ゆりの木動物病院|阪急庄内駅すぐ近く|大阪府豊中市

阪急宝塚線・庄内駅3分、犬・猫を診る動物病院です。

お目よごしですが・・・。

今年の漢字

日曜。
近くの公園へ行った。
風は強く、
空は晴れ。
人はほとんどいない。
落ち葉を踏みしめ、芝生の広がる千里の丘に立つ。
見下ろすと、タイワンフウが赤く燃えていた。


今年の漢字は「金」らしい。
スタッフがスマホを差し出し、言った。
「これ、読めますか?」
「いいや」
首をひねる。


達筆なのか。
それとも弘法にも筆の誤りか。


まあまあまあ。
なんせ清水寺の最高位の貫主が揮毫したものだ。
凡人にたやすく読めるはずはなかろう。
第一、金というもの自体がそういうものじゃないか。
カネと読もうが、キンと読もうが、
そいつが目の前に置かれた瞬間、心が俄かに揺れる。
目は眩み、右に左に惑わされたあげく、
己を見失って、足元を掬われる者だっているくらいだ。
まさに魔物のような存在。
おいそれと凡人に扱えるものではない。
たやすく読めるはずはなかろう。

そう考えると、合点がいくか。

しかし
なにか腑に落ちない。
だって今年の自分にぴたりと当てはまるか?
いいや、全然しっくりこない。


では、合致する漢字はなんぞや。
首を傾げるまでもなかった。


「壊」だ。

今年、いろんなものがたくさん壊れた。
新年早々、能登が壊れた。
テレビをつけると海も川も、民家もビルも倒壊していた。
あの無惨な景色を見たとき、言葉が出なかった。


数日後。
今度は自分の周りでものが壊れ始めた。


まずはエコー診断装置。
焦った。
予約を受けていた心エコーができない。
頭を下げ、来院した飼い主さんに引き取ってもらった。


心電図も壊れた。
メガネも壊れた。
テレビも壊れた。
そして次は車だ。
むちゃくちゃに壊された…。


ことの発端はコロナ禍。
二年前の春。外出自粛モードが漂う中で問題が起きた。


まずは近くのゴミ捨て場。
収集時間外に生ゴミが出されることが頻発した。
早朝、カラスに荒らされる。
道路に散乱する生ゴミの、まあひどいことったら。
毎度のこと、後片付けをするのはこっちだ。
本人はなにくわぬ顔。


周囲の住民が注意してもまったく効果はない。
攻防が続く。
道路に散らばったゴミを見るたびに、ため息が出た。


そうこうする内に、
隣の書道室に通う子供たちの自転車が軒並み倒されるようになった。
ここらは民家が密集する地域。
隘路のような、狭い道路に子供たちの自転車を停める場所もない。
隣同士のよしみで、
当院の敷地内に子供の自転車を止めてもいいですよと了承していた。
その自転車が軒並み全部倒されている。
それも、無風の日に。
 

教室の人が私に問うてきた。
「これ、先生がやったんですか」
その目は明らかに私を疑っていた。
言われもない容疑に
「いやいや」と必死で釈明した。
そしたら今度は当院の患者さんたちの自転車まで倒されている。


絶対、あの人だよね。
実際に倒すのを目撃した人も現れた。
やっぱり、あの人か………。
皆、口々に「困ったね」と呟く。


だって、注意したところで聞かないもんね
そうそう。あのひと危ないもんな
突っかかってきたら面倒や


相手は同じ建物の三階に住む独居老人。
七十代。仕事はしてない。
奇行が目立つ。
三階の障子紙はびりびりに破れ、外から丸見え。
時折、奇怪な大声が聞こえるので、周りはみんな避けていた。
ほぼほぼ誰も寄りつかない。
親戚からも見捨てられている。


いやいや。
これは困ったで。


そうこうするうちに、三階に住む老人は
診察中にたびたび当院に乱入するようになった。
突然やってきては「自転車が邪魔だ」と
待合室にいる飼い主さんに食ってかかる。
犬はわんわん。
猫はにゃーにゃー。
老人はそれでもかまいやしない。
唾を飛ばしてわめくわめく。


あのコロナ禍に。
マスクもしないで。
診察室から飛び出し、注意すると、
目をひん剥いて、私にくってかかった。


だいたいな、お前に駐車場を貸した覚えはないで。
室外機を勝手に置くな言うたやろ。
どかさんとほんまに壊したるからな。


車を傘で叩き、
室外機を足で蹴飛ばした。
散々に怒鳴り散らした後、三階に足を引きずりながら戻っていく。


私にはもう対応できない。
警察、親戚の方、そして弁護士に間に入ってもらった。
契約書を見せ、問題ないことを確認してもらう。
その上で、念書を取らした。
騒がない。暴れない。壊さない。
一旦はそれで落ち着いた。


だが、
実際は心が落ち着いたとか、
問題は解決したとかそんな生優しいものじゃなかった。


老人を見るたび、胃がキリキリした。
なんせ相手は大家。
下手なことは言えない。
何か言い返せば、必ず「でてけ」と言われる。


ああ、できるもんなら出て行きたいさ。
あんたの下にはいたくないよ。
だけど、費用がいんねん。
動けへんねん。


階段から降りてくる姿を目撃するたびに内心ひやひやした。
視線を合わせないようにしてやり過ごす。
変なことをしてこなければいいなと願うしかない。


それがここにきて、まただ。
どかん、とやってくれた。


11月11日の1並びの日。
今日は縁起が良さそうだ。
機嫌よく出勤して、目を疑う。


車がみごとなまでに壊されていた。
前後のナンバープレートは引きちぎられ、
ワイパーもサイドミラーもあらぬ方向へ折られていた。
車体は傷だらけ。
冷え冷えとした秋の早朝、呆然と立ち尽くしかなかった。


