ゆりの木動物病院|阪急庄内駅すぐ近く|大阪府豊中市

阪急宝塚線・庄内駅3分、犬・猫を診る動物病院です。

お目よごしですが・・・。

あなたのために祈る人

不思議な印象だった。
広島の、一夫婦が行った選挙違反の記事を読んで。
夫は嘘を重ね続け、裁判では買収の事実をなかなか認めなかった。
なのに、一転。
先日、これ以上争わないことを認め、かつ議員辞職をした。
少なからず驚く。
コメントがとりわけ心に残ったからか。
「最終的に神の前で誠実であることが‥‥」
夫は、長年付き合いのあるカトリック神父に導かれ、事実を認めるに至ったという。
彼を指導したその神父は、電話で、毎日、その夫婦のために祈っていたことを告げたらしい。
同じ党に所属した、同じ議員の立場でも、こちらはずいぶん趣が異なる。
カジノを含むIR汚職で逮捕された男だ。
検察側と全面対決。
収賄を否認し、今後も企業側から現金は受け取っていない、と無罪を主張し続けるらしい。
真実は知らない。
でも、なぜか受け止める側としての印象が異なる。
両者の違いを考える。
そそのかす者はいても、祈ってくれる人がいた。
そそのかす者はいても、祈ってくれる人はいなかった。
救いがいのある人間と救いようのない人間…。
祈りとは、遠くで受け止める側に、これほどまで違う印象を与えるものらしい。
私には未だ信仰するものがない。
なのに、なぜに余韻が胸に残る。
その存在のありがたさゆえ。
強く、深く、重く。

 
2021年04月08日 20:58

いでよ、ロビフッド!

先日、ロビンフッドなる金融アプリの話題を目にした。

アプリを利用し、小さな個人投資家たちが、呆れたほどの巨万の富を、わずか数秒で稼ぐ投資会社に対して揺さぶりをかけた。

そして、見事なまでに翻弄した。

海外で、大いに話題になったようだ。

なるほど、「ロビンフッド」か。

あの伝説の義賊らしいや。

裕福な者たちからお金を巻き上げ、その金を貧しいものたちに分配する。

緑の衣装に羽帽子。

そういえば昔、読んだことあるな。

正直、あまり覚えてないけど…。

どうやらアプリはアメリカの格差社会がもたらした産物らしい。

あっちでは、高利な教育ローンを背負わされた若者たちを中心に、不公平な経済格差が広がっているとのこと。

なぜ、お前ら金融機関だけが良い目を見る?

小さなロビンフッドたちはネットで情報交換し、団結行動に躍り出た。

そして巨大な利益を独り占めする投資会社にギャフンと一泡吹かせた。

 

そうかそうか。

なるほどね。

「全ての人々に金融を民主化する」

そんな意図で開発されたアプリが今回の「ロビンフッド」ということらしい。

うまいこと、不満の吐け口として活用されたようだ。

もちろんいいことばかりではなく、記事によれば、実際には素人が陥りやすい投資の危険性やいざこざもあるらしい。

が、一時的にせよ、なんだか胸がスカッとするような、そんな晴れやかさを感じもした。


だって。

これだけ貧富差の広がる中、一部の人間たちだけが天文学的な利益を貪っている。

そんな信じ難い現実が、この国でも実際に起きているのだ。

片隅では生理用品も買えない人がいたりするというのに。

配布される食料を前に、列に並び続ける人がいるというのに。

 

きっと、だからか。

ニュースを見た時、あの左利きのホームランバッターが、豪快に打球をレフトスタンドに打ち込んだような、そんな爽快感を覚えた。

快音を響かせ、打球が透き通った青空にぐんぐん吸い込まれていく。

そんな清涼感やら、なんとも言えな気持ちよさみたいなものが。

でも、そんな風に感じるのはそれだけが理由?

 

いやいや。

コロナという目に見えないウイルスに、日常が不格好に裁断され、溜まりに溜まった鬱憤がこの胸に酸いた胃液のように込み上げているからだろうか。

 

いや、いや。

これも違う。

自粛やらまん防やら、日常はいまだ制限されてはいるけれど、個人的にはそれほど鬱憤は抱えていない。

だって、辛い思いを抱えている人には申し訳ないが、オレ、外食ができない、旅行にいけないなんて、そんなもんいくらでも我慢できるもん。

 

それよりも頭にくるのは、日々、テレビや新聞などで目にする、不愉快な出来事の方だ。

連日、政治家たちの体たらくぶりがこの目に飛び込んでくる。

まるで悪代官の不祥事だ。

ほんま、なんたることやねん。

お前ら、全員、越後屋ちゃうか。

 

