おぁ~!」

なんたることやねん。
今年も仏滅やん。

まさかの二年連続とは。
まったくどないなってんねん…。

そう言えば、この前の大安の、それも天赦日の寅の日や。
「こりゃ縁起がええわ」と、わし朝からウキウキしとったら、出掛けさまに鉄の扉で指挟んで、えらいことになってもうた。
あまりの痛さに指がもぎれたかと思ったわ。
悲しいことに今も中指の爪が内出血したまま。
真っ黒けや。

飼い主さんたち、それ見て、
「先生、犬に噛まれたの?」
「奥さんとなんかあったの?」
って今も笑いよる。

ふん。
ほんまに……。

人の不幸、笑うなんて、まったくもってなんたることやねん…。

まあまあ。
そないぷんぷんするなってか?
そうやな、そうやな。
暦の六曜とかああいうもんって、結構いい加減なもんかもしれへんしな。

な、そうやろ。
恵方巻を恵方を向いて食っても、わし、毎日嫁さんに怒られてばっかや。
あんたも一粒万倍日に宝くじ当たったことないやろ。

煽られて終わりや。
ほんま、誰があんなもん考え出したんやろな。

疑うことはよくあらへん?
そうやな、そうやな。
わしもわかってんねん。
気持ちの問題なんやろ。

そんでもな、わし、カレンダーに書かれたあれ、ひそかに、かすかに疑い始めてんねん。
だって、わしな、それなりに月日だけは生きてきた。
けどな、仏滅も大安も、先負でも先勝でも、赤口やろうと友引やろうと、一日の中身はあんま変わりはなかったもんなぁ。
一粒万倍日に、蒔いた麦が爆発的に収穫されたって、ニュースで聞いたこともないしなぁ。

だから、あんま気にせんでええんとちゃうか。
きっと誰かの思惑に振り回されるだけやわ。

2022年04月08日 16:38

ドーナツを買って

日差しがようやく穏やかになった。
寒さは苦手だから、暖かな日差しがとても嬉しい。

公園には梅が咲き、民家の花壇で菜の花がそよ風に揺れている。
散歩中、ミモザと桜が同時に咲いているのを楽しむことができた。

待ちに待った春がきたのだ。
心が自然と華やぐ。

まだほんのちょっぴり肌寒いけれど、あともう少し。
木々には緑が芽吹き、もうすぐ色鮮やかな花々を楽しむことができるだろう。
これからもっと春が深まるはずだ。
本当に楽しみ。

心も春めく。

ウキウキとした心のざわめきを鈴音に、近くにできたドーナツ屋へ行く。
あまーいドーナツを食べれば、心がもっと賑やかになるかも。
スタッフたちも喜んでくれるだろう。

ドーナツを購入し、陽気に誘われるように神崎川まで足を伸ばす。
三国橋。
お気に入りの場所だ。

小さな橋の上を自転車や徒歩の人々が行き交っている。
176の迂回路のせいか、とてものどかだ。
昔、三国の渡しといわれた、その往時の面影がなんとなく感じられる。

見渡せば、すぐそこに大きな橋。
阪急の高架も見え、マルーン色の電車が目の前をがたごと走り抜ける。

欄干に手をつき、川を見下ろした。

穏やか波模様。
潮の香りがかすかに漂ってくる。
キラキラと春の日差しが水面に反射し、河川敷に生え始めた草々がうっすら青い。
とてものどかで気持ちがいい。

揺れる波模様を見つめながら、見たこともない大河の流れに思いを馳せる。
遠いドニエプル川の流れはどうなのだろう。
こんな穏やかさであればいいのだが。

ガスも電気も使えない。
食糧もない。
かの地に流れる川はまだ冷え切っているのだろうか。

きらきらとした川面を眺めながら、紙袋からドーナツを取り出す。
人目を気にしながら、かぶりつく。
今日に限ってなぜかそれほど甘く感じない。
気持ちの問題のせいだろうか。

凍てつくような寒さの中、肥沃な地に流れるあの川に、早く平和という春が運ばれんことを。
 
2022年03月14日 10:19

どうなってんだ?