こんなことをする人間は他にいない。
頭を抱えていると、隣の人が窓を開けた。
こちらを見て苦笑いをしている。


「あの人ですか」
「他に誰がおんの?」


真夜中にバリバリとものすごい音が聞こえたそうだ。
だが、怖くて窓を開けられなかったらしい。
そりゃ、そうだ。
闇バイトで世間が怯えている時だ。
窓を開けて、「おいこら」なんて注意できる人なんていない。


すぐに警察を呼んだ。
現場を見た警官は一言。
「こりゃ、ひどえな」
だが、こちらがなんと言おうと、
証拠がない限り動けないと言う。


これか。
民事に介入しないというのはこういうことか。


切羽詰まった。
心が乱れに乱れた。
焦っているうちに、患者さんがやって来た。
そんな時に限って、ひっきりなしに電話が鳴る。
次々とやってくる飼い主さんの応対にスタッフが追われた。
完全に浮き足だった。
警官に呼ばれては、診療の合間に外へ出た。
野次馬が集まっていた。
郵便局に来た人たちが、現場検証をみつめ、ひそひそ声で話している。
変な噂話をされるかと思うと、肩身が狭く、とても辛い。


恨めしげに三階を見上げると、
開けっぱなしの窓からはいつもの喚く声…。


はああ。
次はなにをすることやら。
患者さんに危害を加えなければいいが…。
それから毎日のように頭を悩ませることになった。


そして、ちょうど一ヶ月が経った先週の火曜。


手術を終え、遅めの昼食をとりに行く。
戻ってくると、車のワイパーに一枚の紙が挟まっていた。
なんやろ。
紙を持ち上げると、
「ドケナイと壊す」と書いてある。
殴りつけたような乱雑な字だ。
ご丁寧に『警告』と書かれている。
おまけに本人の名前入りだ。


こりゃ、夜中にまたやるな。
近隣の住民の手を借りようとそのまま病院を飛び出した。


その間、10分も経っていない。
隣宅に行き、対策を練っていると、
いきなり、バリバリバリ。
とてつもない大きな音が当院の駐車場から聞こえてきた。
慌てて窓をあける。
足をひきずり、大家が逃げていくのが見えた。
こんな真っ昼間にやるか?
目の前が真っ暗になる。


慌てて隣家を飛び出し、階段を駆け上った。
追いかけたものの、遅かった。
玄関ドアはぴしゃりとしまっている。


警察を呼んだ。
またしても事情聴取。
来る警官ごとに何度も同じ話をするはめになる。
そうこうするうちに午後の患者さんが来院し始め、頭も心も混乱。


私だけじゃない。
スタッフもてんやわんや。
待合には飼い主さんと動物だけでなく、お巡りさんも刑事さんもいる。
それから大家の親戚も来て、もうむちゃくちゃだった。


診察後、警察と話した。
「先生、本人がこう言ってますけど、事実ですか?」
聞けば、
「あいつとは賃貸契約を交わしてへん」
「お金を一度も振り込まへんねん」
「あいつは一階を勝手に占拠してるんや」


そんなバカな。
事前に用意していた契約書のコピーを警察に見せた。
振り込みだって一度も怠っていない。
嘘だと言うなら、管理会社に聞いてくれ。
すぐに警察に裏付けをとってもらった。


警察からその旨を本人に伝えてもらう。
だが、警察が何度本人にこのことを説明しても、五分後には振り出しに戻るらしい。
刑事さんが首を横に振った。

 

こりゃあきまへんで。
あの人、また同じこと言うてますわ。
話がまったく通じませんな。
ありゃ認知も入ってますな……。


私も三階に向かった。
大家がお巡りさんに囲まれている。
私に気づいた老人の顔色が一変した。
「おりゃあ!」と私に掴み掛かってくる。
痩せさらばえた老人が目をひん剥き、顔を真っ赤にして「金払え」と叫ぶ。
複数の警察官が食い止めてくれるも、こっちは訳もわからず、目の前の老人が暴れる姿を呆然と立ち尽くして見つめることしかできない。


結局、以前から抱えていた統合失調と認知低下の問題で、逮捕ではなく、強制入院という形に落ち着いた。


先生、それでええですか。
ええもなんも。
そんなんええわけないやん。


車は二度壊された。
時間は取られ、煩雑な手続きに追われた。
お金も飛んだ。
無駄な労力を費やした。
予約していた患者さんはあれ以来こなくなった。
信用を失ったかもしれない。
なにひとついいことなんてない。


ああ、どうしてこんな理不尽な目に遭わねばならぬのだ。
理解できない。
まったくもって理解できない。


なにかがおかしい。
なにかが歪んでいる。
だって、この間もあちこちでいろんなものが壊れていくだろ。

遠い向こうでは地雷が踏まれ、
戦車にドローンが突っ込み自爆する。
空にはミサイルが飛び交い、
集合住宅は破壊され、大地がざっくりと裂けた。

寒々と凍てつく空気は怯えたように顫え、人々が路上で暖をとりながら頭を抱えている。


かたやここは、安全で幸せな世界だ。
夜にはネオンがきらめき、きれいで華やかな世界が広がっている。


だが、きっとフェイクだ。
この国の安全神話は崩れた。

見知らぬ男たちが勝手に押し入る。
バールを振り上げ、襲いかかる。
昨日はマクドで人が刺された。
三宮でも人が刺された。
繁華街にある病院が放火されたのは三年前。
電車に飛び込む人だって後をたたない。
ドンキの下ではオーバードーズで失神している。
それでもネオンの下には蛾誘灯にいざなわれるように若者が次々と集まってくる。


安全で、綺麗?