森友、桜における改ざんや隠ペイ。

IR汚職がバレたと思ったら、今度は歴代農相たちか。

収賄入りの菓子箱を前に、ニヤニヤとほくそ笑んでいやがる。

おまけに大企業はせっせと官僚中枢へ接待で。

その間も、代官たちは高級ラウンジへとお通いだ。

元法相は、妻のために大規模な選挙違反に手を出して。

さらには、新旧歴代の首相たちが、立派なはずの大臣たちが、こぞって失言を連発する。

 

大事な資料はいまだ不開示。

ファイルはいずこへ消えたのだ。

人が亡くなったというのに。

 

にもかかわらず。

すべてがいつもどこ吹く風。

難解な言葉で口を濁し、のらりくらりとごまかして、そしていつもの手口。

責任の所在など、ごっそりそのまま、公設秘書へとまる投げ。

検察は顔色を伺いながら、形や表面だけを取り繕い、有効な手立てなどまるで出さない。

おまけに、あれ?

汚染処理水って?

まさか本気で海へ放出するつもり?

えっ。
解決してないのに、政官財こぞって原発復権を大合唱してんの。

 

なんでだよ。

なんで政治を夜に動くすんだ。

 

密室で決められる秘め事など、国益や国民のためにされているわけねぇよな。

自分たちの権力争いや、既得権益の維持のためだろ。

そのために、あんたら夜な夜な会食しているんだろ。

 

おまけにそんな飲み食い代も、官房機密費で出てるってほんと?

そなアホな。

誰が国に預けたお金やねん。

 

国民はバカだからええやん?

そうそう。

一人当たり10万でも配っておけば、あいつら犬みたいにシッポ振って喜ぶんだってさ。

 

ふん。

ふざけやがって。

いい加減にしてくれ。

 

いいか。

あんたらに、とびっきりの仕返ししたるわ。

いま流行りの歌で、どぎつい文句言ったる。

♪ひっでえ、ひっでえ、ひっでぇなっ♪ってな。

ああ。

悲しいことに、どうやら私にできるのはこの程度の反逆らしい。


あぁ、そっか。

だから、そういうことなのか。

それで、あっちではロビンフッドのお出ましなのか。

今の日本にも、そんな存在が出て来てくれたらいいのだが…。

 

いやいや。

おるおる。

昔おったわ。

日本版のロビンフッドが。

あの伝説の義賊がよ。

 

さあさ。

お呼びだぜ。

ねずみ小僧さんよ。

今こそ、うちらにも、あんたみたいな存在が必要だ。

出番だぜ。

起きてきな。

休んでねぇと、もうそろそろ現れてもいいタイミングじゃねぇの。

 

おいら、知ってんだ。

あんた、単なるこそ泥じゃねぇんだろ。

 

さあさ。

起きてきなよ。

何百年もの長い眠りから、おねむな目々を覚ましてさ、あのロビンフッドのように颯爽と俺たちの前に現れてくれねぇもんかい。

 

なあな。

頼むから出てきておくれよ。

恥ずかしければ、アプリの装いでいいさ。

トレードマークの黒布巾をさ。

頭からすっぽり被ってさ。

そんでもって、鼻先できちっと両端を括ってな。

あんときの馴染みの格好でいいからよ。

 

そんでよ。

夜闇に、すり足、さし足、しのび足で近づいてな。

永田町で、今もふかふかソファにふんぞりかえっている、あの大勢の悪代官たちに向かって、ちぃとばかりでもいいから、一泡ふかせておくんな。

 

与野党なんてケチな区別いらねえ。

どの党にも困った奴らはいるもんだ。

そんな呆れたような奴らにギャフンと言わしておくんなよ。

 

俺たち、SNSでいくらでも力を貸すぜ。

だって今も理不尽な目に合わされている人たちがこの世にはたくさんいるんだ。

 

あっちみたいに、投資なんてせせこましいレベルに囚われずさ。

国籍や立場に関係なくさ。

地域や年齢にも関係なくさ。

全ての日本にいる人たちに。

貧困や、偏見や、差別のない真の民主化をもたらしてくれよ。

 

ついでにさ。

世界のあちこちで、同じようにのさばっている悪代官たちに、今のこのときも、とんでもない目にあっているミャンマーやシリアのような国の人々にもさ。

真の民主化という平和をもたらせてくれたら、俺たち、本当に最高だよ。

 

そうそう。

日本じゃさ。

もうすぐ始まるらしいぜ。

奴らの一番怯える選挙がさ。

あのスピーカーで、ただひたすら名前を連呼するだけの狂騒が。

思い出すだけで、煩わしくて仕方ねぇな。
あれ、うざくてたまんねぇんだよ。
ガラスの10代でなくたって、心も脳みそもやられちまう。
ほんと、♪うっせえ、うっせえ、うっせえな♪だ。
 

な、だろ。
早くしねえと、奴ら、また自分たちだけ私腹を肥やしやがるぜ。

あいつ、失言しても、またいつものように平然と居直りやがるぜ。

 

だから、頼むよ。

早くしておくれよ

出て来ておくれよ。

誰か、そんな義賊アプリ、開発しておくんな。

ほんとに早くしねぇと間に合わねぇぜ。

できた暁にはよ。

おいら、たった一人だろうとスタンディングオベーションで出迎えるぜ。

よっ、待ってました!