単なる脅しだと思っていた。
でも、それは大きな勘違いで、今もこの時間に、遠い異国では信じられないような光景が続いている。

不思議なことに、侵攻と時を同じくして、なぜだか急に慌ただしくなった。
緊急の手術が入り、そのすぐ後に別の患畜の入院が入り、また手術で……。
夜はつきっきりの状態で、日中は診療の継続‥‥。
休む暇もなく、バタバタと。

その間、戦禍の状況がどうなっているのか、西側がどう対処するのかまともに見ている時間もなかった。

ただ、時折パソコンでBBCニュースを覗くと、侵攻はやはり止まることなく、拡大する一方で…。
目にする光景は、それはそれは見るも無惨なものばかりだ。

原発施設が攻撃を受け、学校や病院までもが標的にされている。
通りでは、乗用車がせんべいのように戦車によって圧し潰されていた。
古風なアパートメントには、大量に浴びた砲弾の弾痕が残され、悲鳴のような煙がもうもうと上がっている。

街路樹は焼け焦げ、街並みは変貌し、瓦礫の山を人々が彷徨っている。
あちこちで煙が燻る中、誰かを探して咆哮していた。
そして空襲警報が鳴り響き、地下壕に向かって一斉に走り出す。

今もライブ映像では、火の粉が雪と共に舞っている。
傷んだ街並みに、雪が悲しくなるほどに降り積もる。
包み込む氷点下の寒さがことさら事態を重く、辛く映し出す。

そして、こうしている間も……。
戦況は日毎に激しくなっている。
たけ狂った軍隊の牙は、剥き出しのまま、無慈悲なまでに日常を噛みちぎり、今もなお市民たちを襲い続けている。

明らかにウクライナは混迷を極めている。

昔、ソビエト連邦が崩壊した時のことを思い出した。
独立国が次々と誕生していく様は、何か神秘的なものを見ている気がした。
世界地図に新しい国境線が引かれていく。
それはまるで受精卵のようだった。

ロシアを極として、新たな命が生まれ、胚となる。
卵割は南西に向かって次々と活発に広がっていき、そして数年間続いた小刻みな分割は一旦穏やかになり、素人目に安定したように見えた。

でも、違った。

2.24。

20年前近く前に描かれた国境線が、この短き時間の内にみるみると歪んでいった。
それはあたかも、紙に書いた鉛筆の線を安物の消しゴムで擦ったかのように。

ぐしゃぐしゃに。
びりびりと。

境界線が無理やりに消されていく、その地図までをも引き破る勢いの生々しい異音が、この耳にもはっきりと聞こえてくるかのようだ。

もう、あの時、感じた新たな命の誕生など微塵にも感じさせない。
その逆。
凄惨を極めている。

こいつはがん細胞と同じだ。
同じ進行の仕方じゃないか。

手に負えない君主が詭弁を弄し、軍隊を使ってウクライナを侵す。
皇帝の口から放たれたがん細胞は、みるみると増殖を続け、国境を超えてはみ出していく。
隣接する正常細胞の壁を壊し、都市部へと浸潤を続け、さらには砲弾という凄惨な毒をあちこちにまき散らして。
傲慢と強欲にまみれた腫瘍が、瞬く間に、正常な街と人を破壊し続けていく。

人々は泣き、逃げ回る。
子供たちは怯えている。
動けない老人が頭を抱え絶望している。

薄暗い地下のシェルターで。
凍てつく寒さの真冬の森の中で。
彷徨い、ふらつきながら。
もしくは電気もガスもない廃墟の街に瓦礫と一緒に埋もれながら。

こんな凄惨な仕打ちは、人々の心に恨みや憎しみ、怒りしか生まないはずだ。
流された涙や大量の血は、やがて怨念となる。
そして肥沃な大地にべっとりと染み付き、根強く心にへばりつく。
雪解けのようにきれいさっぱりと消えやしない。
いまだに隣国といがみ合いを続ける我々の歴史を振り返ってもわかることだ。

ならば、いきりたつ君主を鎮めるにはどうすればいい?