それってもう過去の話じゃないの。
だって令和って響き、今のこの国に似合わないじゃん。

地方へいけば、木々が切り倒され、剥き出しになった山肌に太陽光発電のパネルが黒々と覆い尽くしている。
昔、澄みきっていた外気はいまや排気ガスや浮遊するマイクロプラスチックに塗れ、すぐ近くの工場からはPFASが垂れ流されてもそ知らぬ顔。
遠くの建屋から放出されたのは処理水なのか汚染水なのか。
いまだ要領を得ないまま、トリチウム入りの排水が海水へ放出される。

ああ、原子力はありがたいよ。
ネオンで街を煌びやかにしてくれる。
街灯が夜をあんなに明るく照らしてくれるんだ。


でもさ、
東電の電灯って、真実は照らさないよね。
だって壊れた建屋の中は依然、闇のままだもん。

 

ああ。一体、どこまで壊す気だ。
SDGs? COP21?
おいおい、口先、小手先だけの対策じゃないよね。
えっ。
まさか官民そろってのグリーンウォッシュか。
眺めていると、そんなふうに勘ぐりしたくもなる。


そうこうするうちに世界は最後の切り札を切った。
出されたトランプのカードはまたまたあいつだ。
分断が加速する?
世界中のあちこちに裂け目が広がっていく?

これが遠い海の向こうの話であればまだいい。

だが、対岸の火事どころではもはや済まされそうにもない。

なぜなら、猿真似したかのように、
選挙で呆れた様をさらけだしたのはこの国も一緒だ。
ありゃひでえもんだった。
あんな小さな隣県だって、荒れまくったし。

昔、ハンカチ王子というイケメンがいて、日本中に熱狂的な騒ぎが起こった。
今度は同じ苗字の、おじぎ王子に人々が熱狂しだした。


知事選だろ。
なにをそんなに騒ぐ。
おじぎなんて、しつければ、猿でもできるさ。
ほら、あっこの次郎を見てみろ。
竹馬しながら上手におじぎしてみせる。


心を荒らすな。
人を惑わすな。


テレビに向かってつぶやく間も、
メリメリ、バリバリとなにかが壊れつづける。
大地に、空気に、亀裂が走る。
その様はどんどんどんどんと拡大していき、SNSの風にのって世界中へと拡散しつづける。

大地は揺れ、水は汚れ、空気は濁る。
動物たちが棲家を追われ、逃げ惑ったあげくに人界に現れ、銃殺される。
人の命も大地も空気も、あれゆるものがこの瞬間にも壊れていく。


自分さえ良ければどうでもいい。
そんな思考など、もううんざりだ。

かと言って、壊れゆく光景を悲しみにくれて眺めることもできず、
されど、壊れるゆく様を手を叩いて笑って喜ぶ人間の側にも立てず、
自分の立ち位置をいまだ見つけられず、戸惑ってなにもしない自分がいる。

できることといえば、
せいぜい群れから離れて、
きょとんと目前を呆けたように眺めているだけだ。

ははは。
苦笑いでもするか。

さあ、今もこの目の前で壊れてゆくものはなんだ。

自然か、街か。
大地か、空か。
森か、海か。
物か、人か。
脳か、心か。

いや、待てよ。
あいつか、俺か…。
まさか、俺なのか。

むしょうにムカついて落ち葉を踏み潰して歩いた。
風は冷たい。
時折、荒ぶる風が吹き寄せる。
木々からは力尽きた枯葉がひらひらと舞い、地面には積みあがった遺体のように次々と溜まっていく。

むしゃくしゃするまま、
落ち葉を踏んで踏んで踏みまくった。


がさがさ
ごそごそ
ぐしゃぐしゃ
ぐちゃぐちゃ

ただただ枯れ葉を壊し続けた。
踏んで、踏んで、踏みにじった。
踏みつけて、踏みつけて
あちこち踏み回った。

それでも釈然としない。

目の前で人が壊れた。
勝手に人が壊れた。
自分に非はない。
けれど、あの人を壊したのは俺かもしれない。

がさごそ
ぐしゃぐしゃ
がさがさ
ごそごそ
踏み潰す
必死で押し殺していたものが音とともに瓦解していく。

お前を踏みにじった音はこの音か。
お前が聞いている幻聴はこの音か。

しばらく歩き続けると、
切り開かれた千里の丘に出た。

芝生の広がる丘の向こうに
一本のタイワンフウが見える。


目が醒めるような赤だ。
その木はぐんと空に向かって聳え
秋空に赤く燃え上がっていた。

あのひとは完全に壊れた。
鍵付きの隔離病室に入った。
安心しな。これで終わりだ。
あの人に煩わされることはもうない。
わかってはいる。
二度とないんだ。

だけどむしゃくしゃする。
怒りは冷めない。
燃え上がる赤を見つめていると、
あのタイワンフウの向こう側に
リノリウムの冷たい床が見える気がして、胸がきりきりと痛みだす。


冷たい風の中に
さびしげな一人用の病室がうっすらと浮かび上がる。


病室に漂うオスバンの消毒くさい匂いが
冷たい風に紛れ込み、鼻腔をつんと刺してくる。

あの赤の向こうは真っ白なのか。
無機質な壁に囲まれ、何もない。
壁や床には消毒液の匂いが染み入り、
いやでもあの人はそこから逃げることもできない。
きっとこのまま薬漬けになる。
もう二度と戻ってこない。
これで終わりだ。
煩わされることはもうない。


だけど、釈然としない。
どこかすっきりしない。


私はあの人を地獄に突き落としたのか。
そう思うと、心が赤い火玉になって焦げていく。
目の前に聳え立つ、焦げ付いた赤のように秋空がさめざめと燃えていく。


落ち葉を踏みしめた。
カサカサと音が鳴る。
何度も落ち葉を踏みつける。
ほんまに私はあの人の心を踏み躙ったのか。


苦痛だ。
苦痛でしかない。


秋にこんな気落ちを覚えたのは初めてだ。
こんな不快で、理不尽で、苦痛の秋なんて初めてだ。


だが、秋でまだよかった。
冬だったら哀しすぎる。

 