っとばかりにさ。

2021年04月08日 20:55

さあ、今年も新たなる希望の名称変更へ、いざ!

おかげさまで、先日無事、四年目を迎えることができました。
振り返れば、様々なことがありました。
とりわけ昨年はかつてない災禍に見舞われました。
コロナに始まり、コロナに苛まれ…そういえば、ずっとコロナという言葉に振り回されて今もまだ……。
皆様も、いろいろな思いを抱いた一年だったのではないでしょうか。
さらには五輪開催も、ややこしそうな流れで。
足元をみても、周りを見ても…どこもかしこも陰鬱とした影が差し込んで見えるような。
ですが、そんな暗い日々の中でも、今年になって、わずかながらの希望と光が差し込んできたのも事実です。
とりわけスポーツの世界。
オオサカなおみさんは試合中、その肩に舞い降りた蝶のごとく、いまや大空に羽ばたきつつある。
ハチムラルイくんは、日本人ではいまだかつてない、とんでもない輝きをアメリカで放ちつつある。
大谷翔平くんも、今年は二刀流ですごそうだぞ。
いけいけ、南野拓実っ! もっともっとイギリスで輝いてくれぇ!
そして忘れてはいけないのが、なにをもいわんがな、あの方ですよ。
あのお方♡
われら阪神タイガーズに入団した大型新人の佐藤輝明選手。
オープン戦ではなんと6本のホームランを量産するなど、その大物ぶりをいかんなく発揮してくれています。
もうこうなったら期待しかありません。
今年の新人王はもはや彼に決定ではないでしょうか。
なんならホームラン王もあげちゃってください。
ついでに打点王もつけちゃって。
よっ。
もう決定しちゃいましょう。
東スポさん、明日、一面で決めちゃってください。
もう~ぅ。
夢のようでしょ。
すてきすぎでしょ。
ならば…。
ということで当院も、そんな彼らの縁起良さにあやかるべく、四年目を迎えたいま、思い切って、名称変更をすることにしました。
大丈夫です。
安心してください。
今年もちゃんとしましたよ。
名称変更にあたり、昨年のごとくスタッフと納得のいくまで議論を交わしました。
私   「今年こそ、わが動物病院の名称変更をしようと思う」
温暖  「やめといた方が…」
ツンドラ「まっ、一応念のために聞いたるわ。なににすんの?」
私   「佐藤輝明記念動物病院」
ツンドラ「やめなさい」
温暖  「あかんて」
私   「なんでぇ。縁起良さそうやろ」
ツンドラ「あかん。あかん。ほんまあかんて」
温暖  「……」
私   「でも、少しでも縁起のいい方が…」
ツンドラ「縁起とかじゃなくて、あんた、それ、パクリやねん」
私   「パクリだろうがなんだろうが縁起よければええねん。ホームラン連発やぞ」
ツンドラ「そういうことちゃうねん」
私   「なんでや。佐藤くんがあかんのか。じゃぁ、藤浪晋太郎開幕記念動物病院にしよう」
ツンドラ「だめやて」
私   「なんで。もしかして漢字ばっかであかんのか。ほんなら、バース掛布岡田アニバーサリーアニマルホスピタルでどうや」
ツンドラ「アホ。そういうことちゃうねん。真面目にやり」
私   「わしは、いつだって本気やぞぉ」
温暖  「あのぉ。私、…もう辞めてもいいですかぁ?」
私   「ええ~っ!」
ツンドラ「ははは。あんた、動揺してんの。そんなんやったら、私も一緒にやめちゃおうかっなぁ~」
私   「ええええ~っ! あかん。あかんて。あんたらあってのゆりの木やで。それだけはやめてぇ~」
ということで大事なスタッフに辞められるのは心底つらいので、今年も現状維持のゆりの木動物病院のまま、大事な大事な、本当に素敵なスタッフとともに頑張りたいと思います。
スタッフ一同、誠意をこめて頑張りますので、皆様方、何卒、今まで以上のご愛顧をお願いいたします。
以上、例年とおりの鉄板ネタでした。