相手は核を後ろ盾にした皇帝だ。
粛清を常套手段とする。

蛇蝎のごとく、挑発的に睨みを効かす皇帝を前に、側近たちはこわばった表情で萎縮し、声さえ絞り出せない。
西側の共同体も大戦へ発展することを恐れ、手も足も出せない。

誰ひとり、答えを出せず、報復を恐れ、巻きぞいにならぬことをひたすら望んでいる。

そして、その間も、ウクライナは東西の防波堤にされ、押し寄せる巨大な津波にただ独り懸命に耐え続けている。

残念ながら…。
考えても考えても…。
たとえ誰が何を言おうとも…。
プーチンという傲慢で強欲な、一塊のがん細胞を効果的に抑制できる特効薬などなさそうだ。

一体、世界はどうなっていく?

苦肉の策として講じた経済制裁が、真綿となり、暴君の首をジリジリと締め上げることができるのか。
それとも次々と繰り出す包囲網が、たけ狂う皇帝の激情をより一層たかぶらせ、彼の心をますます頑迷にさせるだけなのか。
そして、その結末として、砲弾の嵐が世界中で吹き荒ぶことになるのか。
それとも地図上からウクライナという肥沃な土地を抹消するのか。

相手は、コロナを凌ぐ脅威的な存在だ。
核を用いて、世界を一気に破壊へ導くこともできる。

心配と不安は尽きることなく、私たちは、事の成り行きをただ見守っているしかできない。
今日も世界の安寧が蹂躙されていくのを、ただじっと息をのんで眺めている。

そういえば、先日、図書館で偶然に手にした書物に、こんな一節があった。
〜村や町を破壊し、包囲し、圧政者として一般に知られる人。彼を賤しい人であると知れ。〜
二千年前以上に書かれた書物とのこと。
時代は進化したようで、人間の本質に変化はないらしい。

ああ。
荒ぶる暴君を鎮めることの、なんと厄介なことよ。

今日も地球が壊れていく。
ギシギシ、ガタゴトと。
砲音と悲鳴を響かせ、異音を軋ませながら。

人間がこの世界を回している?
はっ?
バカを言うな。
だとしたら勘違いもはなはなだしい。

地球の運転など自然に任せておけばいいのだ。
でなければ、こんな悲劇など起きなかったはずだ。
強欲と浅知恵をつけた人間による支配が、滅亡の方角へと、この世界をまっしぐらに進めている。

地球は勝手に自転する。
生物だって自然に呼吸する。
国境なんて必要ない。
土地の所有などしなくていい。
誰の束縛も支配も必要ない。
我々が支配する必要などなかったのだ。

ソフトもハードも必要ない。
人間が作りだすシステムほど脆弱なものはない。
なぜなら、どうせ凶暴化した軍隊が全てを破壊する。
なんなら、この世に、人類など存在しなくたっていい。

こんな我らのレゾンデートルが、ロシアの暴君の振る舞いで、惨めなまでに証明されようとしている。

そうでないことを、ひたすら祈る。
願いながら、一見まだ平穏を保っているこの街並みから、戦禍をじっと見つめている。
 
2022年03月10日 19:56

サンガールズ募集やて

先日、サンテレビ見てたら、サンガールズ募集と出ていた。

おい、おい。
ちょっと待って〜な。
あんたら、おっさんTVちゃうの?
「おっさんテ〜レビ〜♪」
って、よ〜く宣伝してんの、わしら、よ〜見てんで。
なのに、なんで若いキレイな姉さんたちを宣伝キャラクターにせなあかんの。
おっさんテレビなら募集するのはわしらおっさんやろ。
選ばれたら、わしら頑張るで。