2024年12月18日 13:55

今度、謝ろっと。

今年は忙しくてブログを更新する余裕がなかった。
最近になってようやく少し時間ができるようになりました。
少しずつ更新かけられるようにがんばろか。

で、初回は阪神ですな。
一時は低迷しかけていましたが、最近になってようやく調子を上げてくれだした。
今年はじれったい試合が多くて気を揉んだけど、なんとか優勝戦線に残ってくれているし、このままいけば劇的逆転優勝が見れるかも。
厳しい状況は変わらないけれど、諦めずになんとかがんばってほしいな。

で、そんな低迷し始めた五月の折のこと。
しばらく顔を合わせていなかったおっちゃんが久しぶりに来院した。

「あれ、久しぶりですね。元気でした?」
「いや、フィラリアとかあるから早く来たかったんやけどな、手を骨折して一人でわんこ連れて来れへんかったんや」
「いやはや、それは大変でしたね」
「そやねん。ほんま最近ええことあらへんわ」
「そないですか…」
あんまり中身を聞いてはいけない気がして、わんちゃんの処置を施しながら話題をかえる。

「ところで今年の阪神はイマイチですね」
「おお、あかんな。去年みたいにうまいこといかへんな」

おっちゃんは大の阪神ファン。
以前は私設応援団に入っていたとのこと。
今も尚、年間シートを毎年購入している大の虎吉だ。

「でも、そろそろクリーンナップが打ち出す頃とちゃいますか」
「そう思いたいけどな、サトテル、ムラがありすぎんのよ」
「そろそろ打ちますって。おっちゃんが応援行ったら喜んで打つんとちゃいますか」
「そないか。実はな、わし、今日甲子園に応援しにいくんや」
「おお。そんならきっと打ちますわ」
「わしもな、実は今日はなんか勝つ気がしてならんのや」
「きっと勝ちます。サトテルのホームランでも見て、おっちゃんもきっちり厄払いしてきてくださいな」
「ありがとありがと」
そう言って、おっちゃん嬉しそうに帰っていった。

で、仕事が終わり、そやそやテレビ、テレビとテレビつけたら、おもいっきりビビった。

ノーヒットノーラン食らってるやんけぇ。
なにしてくれんねん、戸郷ぉお!

あかんあかん。
わし、こりゃまたいらんこと言うてもうた。
おっちゃん、手の骨折どころか、心までぽっきり折られたやろな。
大丈夫かぁ。

案の定、九月になってもまだ顔を出してくれない。
嫌われてへんか、と心配している。

ということで。
人間、適当なこと言うたらあきません。
深く深く反省しました。
まあ、それでも毎日言うてますが………。

とにかく、残り5試合。
なんとか優勝して、おっちゃんを立ち直らせてくれへんかと願うばかり。

ということで、がんばれ我らのタイガース!
2024年09月24日 15:24

困った、Bluetoothが繋がらんへん。

昨年、自転車を買い替えた。
大学生が乗るようなクロスバイクに変えた。
買ったのは一番安い、エントリーモデル。
安物だけど、ペダルを踏めば、びっくりするくらい滑らか。
スゥッーと進んでいく。

これで、ようやく理解できた。
必死でペダルを漕ぐ私を、大学生があんなに飄々とした顔で、スイスイスィーっと抜いていった理由が。

とにかく、どこへいくにもスイスイスイ。
坂道だってへっちゃらさ。
いや、思った以上に楽しいぞ。
とても幸せ。
暇を見つけては乗り回しているほど。
いやぁ、自転車ってほんまにええなあ。

ただ結構スピード出るのが難点。
危ないから、ヘルメットも追加購入。

選んだのは、ボタンひとつで、後頭部がピカピカ赤く点滅する奴。
これなら夜間も安全だろう。

だが、想像以上、ピコンピコンと点滅する。
消すのを忘れてスーパーでも入ろうならば、後ろを歩く買い物客がくすくすと笑いだす始末だ。
倒れかけのウルトラマンみたいに見えるのか。
まあいいか。

で、もう一つ。
ヘッドフォンも変えた。
耳が塞がっていると、交通違反になるらしい。
ということで、骨伝導イヤフォン。
これもAmazon。
いっちゃん安い奴で心配してたけど、ツンドラが教えてくれた通り、品質は十分だった。
耳穴を塞がないから、後ろからくる車の気配もすぐにわかる。
これで、カエルみたいにぺちゃんこに轢かれることはないな。
道端で煎餅、絶対嫌だし。

そんなこんなで、毎日気分よくペダルを漕いで、病院通いしている。
楽しくて仕方がない。

だが、昨日のこと。
突然、ラジコが聞けなくなった。
何度接続を試みても、Bluetoothがまったく繋がらない。

どれどれ。
スマホは骨伝導イヤホーンを感知している。
骨伝導イヤホーンもカッコよく「Connected!」と言っている。

けど、聞こえない。
困った。
どれだけ接続をし直しても、一向につながる気配なし
聞こえへん。

このままじゃ、遅刻する。
仕方なく、ラジオは諦めてペダルを漕いだ。

昼休み、デジタル機器にそれなりに詳しいツンドラに「何が原因やろか」と聞いてみた。
「スマホが悪いんかな。それともイヤホンが壊れたんかな」
「どれどれ?」
ツンドラが親切そうな顔をして、スマホを覗き込んできた。
「どう思う?」
「たぶんどちらも大丈夫ですよ」
「ほんなら、何が悪いの?」
「そりゃ、先生の骨でしょ」
「……………」

みなさま、今年もツンドラはあいかわらずです。





 
2024年02月10日 14:23

今年も「あっ!」という間で…………。

ラジオからクリスマスソングが
流れ始めた
昼食を買いに行ったパン屋では
クリスマスケーキの注文を促された
スタッフがつきたてのお餅をくれて
飼い主さんからは「良いお年を」と
ご挨拶された。