 
2021年03月21日 16:01

おらさ、大阪さいるだ(替え歌バージョン)

作詞 ユリノキコタロウ 作曲 吉幾三大先生

あ~嗅覚ねえ、味覚もねえ
熱が高けりゃ 咳もでる
店に出て 仕事すりゃ
客にうつって叩かれる

おら こんなのはいやだぁ~
こんなのはいやだぁ~
おらさ、田舎へいくだぁ~
けんど田舎へいったら怒られる
やっぱ大阪さいるだぁ~

あ~首になり 金はねぇ
仕事を探すも 求人ねぇ
パチンコで うさ晴らしゃ
コロナにかかって 入院だ

おら、こんなのはいやだぁ~
こんなのはいやだぁ~
おらさ、地方へいくだぁ~ 
けんど地方へ行ったら いやがらせ
やっぱ大阪さいるだぁ~

ああ、コロナのねぇ あの頃の
世の中が~ なつかしい
マスクのねぇ あの頃が
い~まとなっては なつかしい
(以後 適当に繰り返し)

はあ~。
早くワクチン打ってほしいものです。
堂々と何も怖がらずに仕事できるもん。
おまけに春なんだも~ん。
思い切り、外に出て解放されたいも~ん。
だけどね。
もうひと踏ん張り。
たぶん、もう少しだけ。
だから、みなさん頑張りましょう!
自暴自棄に陥らないように。
2021年03月06日 18:43

阪急電車アナザーストーリー

「ちょっと聞いてくださいよ」
朝、病院に来るなり、ツンドラさんがおかしそうに話しかけてくる。
「どうしたの?」
「昨日の帰りの電車で、受験生と乗り合わせたんですよ」
「それがどうしたん?」
「その女子中学生たちの会話がもうおかしくておかしくて…」
ツンドラさんによれば、どうやらそれは私立高校の受験帰りらしい。
女の子三人組の会話のようだ。
まとめるとこんな具合。
A「なあなあ、試験どうやった?」
B「難しかった…」
C「私も…」
A「そうなん。私はまあまあできた気がする」
C「ええ~。いいなあ」
B「なあなあ。ところであの社会の答えってなに?北欧のやつ」
C「あれ、リアス式海岸でしょ」
A「ええ、違うよ」
B「そうやよなぁ。あれ、フィヨルドやよなぁ」
C「ああ、フィヨルドか。そういや、習ったなぁ。私、間違えちゃった」
A「えっ。ほんまに。ほんまにフィヨルドなん…」
B「そうやで。フィヨルドや」
A「えっ、ほんまにほんま?」
B「そうやで。リアス式海岸ちゃうよ」
A「えっ、私、リアス式なんて書かへん。ちがうの書いた…」
B「何て書いたん?」
A「マリフ×ナ」
B・C「えっ…」
A「私、自信もって書いたんたんだけど。そっか…違うんだぁ」
B・C「・・・」
A「ちょっと、あんたら、なんで、そんな顔して私を見んの」
B「いや、だって…」
A「だってってなに?」
C「だから…あんた、それ‥‥絶対書いちゃあかんやつやで」
A「えっ、書いちゃあかんやつ? なにそれ。じゃ、マ×ファナって一体なんなん?」
B・C「だから、ぜったい書いちゃあかんやつ。使ってもあかんやつ」
A「えっ、使っちゃあかんやつ? ちょっと待って。なによ、それ。教えてよ」
B・C「だから‥‥使ってあかんやつやて。こんなとこで言えへん」
A「ちょっと待ってよ。なんでマリ◇ァナって言っちゃあかんの?」
B・C「もうっ。○○ちゃん、大声ださんといて」
A「なんで、なんで。ちょっと二人とも教えてよ。マリファ☆って一体なんなん?」
B「だからこんなとこで大声ださんといて。絶対それ、大声で言っちゃあかんやつなんやからっ!」
C「そうやで。誘われても興味本位で買っちゃあかんって学校で習ったやん」
A「えっ、なにそれ。言っても書いても使っても買ってもあかんやつってなに? 私、なにやらかしたん?」
Aさんはますます混乱し、「なんで?なんで?」と騒ぎだし、BさんもCさんも大慌てだったらしい。
聞きながら、ツンドラを含め、乗り合わせた人たちも俯いて、必死で笑いをこらえていたようだ。
そんな、視線をそらしている乗客の反応がことさらおかしくて、ツンドラはほんまどうしようか困ったとのこと。