やろ。
あんたも頑張るやろ。
な。

ええか。
ここ、関西やろ。
おもろいおっさんいっぱいおんで。
ガールズなんて言わず、わしら選抜して、宣伝した方がぜ〜ったい人気でんで。

わかってまんがな。
モデルのようなキレイなお姉ちゃんたちがあれやこれや宣伝するのが今までのテレビ局の常套手段なんやろ。

あまいな。
あまい、あまい。
若い女の子たちが美味しそうに豪華な食事に舌鼓を打つ。
大きな露天ぶろで彼女たちのすらりとキレイな背中を見せる。
そしたら温泉ホテルとかも人気出ると安易に思っとるんやろ。

ちゃうな。

ないない。
ないわ。

そんなん、浴場だけに欲情を駆り立てるだけや。
ありきたりすぎて、今の時代な〜んも宣伝効果ありゃせん。
それよりもな。
見てくれの悪いわしらのようなおっさんの方が、抜群の効果でる。

例えばや。
ホテルニュー淡路の宣伝いくで。

わしら全員、あの大きな露天ぶろや。
全裸で、肩にタオルをかけて大岩に腰をかけたり、湯に浸かったり、背中を流したり・・・。
そして黙ってだ、わしらは露天ぶろから思い思いにじっと雄大な海を見つめている。

やがてキレイな夕日が海面に映るはずだ。
その刹那。
夕日の紅い光が、海面に伸びるように映った瞬間だ。

わしらは全員、全裸のまま、おもむろに立ち上がる。
そして夕日に向かって、野犬になるのだ。
「ワオーン!!」

聞け、家庭で孤独を味わう男たちの叫びを。
聞け、職場で寂しげに弁当を一人食べる男たちの慟哭を。

おっさんたちは、頬に涙を流しながら無心で吠え続ける。
「ワオーン!!」「ワオーン!」「ウー!」「わぉーん!」
涙を流しながら、無心で夕日に向かって、ひたすら遠吠えをするおっさんたちの姿が流れたら…。

な、考えるだけで反響すること間違いなしやろ。
多くの老若男女の心を打つCMになること間違いなしや。
ついでに「イオーン!」とでも遠吠えすれば、イオンモールの宣伝までできてしまう。
な、考えるだけでおもろいやろ。

こんな光景をテレビで垂れ流すなんて、東京のテレビ局じゃできやせんで。
関西だからできる芸当やな。

そしてやな。
ニュー淡路の新CMに心を打たれた人たちが、一斉に新たに始まるGO TO トラベルを使って雪崩のように押し寄せる。
ま、一つ間違えば、GOTOトラブルになるかもしれんがな…。

ということで、サンガールズなんてありきたりな募集なんかやめてたらどうや。
おっさんボーイズの募集に変えた方がぜったいいいと思う。

その折りには、私なりに一生懸命、オッさんTVの宣伝をしたい。
そう考えている所存であります。
何卒、審査のほどよろしくお願いいたします。
わぉ〜ん!
2022年02月24日 11:26

鬼はそと・・・おっさんも

寒い日が続いていている。
何をするにも、億劫やな。
外へ出るにも「えいや」と気合を入れないとドアを開ける気にならない。

せめて気持ちだけは明るくしようと、朝から職場で「さむさむエブリデイ」と私なりのギャグを呪文のように口ずさむ。
返事はない。

ふーん、そうかい、そうかい。
あんたら何も聞こえないふりを決めこむのかい。
いいよ、いいよ。
聞こえないなら仕方がないもん。
この朝ドラ人気に絡め込んだ、シャレオツすぎるダジャレが通じないのなら、君たちがこちらを振りかえるまで口ずさんでやろう。

「もう一回言おう。さむさむエブリでぃやな。クスクス、おもろいやろ」
「・・・」
「あんな、朝ドラに寒いをかけてんやで」
「・・・」

スタッフたちは知らん顔。
全く能面づらで「まだ続けるつもりですか」と目付きで返答してくる。
お外と同じで、あなたたちも冷たいようで・・・。

先日のこと。
インターネットの記事で「日本の中年男性は世界で最も孤独な人間のうちの・・・」という表題が目に入ってきた。

何を今さら・・・。
そんなわかりきった事実を活字化して、我々中年男性にどうしろと言うのだ。
孤独なまま、あとは老いて死にいくだけの人間に今さら何を変えればいいというのだ。