ああ、もうそんな時期か
今年もあっという間だったなあ。

改めてなにをしたかなと
振り返ってみても
色々とあったはずなのに
すぐに、ぱっと思い出せない。

なんだか慌ただしかった
あっという間に過ぎ去った
毎日、結構必死だった
そんな印象しかない。

でも、はっきりと言えるのは
今年もなんとかやり切ったと
言えそうなこと
それだけでも十分ありがたい
そう思わなくちゃ。

世間はどうだっただろうか
こちらもいろんなことが起きてたな。

中東やユーラシア大陸では
えげつない戦争が続いている。

瓦礫が散らばり
荒れ果てた街並みで
人が泣き叫んでいる姿を
毎日のように見る。

困ったことに
痛ましい映像に慣れてきた
まさか戦争という魔物に
馴化し、飼い慣らされたか
そんな自分に嫌気がさす。

国内に目を向ければ
裏金問題がもっぱらな話題だ
こちらは見るのも聞くのもうんざり
なにをいまさら、って気がするし。

派閥の首領が亡くなったとか
芸能プロダクションの有名なドンが亡くなったとか
その途端になって、長い間
周囲が目を瞑り、ひた隠しにしてきた
事実がばたばたと露呈していく。

当の本人や、核となる首謀者が
亡くなってようやく始まる、
この怒涛の追及はいったい
何を意味しているのだろう。

有名なミュージシャンたちも相次いで亡くなった
戦場に向けて、「メリークリスマス!」
悲しいかな
あの人は、二度と
平和の旋律を刻まない。

闇バイトも話題になったっけ
SNSで集められた人間たちが
得体のしれない人物の指示に従い
次々と強盗や殺人をこなしていく。

お金に揺さぶられる人間の愚かさやら
切なさというか恐ろしさというか
桐野夏生さんの「インドラネット」の一場面を地で行った展開にも驚かされた。

これらはすべて、遠い世界で起きたこと
身近な日常は慌ただしくも
とても平穏だった。

なのに、日々見聞きするニュースには
なぜか既視感を覚え
戸惑いを覚えている。

たとえば、熊が山から降りて
人を襲ったニュース
住処を追われたことへの復讐ではないだろうが
殺された熊も
気の毒に思えた。

OSO18もその手の話題の一つで
話題になった。
北海道か……………。
他人事のように眺めていたが
実はそうでもなかった。
なぜなら大阪でも現実に牛が襲われる
大事件が起きたのだから。
まさか都会で牛が襲われるなんて………
そうか、これか。
既視感を覚える原因は。

11月
猛虎、猛牛を倒す。
冬眠から覚醒したいつものダメ虎が
春先からばっさばっさとスズメや巨人を襲った。
おいおい嘘だろと眺めていたら
鯉やコアラまで食い散らした。
そして最後は
あの大きな猛牛までも……。

大阪中、大騒ぎで
中には川にまで飛び込む輩までいた
あれにはびっくりこいたなあ。
モウ〜って感じ。

冗談はさておき。
来年はどんな年になることやら。

御堂筋が沸いたあのパレードのように
歓声が上がり
世界が黄色く瞬いてくれる
そんな明るい年になれば嬉しいな。

だけど、その前に
今年も最後まで仕事をきちんとこなそうか。

仕事納めを迎えるその日まで
しっかりと働いて
頑張って
そして我が家の恒例でもある
紅白を見て
ゆっくりと年を越したい。

ああ、今年の紅白歌合戦はいつも以上に
楽しみだな
きっとタイガースの話題で盛り上がる
だろうから期待しか湧かない。

なんたって、今年のタイガースは
流行語大賞まで掻っ攫ったくらいだもん
審査員にはきっと岡田さんが
登場するだろう
紅白で「おーん」が聴けると思うと
ほんと幸せ。
うふふ。

ステージではどんなパフォーマンスが
繰り広げられるのかな
私の予想では、トップバッターは
ヒロミ郷
阪神タイガースのユニフォームを着た
ヒロミ郷がホールの踊り場で
キレッキレのダンスを披露し
客席の階段をさっそうと駆け下りてくる
恒例の紅白幕開けだ。

ゆずも楽しみだなあ。
栄光の架け橋を歌うのかな。
横田選手の映像がバックで流れたら
泣いちゃうかもしれない

クイーンもゲストで出るらしい
アダム・ランバートの「ボヘミアン・タイガースラプソディー」
フレディーみたいにガンガンかっ飛ばしてくれ

で、トリは今年もMISIAと福山雅治で決まりだな
鮮やかなターバン巻いたMISIAが
彼女の持ち歌「六甲おろし」を熱唱する
ああ、もうそれだけで
なんだかめまいでくらくらしそう………。

そうなったら阪神ファンの福山雅治も
負けてられないな
新曲の「チャンス襲来」をライブ形式で歌うに違いない。

で、観客がバーンと沸いたところで
フィナーレだ。

ホールが黄と白にきらきら瞬く
今年の紅白は
ただのコウハクじゃすまさない
黄白歌合戦になるのだ
阪神ばんざいー!!
NHKさん、頼みまっせ。

そしたら、うっしっし
満足したあとは
次なる年へバトンタッチだ

来年こそ
黄白に光り輝いておくれ

戦争なんていらない
みたくもないし
経験したくもない

世界に蔓延る
胡散臭さやきな臭さから
さっさとおさらばして
平和な潮流へ真面目に舵取りしてほしい

爆音や銃撃の聞こえない
悲鳴が上がらない
そんな世界が現実に訪れることを

派閥争いや裏金隠しや利権争いに
日々、汲々としている政治家よりも
平和をまっすぐ希求してくれる
そんな真の為政者が生まれてくることを。

そうだ
平和を「アレ」と呼び
ちゃんと具現化してくれる
真の為政者がこの世にも現れることを。

夢みたいな理想だが
切に願いたい。

ならば
大晦日
今年はより一層
除夜の鐘に耳を澄そうか。

煩悩振り払う
平和の「おーん」がきっと鳴り響く
そう期待して。

では、みなさま良いお年を。
やっぱ、ちと早いか……………。

 
2023年12月18日 15:04

ミルク搾り始めました

先日のこと。
トリマーさんが予約の電話をとった。
受話器を外した後、困ったような顔でツンドラと私を見る。

「どないしたん?」
「あのー、うちって乳搾りもしてるんですか?」
「はぁ?」
「〇〇さんが混合ワクチンと一緒にワンちゃんの乳搾りもして欲しいって言うんです」
「あの子、オスやぞ」
「でも、乳搾りってはっきりいいました」
「そりゃ、おかしいで。聞き間違いや」
「いや、そないことありません。はっきりと乳搾りお願いしますっておっしゃいましたもん」
「ふーん。〇〇さんがそないこと言うかなぁ」