そりゃ、そうやろな。
こんなおもろいことあるかい。
乗り合わせたあんたらだけやないで。
きっと採点者も赤ペン片手に、おもろうておもろうて笑い転げてたやろな。
採点後のビール、格別にうまかったやろう。
ワシやったら、ぜったい花丸やるな。
ああ、羨ましい。
わしも一緒に乗り合わせたかったな。
こうやって人は誤りを学んでいくのだと思うと、ほんまおかしくてたまらんな。
ほんま使わなければええんやで。知らんで口に出すくらいは罪やあらへん。
ほんま阪急電車はええで。
いつ乗っても、なんかええからな。
 

2021年02月23日 14:31

今年も梅が咲きました。

マスクをしての通勤にもだいぶ慣れた。
当初、眼鏡が曇ったり、マスク姿で自転車に乗るのは息苦しいと思っていたが、慣れてしまえばそれほどでも。
冷たい外気をのどに吸い込んで、気管を痛めるより、案外マスクした方が、のどの調子もすこぶるよい。
不便だ、不便だ、と一概に文句ばかり並べる必要もなさそうだ。
意識の持ち方さえ変えれば、なんだって適応できる。
コロナに振り回され、行動が制限された一年だったけど、振り返れば、他にも気づきはいろいろとあった。
たとえば。
家の中でできることが案外多いこと。
外出もできず、休日に在宅をよぎなくされても、できることはたくさんあった。
だって、おかげで仕事の勉強をする時間が増えた。
夜、店が早めに閉まることを嘆いて戸惑うこともあったけど、そんなこと今となっては別に。
昔はこんな風にどこの店も早くしまっていたな、と懐かしく回顧することも増えた。
そうそう。
考え方しだい。
不便さの中でも、ネット空間で買い物もすめば、会話もできる。
接触という、互いの体温を感じられるような体験は確かに減ったけれど、それにより、未知の経験も広がった。
デジタル社会に適応する機会が増えたとでも思えばいい。
おかげで、幸か不幸か、もたもたしていたパラダイムシフトが一気に加速されたのだし。
考え方は変えてみるもんだ。
そうそう。
何も人間だけが、この世界に生きているわけではない。
今回のウイルス騒動も、もしかしたら必然的に起きたことなのかもしれない。
日々、破壊されていく環境に、生物たちが本能的に抵抗しだしたとか。
傲慢な人間の生き方に異を唱えるかのように、宿主を変え、新たな生息域をみつけようと、ウイルスたちが反旗ののろしをあげたとか。
いやいや。
彼らも生き延びるために、加速度的に進む、人間中心の世界に適応しようとしているのかもしれない。
そういえば、昔、なにをもって命とみなすかと聞いたことがある。
生命とは、繁殖もしくは自己増殖できるもの。
それが生き物であることの証なのだと。
時代も環境も変わる。
生き延びるために、意識を変え、生き方を変える。
本能的な増殖欲求のために、変異を繰り返し、生息可能な地域を広げていく。
この世のあらゆる種は、そうやってこの社会環境に適応し、生き延びてきたんだろう。
世の中は厳しいから。
適応できないとすぐに置いてきぼりにされる。

おやおや、ところがどうだ。
相も変わらず、かわりゆく社会に適応しようとせず、我が物顔で突き進もうとする輩がまだまだ、たくさんいることいること。
プライドばかり高くて、聞く耳なんてまったく持たず。
失言しては口先だけで撤回し、己の性根や考えを改めようとしない。
自分が正しいと頑なに突き通す、ひどく扱いにくい人たちが。
俺こそ絶対だ。
お前らは俺の言うことだけ聞いておけ。
さもないとわかっているだろうな。
そんな人間に、いつまでもぺこぺこ頭をさげて追従する取り巻きたちがいるから、彼らは相も変わらず我が物顔で生きていく。
ばかばかしい。
いつまで、そんな人間にへいへいこびへつらっているんだ。
汲々としがみつくことは、ほんとの適応じゃない。
心の自滅だ。

大丈夫、怖がらなくて。
彼らを、今いるその場所にそっと置きざりにしても、だれも困りはしない。
SNSのこの時代、わざわざ自ら手を下す必要もないのだ。
そのまま、そこに放っておけば、彼らは焼き討ちにあったごとく、デジタル一揆でまたたく間に炎上していく。
そうそう。
燃え上がる炎を黙って見つめていよう。
いずれ黒焦げになる屍を、そのままそこにそっと打ち捨てて、一人、また一人と背中を向けて立ち去ればいい。
忠誠を誓って、一緒に火あぶりにされる必要はない。