大体、我々は、そんなこと、もう何年も前から気づいているんだよ。
家庭では、給料を持って返ってくるだけのただのオンボロマシーン。
職場では、大きなクマの木彫りの置き物より、ずーっと煩わしい加齢臭ただようただの生き物。
いてもいなくてもいいのさ。

ああ、そうさ。
わかってるさ。
家庭でも職場でも、私はひとりぼっちだよ。
オヤジギャグを呟きたくなるくらい孤独な人間だよ。
今さらそんなわかりきったことをはっきり言うなよ。
また悲しくなるじゃないか。
また心が冷え切ってくるじゃないか。
ということで、これがホントの「寒む寒むエヴリディ」。

おい。
お前ら、逃げるな。
頼むから背を向けないでくれぇ〜。
2022年02月03日 10:49

新年あけましておめでとうございます

新年あけましておめでとうございます。

思い返してみると、昨年はずっとバタバタとして、反省をしていることが多かったような……そんな一年だった気がします。

反省といえば、診療だけではなく、このブログも。
当初は、二週に一度はブログを更新していこうと思っていましたが、気づけば、1ヶ月に一度、2ヶ月に一度となり、そして今では。
全然、更新してない・・・。
ただ、何もしていなかったかというと、その代わりに。

年の後半から走り始めました。

最初は帰り道の小さな公園で。
不健康さと疲れやすさから。
無様な姿を誰かに見られるのは恥ずかしいので、夜、お墓のすぐ横にある小さな公園の土道を、一人で黙々と。
診療が長引いた日も。
長い手術の後の疲れた日も。
なんとか根気よく続けて。

最初は、ほんの数百メートルですぐに息が上がってしまっていたのが、気づけば日に5、6キロ。
今では場所を変え、昼間誰に見られようと恥ずかしがることもなく、コンスタントに走れるようになり、そのおかげか体力もついてきました。

大晦日も。
そして今日元旦も。
走ってまいりました。
雪がちらつく中を一人。
牛歩のようなペースで。
池のほとりの、木々に囲まれた誰もいない土道を、鴨が水浴びする姿を横目に、一人おっさんがトロトロと走っている姿は、少しお気の毒な光景に映るかもしれないけれど、毎日の運動のおかげで体調はよろしく、考える時間も増え、いいことだらけで我ながらびっくりです。

さあさあ。

とにかく新しい一年の始まりです。
今年もいろいろなことがあるでしょう。
うまく行かないことも、時には嫌になる日も訪れるでしょうが、それでもよそ見はせず、できるだけ前を見据えて。
仲間のような、家族のようなスタッフに支えられながら、今年も自分なりのペースで頑張っていこうと思います。

皆様は良い一年の始まりを迎えられたでしょうか。
これから目の前に立ちはだかる一日一日を、今年も元気で乗り切っていきたいものです。

では、本年も何卒、よろしくお願いいたします。
今年も、ご愛顧いただければありがたい限りです。
2022年01月01日 10:20

皇帝ダリア

いよいよ、冬到来か。
今週末には今年最強の寒気が襲ってくるらしい。

そうだよな。
低く垂れ込めたどんよりとした雲が、すぐ頭上に迫っている。
早朝、自転車を漕いでいると、冷気に肌がキリリと痛い。
 
そんな通勤途中のこと。
巨大な市営団地のすぐ脇の花壇で、皇帝ダリアが咲き誇っていた。

どんよりとした空に、今年もだ。
これでもかとばかりに、光を放っている。

凛と咲き誇るその姿は、毎年のこと。
周囲を圧倒するかのようだ。

冬枯れした花壇に、でんと居座るような佇まい。
節くれだった細い茎が、ぐんと真っ直ぐ天に向かって伸びている。
紫花を宙に高く掲げるその姿は、圧倒的で、周囲への遠慮などまるでない。
 