と返しながら、しめしめしめ。
そこまで言うなら、しゃーないな。
とりあえず言わせたろか。

「ほんなら悪いけど、乳搾りはしてませんって〇〇さんに伝えてくれる?」
「はい」

トリマーさんは大きく頷き、受話器に向かって「当院、乳搾りはしてません」と断言。

ひゃひゃ。
思った通りや。
顔が真っ赤に染まっとんで。
んでもって、もじもじしながら「肛門線絞りの間違いでした……」やて。
私もツンドラも大笑い。

いやぁー満足、満足。
あんた、なかなかおもろいやんか。

ということで、当院、犬の乳搾り始めました。
ご希望の方は天然トリマーをご指名の上、ご予約くださいませ♪

 
2023年10月17日 17:03

あっか〜ん! はよ道頓堀、行かなー!

仕事を終え、ラジコに耳を傾けた。
自転車を漕ぎながら、気が気でなかった。
いよいよか。
ほんまにアレか。
アレがとうとう現実のものになるんやな。
と、思ったら、岩崎が坂本にホームランを打たれた。
あっかーん。
甲子園の胴上げがなくなるぅ〜。
広島で胴上げすんのか……………。
と思ったが、さっすがは岩崎大魔神。
最後の打者を討ち取ったときには再びあっか〜んと涙腺崩壊。
涙がちょちょぎれて、とまらへん。

うそやないよな。
ほんまやよな。
岡田さんってほんまに名将なんやな。
このままサムライジャパンの監督も兼任したらどうやろ。
な、頼むで。
そんなかんなで「あっかーん」の連発。

とにかく、アレやアレや。
わし、どないしよ。
家に悠長に帰っとる場合やないな。
みんな、あそこに集まってんやろ。
な、そやろ。
みんな、道頓堀に集まってんやろ。
よっしゃ。自転車の向きを変えよ。
いっちょ、ママチャリで行ったるわ。

おっ、そやそや。
その前にあいつも呼んだらなあかんな。
一緒に喜び分かちあいたいやろしな。
で、思い出したように知り合いのあいつにTELをした。


「もしもしカーネル?」
「な、なんや」
「今どこ?」
「今どこって………突然なんやねん」
「突然? ふん。しらばっくれやがって。お前、15年ぶりのアレやぞ」
「……………」
「な、なんで黙りこむねん」
「……………わし、そんなんどうでもええわ」
「なんで」
「あのなぁ、いちいち言わすな。ええ加減にせえよ」
「だから、なんで?」
「なんでって……。あのな、お前らはアレアレうるさいけど、わしにはまったく関係あらへんことやで」
「なんで関係あらへんの? みんな道頓堀であんさん待ってんで」
「待ってへん」
「あほ。みんな、キリンみたい首長うしとるわ」
「してへんしてへん」
「は? 関西人がこんなめでたい日にあんたのこと思い出さんわけないやろ」
「…………」
「あんたかてほんまはわかってんやろ。タイガースにはサンダース。阪神優勝にはカーネルが付きもんって」
「あほ。勝手に決めんな。ええか、さっきから黙って聞いてりゃ勝手なことばかりぬかしよって。ちぃーとはお前、こっちの身にもなれや」
「なっとるから電話したっとるんやないか。ほんまはあんたまた胴上げされたいとちゃうんか」
「されたーない」
「はあ?」
「はあって、ええ加減にせえよ。わしはお前らのおかげで24年もあんなきったな〜い川に沈められとったんや」
「なんや道頓堀に失礼な言い方やな。最近、水質ちぃとはましになったで。大腸菌が薄うなった」
「うそこけ」
「嘘あらへん。テレビでやっとった」
「そんでもいやや」
「ほな、淀川にしよか」
「川うんぬんの問題とちゃうわ」
「天下の淀川で、胴上げドッボーンされたら幸せやろ」
「幸せちゃうわ。だから、そない問題やあらへんのや」
「ほな、どない問題や」
「ま、その人権的な問題というか………」
「お前、人形のくせして偉そうに人権言うな」
「……………」
「だいたいな、あんときはバースに似てるから、胴上げついでに川に放りなげられただけやろ。今はバースおらへん。誰もあんたを投げへんわ」
「ほんまか?」
「ほんまや。みんな、あんたと一緒にアレを祝いたいだけや。あんたもみんなと一緒に騒ぎたいやろ」
「うん。ほんま言うとな」
「そやろそやろ」
「そないやったら行ってもええかな」
「ええよ。いこいこ」
「ほな、いくか」
「よしゃ。決まった」
「いくいく。へへへ。実はわしな、もう白スーツばっちり決めて準備してんねん」
「さっすがー。ところで、あんた、知っとるか?」
「何を?」
「最近、ミエちゃんって子が入ったって」
「おう、あの子か。あの子、愛嬌があってかわいいな。わしは好っきやで。立派なムードメーカーやもんな」
「お前さんも好きか。わしもや。よかったわ」
「わしもおんなじムードメーカーやさかい、あの子の気持ちようわかるでー」
「そっか。ほな、道頓堀いく前に、わし、あんたの顔、黒く塗ったるわ」
「なんで?
「ミエちゃんにちょっとだけミエちゃうかも」
「ま、まさか……………」
「よしゃ、行こ。今、どこや。わしがママチャリで迎えに行ったる。背負ってったるわ」
「……………」
「十三か、江坂か。もしかして梅田か?」
「……………」
「ははーん、さては梅田やな。今、梅田のどこや」
「あかん、あかん、もうやめてくれ。もう二度とあんなんいやや」
「いやや言うな」
「いやなもんはいやや。なんだかんだ言うて、わしを川に放り投げたいだけやろ」
「ついでや、ついで」
「ついでとちゃう。頼むから、わしのことはもう金輪際忘れてくれ」
「あかん。みんな、お前さんの登板をまちかまえてんねん。岩崎が締め括った後はお前さんしかおらへんやろ」
「二度と沈められたくないってわしは言うとんや」
「あーもうガタガタうるさいやっちゃな。覚悟決めぇ。だいたいな、お前かて主役になれる唯一のときやぞ。じぃっと店の前でにこにこ突っ立ってるより、川底に沈んでニタニタ笑って横たわってる方が画像的にはおもろいやろ。空気読め」
「……………」
「何黙ってんねん。とにかくいくで。はよ言え。今、どこやねん」
「……………」
「おい。お〜い。カーネル? こらひげじじい!」 
ぶちっ。
「おい、こら。なに切ってんねん。今度おうたら、自分、ほんまに土左衛門にしたるさかいなっ!」