ほんま大丈夫だって。
怖がらなくて。
いつだって、新たな希望の主が、私たちの目の前に生まれる。
必ずや次の時代は拓ける。
怖くて、誰かにしがみつきたければ、今度はそこに付いていけばいい。
新たなる宿主も、寄生木も、探せばこの世に山とある。
ウイルスのごとく巧みに、あちらこちらをうまく渡り歩きしながら、生き抜いていく。
時代は変わっていく。
意識も変わっていく。
そうやって生物は多様性を身につけ、適応する。
生きたいと心が欲する方向へ、絶えずもがきながら、曲がりに曲がって生きていく。

ただし、道は踏み外すなかれ。
変えてはいけないものもあるから。
今年もきれいな梅が咲いた。
目に映る、小さく美しき事象はそのまま大切に。
でも、それは、きっとこれからの人間の振る舞いにかかっていく。
ならば、まずは隗から。
他人の心を変えることはできないが、己の意識は変えられる。
我がこととして、醜い行いを改め、足元を見直し、行いを糺す。
ただ難しきは、自分にそれをできるかだ。



 
2021年02月08日 16:59

息子と私の大学入学共通テスト

先日、息子が今年から新しく始まる大学入学共通テストを受けた。
コロナ禍下での新たな試験制度について、ニュースでもいろいろ話題になったあれ。
息子が受験する身としては、せめてこの時期の実施は、健康のためにも延期、もしくは大学入学時期を変更していただければと願っていたが、決まってしまったことは仕方ない。
せめて気持ちよく送り出してやろう。
その息子。
前日まで、緊張のかけらもない。
相も変わらず、携帯見てへらへらしている。
まあ、そりゃ、いままで全力で勉強頑張ってきたわけでないからな。
と、半分あきらめムードで息子を眺めていたが、第一日目。
受験して、さすがにへこんだらしい。
相当、難しかったようだ。
そりゃそうだろうよ。
だって、お前ぜんぜん勉強してねえもん。
と思いつつも、その言葉をそっと飲み込む。
「で、どうだった?」
早々に出た模範回答を見ながら、文系科目の答え合わせを終えた息子に聞く。
「は~あ、まったくあかんわ…」
頭抱えて、いっちょ前にため息をついている。
「そんなに難しかったのか」
「いままでの共通テストとパターンが全然違うもん。試行試験とも全然違った」
「ふう~ん」
「すんげえ頭を使ったから、もう脳みそパンパン」
「ぱんぱんって、中身、あったのか。ただの空気だろ。膨張しただけちゃうか」
「うるせえ」
「風船かっ!」
「うるせえ」
いっちょ前に怒ってる。
これ以上、機嫌を悪くさせてもいけない。
「ごめん。ごめん」
明日は、親らしく励まして送り出してやろう。
で、第二日目。
出かける際、リュック背負った息子はそれなりに神妙な顔をしていた。
そりゃ大変だわな。受験だもん。
ここは、父として、しっかり励まそう。
「とにかく頑張れ」
「わかってるって」
「持ってる力は出し切れよ」
「うん。頑張るわ」
「そして、もしもだ」
「もしも?」
「万が一にだ」
「えっ、万が一にも?」
「そうだ。どうしても難問題に心が折れそうになったら、父の顔を思い出すがいい」
「はあ?」
一瞬、息子は真顔で私を見た後、突然、破顔して大爆笑。
私を指さし、げらげら笑い、「ほんまのアホやっ!」。
そう言い捨てて、玄関を勢いよくバーン。
なぜだ。
私はなにを間違えた…。
もしや、息子の実力だけでなく、親の器までをも露呈させてしまう…。
それが大学入学共通テストだとしたら‥‥‥。
ああ、おそるべし‥‥‥。
新テスト、来年も侮るなかれ。
 