地味で、控え目で、しみじみとしていて、可憐で……。
そんな日本の花を想起するような形容などまるで当てはまらない。
いつ見ても私の目には異質に映る。

調べてみるとメキシコ原産とのこと。
よかった、よかった。
団地の花壇の、そんな小さな展示場で、外国由来のあなたは大事に育てられているのだから。

でもね。
外来の異質性が、全て受け入れられるわけでもないんだ。
 
この前はテレビで見たっけ。

特集番組だった。
淀川に生息するアリゲーターガーという外来魚の駆除。
鋭い牙と獰猛な顔だち。
剥き出しにされた歯牙であらゆる小さな種を次々と食いちぎり、呑み込んでいく。
捕獲までの間、そんなおぞましさや野蛮さをことさら誇張させた字幕が続いた。
 
本当なのだろうか。
本当にアリゲーターガーやブラックバスは、日本古来種を食い尽くしている、ただ野蛮なだけの生き物なのだろうか。
彼らも好んでこの国に連れてこられたわけではないはず。
鑑賞やら格好の釣魚として放流されたあげく、気づけば駆逐の対象となっている。

番組では、釣り上げられた魚たちが戦利品のように、土手にずらりと並べられていた。
アスファルトの上に横たわった彼らは、一様に眼をガッと見開き、口をパクパクさせている。
「いい迷惑だ。生きて何が悪いんだよ。」
もしや、そう抗議しているのではないか。
 
美しく凛と咲き誇る外来花は、花壇という小さな展示場で、手入れをされ、丁重に扱われる。
一方で、獰猛で醜悪な顔をした外来魚は、どんなに悠然と泳ごうと、圧倒的に露悪な存在として扱われる。
 
植物や魚だけ?
いいや、そんなことはない。

介護や農業の研修生とした来日した外国人がコロナ禍で職を失い、集団生活を余儀されているらしい。
狭い部屋に寄り合い、集団で途方にくれる姿があまりにも痛ましく映った。
同じ人間なのに、異国では同じ扱いを受けることができないとは。

本来、必要な人材として海外から呼び寄せられたはずが、今ではお荷物のように扱われている。
固有や古来という枠組みから外され、外来異種として見なされた存在は、この国では捨て駒にされ、いや、それどころか、時には何をしでかすかわからない、異質で、犯罪者のように後ろ指をさされることもある。

彼ら彼女たちも、本来なら、あの美しいダリアのようにこの異国で咲き誇るチャンスがあったはず。
期待に胸を膨らませ、笑顔で、楽しく仕事をすることを望んでいたことだろう。
それをアリゲーターガーのように、腫れ物として、時には害を及ぼす存在として我々は扱っている。
立場が変わった時、自分たちが異国で同じような扱いをされたら我々日本人はどう思うのだろうか。 

流動が激しいこの時代。
今さら、固有種をことさら大事にするガラパゴス諸島のようにでもなるつもりか。
苦しんでいる者たちを脇へ追いやるのが得策なのか。
そして、それはこの島国が頑迷に持ち続ける固有の閉鎖性から来るものなのか。
 
どんよりとした空。
冬めいた景色が、暗くもたげるように目の前で広がっている。
そんな深く沈みこんだ景色に、凛と開花する外国由来の紫花は、何かを訴えているようにさえ映る。

心はやはり晴れない。

生きている限り、どんな小さな徒花であろうが、笑顔で気持ちよく咲いてみたいことだろう。
たとえ、異国の空が、どんなにどんよりと曇っていようが。
なあ、そうだろ。

2021年12月15日 20:20

ゆりの木動物病院

06-6335-5387

診療時間
月・火・木・金
AM 9:30~12:30
PM 15:00~19:00
AM 9:30~12:30
AM 9:30~12:30
PM 14:00~17:00
休診日
水午後・日・祝日

病院のご案内はこちら

サブメニュー

モバイルサイト

ゆりの木動物病院スマホサイトQRコード

スマートフォンからのアクセスはこちら

北摂夜間救急動物病院
電話 072-730-2199
箕面市船場東2-3-55
大阪動物夜間急病センター
電話 06-4259-1212
大阪市東成区中道3-8-11