ということで今回、念願の道頓堀あの人ダイブは見送りとなりました。
でもね、次はいよいよ、関西対決になるかも。
そうなったら、ほんま楽しみでんな。
お楽しみはそれまで待ちましょか。
で、そんときはみなでカーネルさんを迎えに行きましょう。
サ、サンダ〜ス!

こんなん書いたらKFCに怒られるかな……………。
2023年09月19日 17:49

親が知らない衝撃の事実

この前、息子の下宿先に行った妻から衝撃的なことを聞かされた。

「あの子、金髪になってん」
「えっ」

ほんまにバカ息子め。
なにやってんねん。
勉強もせんと遊び呆けてばっかか。
こっちはお前の学費払うためにあくせくしてんやぞ。
あかんな。
あかんあかん。
わかったって。
もうそれ以上言うな。
ああ、任せとけ。
わしががつんと言うたるわ。
ほんまにあいつは……………。

そう思ってた矢先、大学は試験シーズンに入ったとのこと。
息子から久しぶりに電話が入った。
なぜか受話器口の息子は半べそ状態だった。

「父さん、あかんわ」
「なにが」
「わし、ほんま試験落ちるかもしれへん。留年したらどないしよ」
「日頃からちゃんと勉強せえへんからや」
「しとったって」
「なに言うてん。遊んでばっかやって母さんから聞いたで」
「そないことない。ちゃんとやっとる」
「ほんまか。大学に入って、毎日弾けっぱなしやろ」
「弾けてへん。マジメにやっとる。こんな大まじめな学生、世の中どこにもおらへんわ」
「ふん。嘘つけ。ほな、あたま、金髪にしたっていうのはどないことや」
「今、ピンクや」
「………」

浪人の次は留年なのか。
悩みはいつまでたっても尽きない。
2023年07月20日 13:36

けっこうな大雨ですな……………。

台風2号が日本列島近くを掠めているらしい。
その影響で、梅雨前線が活発になっているとのこと。
ラジオを聴いていると、今日はこの話題ばかりだ。
大雨警報が出ているとか、避難指示が出されたとか。
どこかの地域では、学校が臨時休校になったそうで。

そっか。
それはそれで、子供達はきっと大喜びやろうな。
雨の日の学校ほど退屈な場所はないし。

そう思いながら、ふと外はどんなもんやと受付へ顔を出してみる。

あらま、ほんま。
思った以上の大雨。
どしゃぶりやんけ。
誰も歩いてへん。
いつもは忙しげな郵便局もガラガラ。
こちらも暇そう。

雨はアスファルトを襲うように叩き、弾け飛んだ雨粒が景色を白くぼかしている。
通り過ぎていく車は、まるで長靴履いた子供みたいに水飛沫をばしゃばしゃあげて。

よほどの病態でもない限り、今日は誰も来ないやろな。
雨はまだまだ強くなるらしいし。

気の良いスタッフが、「こんな日にしかできないことがあるので」とバックヤードへ消えていく。
日頃後回しにしてきた片付けをせっせとやってくれていた。

ありがたや、ありがたや。
スタッフの背中を拝むように手を合わせ、私はいそいそと診察室へ戻る。

さてさて。
診察室はいつになく静かで穏やかで。
窓越しに聞こえる雨音がせわしなさまでかき消した。
普段しない読書でもしよっか。
でも、気づくとうたた寝。

まあまあ。
こんなのんびり日も悪くない。
2023年06月02日 11:33

わはは、春じゃ春じゃ! 行ったれ行ったれどこまでも!

桜が満開。
心地よい春風を受けながら、自転車を漕ぐ。
花粉症の人たちには申し訳ないけれど、やっぱり春は気持ちがいい。

春といえば、もう一つ。
別れと始まりの季節。
卒業の後は、何があろうと桜咲く。

今年もだ。
淡き薄桃の花びらを背に、新入社員や新入生の姿をあちこちで見かけた。
駅できょろきょろしている若者なんかを見かけると、思わず「よっ!」と肩を叩きたくなる。
春光相まり、すべてキラキラ。
春は、なにもかも清く新しく見えるから不思議だ。

今年は当院でも。
暖かい春風に誘われるように別れと出会いがやってきた。

三月、温暖さんが去る。
とても優秀な方で、すぐに仕事を覚えてくれた。
混乱するような状況でも、てきぱきと立ち回ってくれる姿は本当にありがたかった。
手放すのは残念だけど、当初より三年間との約束。
それを無理言って、四年も在籍していただいた。
今後はペットシッターとして独立を目指すとのこと。
こうなったらもう応援するしかない。
いい日旅立ち、頑張って!