2021年01月20日 15:47

遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。

遅ればせながら、新年明けましておめでとうございます。
皆様は、新しい年をどのように迎えられたでしょうか。
コロナ禍は収まらず、帰省も参拝もままならず。
ひたすら新春恒例のテレビ番組を見て過ごす。
そんな正月だったかもしれません。
私も、年末まで継続診療の方々を診て、最後の日は年越しそばを食べながら紅白を見る。
そしてゆく年くる年で新春を迎えるという、いつも通りの年またぎをしました。
そして迎えた元旦は…。
やはり外出はできるだけ控えたい。
かといって、これといってすることもなし。
いつもなら近くの神社へ参拝へ。
でも今年はやめましょうか。
で、どうしまひょ?
とりあえずポストに入っていた新聞を取り、新春のテレビ欄でもチェックするかとでも思っていたら、まあ今年もしっかり初売り広告がたくさん入っている。
買い物に行くのはいやだな。
と、ぼやきながら何気なく近くの大型店舗の広告を見ていたら、学習チェアがかなりのお得な値段ででていた。
息子が使っているのは私が二十年ほど前に購入したお古。
もうボロボロになり、圧力調整部が壊れて、椅子の上下もできなくなっている。
本人はそれでも気に入っているから、これでいいというのだが…。
やはり購入しておこう。
浪人決定だから、来年も使うし。
よし。
人の少ない閉店間際の時間を狙って、そっと行って、さっと買って、さっさと帰ってこよう。
で、夜の時間帯。
いざ出かけたにもかかわらず、なにかがおかしい。
暗闇の中、広大な駐車場の向こうには、ひっそりとそびえる大きな黒い陰影。
電気が消えている。
まさか閉店?
駐車場も車が全然停まっていない。
おかしい。
そんな馬鹿な。
時間はセーフのはずだ。
新年早々、どういうことやねん…。
真っ暗闇のタイムズ駐車場の遮断機前で、絶望に駆られていると後部座席に座った息子が、
「父さん、どうやらこれ、同じ系列の違う店舗の広告みたい…。ここの店舗は除くって書いたるわ…」
と持ってきた広告を見て、ぼそりと言う。
なんというオーマイガぁーッ。
新春早々、神様も店じまいってか。
くそ、コロナめ。
いや、まだ間に合うさ。
とにかく別店舗へ急ぐんだ。
とばかりに車をバックをさせると、ゴォン。
なんやー!
と慌てて車を降りると、車の後部がコンクリート壁にゴンして、へこんでいる。
新春早々、これですか…。
また妻にボコクソにののしられるの…。
心もへこんでく。
でも、こんなことくらいで…。
ネガティブになってどないすんじゃ。
そやねん。
大当たりやねん。
大当たりなんじゃい。
めでたし、めでたし。
と涙目でごまかしながら、暗闇をヘッドライト照らし、車をぴえんと走らせる…。
で、翌日の二日。
今日は意地でもどこにもいかんぞ。
と、やることもなく、寝ぼけ眼で朝から箱根駅伝を見ていると、二区でいきなり目を奪われる。
東京国際大学のヴィンセント君。
すごい、すごい。
カモシカのような走り。
あっという間のごぼう抜き。
なんという怪走。
ほかのケニア人も、すごいぞ。
感銘して、見ていると、突然、私も走りだしたくなってきた。
もしかして、このケニアの子たちに太刀打ちできるのはオレしかいない?
ならば、いっちょやったるか。
来年は青山学院大学に再入学して…。
今から調整すれば、来年の今頃は出場させてもらえるかもしれんしな。
人間やれば、なんでもできると長友さんも本田さんも言っていたし。
そんな思い付きで、夜走り出す。
押し入れの箱から、こそこそとジャージを取り出し、この企みを家族の誰にもバレないように玄関横の、靴入れの陰に隠しておく。
そして来たぜ。夜だぜ。
へっへ。
ひっひ。
暗くなったのを見計らい、「ちょっと散歩に行ってくるわ」と言い残して…。
あばよ。俺は走るのさ。
さあ、いまだ。
銀河を超え、飛んでいけ。
新しい世界へ飛び出すんだ。
みなに俺の走りを見せつけてやる。
YOASOBIのごとく、夜に駆けるんだ。
きっと、永ちゃんも、キムタクも、こう言うはずさ。
「やっちゃえ、おっさん!」
とばかりに軽快に走りだしたつもりも、500メートルも行かない近くの飲み屋の前で、ぜえぜえ息切れ。
スピードを落とした瞬間、いかん、右のふくらはぎが…。
ひくひく痙攣してる。
やばい、やばい。
ビールでも補給しようか。
と、一瞬逡巡するも、あかんあかん。
あかんぞ、やかんぞ、キンカンぞ。
俺にはヴィンセント君が待っているんだ。
待ってろよ、ライバル……。
そう思い直し、よたよた走り続けるも、もうだめ。
さらに20メートルも行くと、ヘロヘロのヒーヒー。
眼鏡は、吐息で真っ白に染まり、ずりずりと落ちていく。
おまけに飲んでもないのに、千鳥足だ。
膝に手をつき、何度もぜえぜえ立ち止まる。
それでも頑張って右足を引きずり、前へ前へ。
そしてだ。
ついにその時がやってきた。
電信柱に手をつき、へたりこむ。
ハアハア…。
きつい。
つらいぞ。
よかったぁ、夜にしといて。
誰にもこんな無様な恰好をみられないから…。
と電信柱に手をついて呼吸を整えていると、女子高校生くらいのむちゃくちゃうるさい、にぎやかな声。
もしや背後から近づいてくる?
やばい、やばい…どうする? 
動けんぞ。
おまけに息子の同級生だったら…。
ひええ~。
荒い息吐きながら、電信柱に隠れるようにしゃがみこんだまま、必死で顔を伏せる。
でも、無駄なあがき。
「いやだぁ~。正月早々、よっぱらい?」
「吐いてんちゃう」
「みっともなぁ~」
侮蔑的な言葉をぜえぜえ波打つ背中に吐き捨てられ、おまけにダメ押しだ。
あっという間に、ごぼう抜きされ、ジ・エンド。
ああ、ヴィンセント…。
三日は筋肉痛で、心はズタボロ。
どうせえちゅうねん!
息子がくすくす笑っている。
何度、あいつの頭に青カビ生えたミカンをぶつけたろうかと思ったことか。
でも、これ以上からかわれるのがいやなので、おとなしくシュンとして新春テレビを見て過ごす。

