帰省と生せんべい
年末から正月にかけて、母親が腰椎を骨折し、寝たきりだったらしい。コロナ禍はいまだ終息しておらず、子に心配かけまいと思って黙っていたようだ。
後で事情を聞いて慌てた。
祝日を利用して、久しぶりに帰省する。
片道、高速を利用し、車で二時間半。
母親は思ったよりも元気そうだった。
腰はだいぶ曲がっていたが、コルセットを巻き、しっかり歩いている。
とりあえずひと安心。
でもな。
二人ともずいぶんと老け、私が知っている頃の両親ではなかった。
ほったらかしにしていたことを後悔。
まだ先だと思い込んでいた介護、そろそろ目前のこととして捉えねばいけないのだろう。
反省の帰省がてら、デパートによって息子の好きな土産を購入。
同じものを職場にも持って帰る。
「生せんべい」という大変ローカルな土産も加えた。
私が小さかった頃、これが家にあると大変嬉しかった超ローカルなおやつだ。
職場に持ってくると、見たこともない食べ物にスタッフたちがもの珍しそう顔をした。
ふにゃふにゃ。
どうみても煎餅とは思われない代物を前に、彼女たちは怪訝そうである。
「これ、ほんまにせんべいですか?」
毒でも食わされるとでも思っているのか、つんつんと指先でつついている。
お、おまえら………。
でも、ま、そやろな。
明らかにせんべいちゃうしな。
関西で見たこともないやろ
それくらちょっと変わった食いもんやしな。
わしが小さい頃はな、これがあると………。
おい、こら、人の話聞け。
やめろ、そのつんつん。
へんな触り方すな。
毒ちゃうぞ。
ふん。
とりあえず食ってから文句言え。
鼻息荒く、一人、昼食を食べに外に出る。
昼食後、職場に戻り、口にあったかどうか聞いてみた。
へえ。
素直に「はい」だって。
肯定的な意見に少なからず驚く。
まあ、お世辞でも嬉しいなと思っていたら、どうやらそれどころではなかったらしい。
たった三十分ほどの間に、インターネットでさっそく家族の分までポチったとのこと。
大変気に入ってもらえたようで、結構な驚きだった。
ローカルフードが関西人に認められるなんて。
やっぱりうまいものはうまいのだ。
よしよし。
たまには帰ってみるもんである。
2023年02月24日 14:32