そして新たな出会いは二人。
補充をどうしようかと悩んでいると、ふわりと春風に乗ってやってきた。
今は慣れないことだらけでいっぱいいっぱい。
でも、温暖さんに劣らず、二人とも感じのよい応対を心がけてくれる。
感謝感謝。
おかげで私は毎日、嬉々としている。

そして、もう一つ、新たな変化が……。

息子、旅立つ。
あがいてあがいた末、なんとか頭上に遅咲きの桜。
第一希望でなかったが、そんなこと、まったく大事なことやない。
その目で何をみるか。
その手で何をするか。
たったそれだけの話や。
頑張った甲斐はあったのだと言い聞かせ、大阪からほんまの新世界へ送り出す。

そやそや。
これからや。
見るもの、触るもの、映るもの、全てが新しい。
めげることなく、とことん追いかけなはれ!

そう心の中で呟きながら、半ば新生活に浮かれ模様の息子を玄関から送り出す。
別れの余韻を胸に秘め、一人、近くの桜並木に出かけた。
池のほとり、桜の下でベンチに腰掛け、イヤホンでラジコを聴く。

偶然か。

DJが新生活を始める人に向けてエールを送った。
流れだした曲は、関取花さんの「むすめ」。
うちんとこは「むすめ」やなくて「むすこ」やけど、流れ続けるアコースティカルな歌詞に心が震えた。
気づくと、「そやな、そやな」と耳を澄ましていた。

そうそう。
ほんまにそやで。
息子よ。
わしも、歌詞のごとくエール吐き捨てたる。

学べ、学べ、とことん学びやがれ!
やりたいこと、好きなこととことんやってみなはれ!

とにかく。
新天地で自分なりの基盤を築いてくれることを切に祈る。

さあさあ。
送り出してるだけやあかんな。
わしも新年度を迎えよう。
いまさら若い子みたいに、ぎらぎらの野心持って、何かとんでもなく大きな夢を見ることはできないけど、こんなおっさんだって、ちょっとした一歩くらいは踏み出せる。

そう思って、威勢よく立ち上がると、道端で、すこーん。

こけた。

まあ、そんなもんよ。
春のはじめの一歩なんて、そんなもん、そんなもん。
こけたら、ええやん。
こけたってええねん。
呼吸整え、また立ちやがれ。
松下幸之助さんだって「こけたら、立ちなはれ」言うとったしな。

そやろ、そやろ。
たったそれだけの話やろ。

はる、春、ハル。
春、晴れ渡れ、ハレルーヤ!
まばゆい春光浴び、些細な失敗を屁とも思わず、どいつもこいつも、あんたもわしも、それがどこの「むすめ」だろうと「むすこ」やろうと、今日も明日もわしらは生きたるだけや!

せやせや。
 
2023年04月04日 14:24

帰省と生せんべい

年末から正月にかけて、母親が腰椎を骨折し、寝たきりだったらしい。
コロナ禍はいまだ終息しておらず、子に心配かけまいと思って黙っていたようだ。
後で事情を聞いて慌てた。

祝日を利用して、久しぶりに帰省する。

片道、高速を利用し、車で二時間半。
母親は思ったよりも元気そうだった。
腰はだいぶ曲がっていたが、コルセットを巻き、しっかり歩いている。
とりあえずひと安心。

でもな。
二人ともずいぶんと老け、私が知っている頃の両親ではなかった。
ほったらかしにしていたことを後悔。
まだ先だと思い込んでいた介護、そろそろ目前のこととして捉えねばいけないのだろう。

反省の帰省がてら、デパートによって息子の好きな土産を購入。
同じものを職場にも持って帰る。
「生せんべい」という大変ローカルな土産も加えた。
私が小さかった頃、これが家にあると大変嬉しかった超ローカルなおやつだ。

職場に持ってくると、見たこともない食べ物にスタッフたちがもの珍しそう顔をした。
ふにゃふにゃ。
どうみても煎餅とは思われない代物を前に、彼女たちは怪訝そうである。
「これ、ほんまにせんべいですか?」
毒でも食わされるとでも思っているのか、つんつんと指先でつついている。
お、おまえら………。

でも、ま、そやろな。
明らかにせんべいちゃうしな。
関西で見たこともないやろ
それくらちょっと変わった食いもんやしな。
わしが小さい頃はな、これがあると………。

おい、こら、人の話聞け。
やめろ、そのつんつん。
へんな触り方すな。
毒ちゃうぞ。
ふん。
とりあえず食ってから文句言え。

鼻息荒く、一人、昼食を食べに外に出る。

昼食後、職場に戻り、口にあったかどうか聞いてみた。
へえ。
素直に「はい」だって。
肯定的な意見に少なからず驚く。
まあ、お世辞でも嬉しいなと思っていたら、どうやらそれどころではなかったらしい。
たった三十分ほどの間に、インターネットでさっそく家族の分までポチったとのこと。
大変気に入ってもらえたようで、結構な驚きだった。

ローカルフードが関西人に認められるなんて。
やっぱりうまいものはうまいのだ。
よしよし。

たまには帰ってみるもんである。

 
2023年02月24日 14:32

ゆりの木動物病院

06-6335-5387

診療時間
月・火・木・金
AM 9:30~12:30
PM 15:00~19:00
AM 9:30~12:30
AM 9:30~12:30
PM 14:00~17:00
休診日
水午後・日・祝日

病院のご案内はこちら

サブメニュー

モバイルサイト

ゆりの木動物病院スマホサイトQRコード

スマートフォンからのアクセスはこちら

北摂夜間救急動物病院
電話 072-730-2199
箕面市船場東2-3-55
大阪動物夜間急病センター
電話 06-4259-1212
大阪市東成区中道3-8-11