年は変われど、人間性に変わりはなし…。
まあ、毎年毎年同じことに気づく私ですが…。
さてさて、皆様はいかがでしたか。
コロナは続きますが、頑張って予防につとめましょう。
自分の身は自分で守る。
そのような心がけが一番の予防対策のように思えます。
何事もなく過ごせますように。
ということで、本年も何卒、よろしくお願いいたします。

S様。
飼っている猫ちゃん勢揃いの絵ありがとうございました。
描かれた猫ちゃんたちが、福神さんたちのように見えました。
看護師に教えてもらい、自作の絵だということに後で気づき、お礼を言えませんでした。
スタッフ全員、すごいすごいと感嘆しております。
本当にありがとうございました。

 
2021年01月07日 16:52

あ、あれを食べるのか…

あれは、先日、急に寒くなり出したときのことでした。
ツンドラさんが急に「最近、雪虫をみませんね」と言いだしたのが事の始まりです。
「雪虫?」
温暖さんが首をかしげて、「なんですか、それ」と尋ねている。
「見たことも聞いたこともないですけど」
へえ、知らないんだ。
昔は良く見たけど。
そう思いながら、別室での二人の会話に聞き耳を立てる。
「雪虫ってさ、白い小さな虫でね、冬が来る前にふわふわたくさん飛ぶんだよ」
「へえ~。そうなんだ」
分かったような分からないような。
話を聞きながら、そんな表情で温暖さんが頷いている。
実際に見ないとね。
たぶん、あの雪虫の光景はイメージできないだろうな。
寒い中、宙に浮遊するように雪虫がふわふわ飛びかう光景は。
「結構、きれいというか、不思議な光景だよ」
「へえ」
そんな二人の何気ない会話に聞き耳を立てながら、こちらはこちらで診療中の調べ物をしていると、突然、すごい笑い声が薬局から聞こえだした。
「まじで」
「だって、食べてみたいじゃないですか」
「うそ~」
一体、何が起きたのだ。
顔をのぞかせると、ツンドラが「先生、大変です」と私の顔を見て、嬉しそうに言う。
「今度、みんなで虫を食べることになりました」
「はあ?」
何を言ってんだ、こいつ。
「どういうこと?」
「雪虫の話をしていたら、何がどうなったか、温暖さんがネットで食べる虫をいきなり購入したんです」
横に立つ温暖の顔を見ると、嬉しそうに「うふふ」と笑っている。
「はあ?」
「この人ね、虫、みんなで食べてみましょうって、いきなり購入ボタンをポチって押したんです」
「だって一度食べてみたいじゃないですか。昆虫がどんな味するのか」
いや、あのぉ……。
君たち、どういう頭の中をしてるんだ。
水族館で泳いでいる魚を見ていると、なんとなく食べたくなる気持ちはわからなくもない。
が、雪虫の話をしていて虫を食べたいと思ったやつを見るのは初めてだし、その気持ちはまったく理解できない。
ないない。
ないぞ。
一度だって思ったことないぞ。
「え~、うそでしょ。一度くらい食べてみたいじゃないですか」
なんだ、その嬉しそうな表情は。
完全にテンションが上がっている。
嘘だろ。
温暖もツンドラも満面の笑顔だ。
普段はゴキブリが出ただけで、とんでもない悲鳴を上げるくせして…。
こいつら正気か?
やっぱり頭がイカレていたのか。
うすうす気づいていたけどな。
「俺は、いやだよ。いやだって。だいたいなんで俺まで食べさせられるんだ。二人で食べろよ」
「ダメです。みんなでいっせいのせーで食べますから。だって、そうした方が楽しいでしょ」
「うんうん」
あかん。
ツンドラまで乗る気になっている。
完全に支配されたような空気が薬局に…。
何を言っても無駄だ。
そして私は…負けた。

後日、そのネットで注文された昆虫セットはきれいなパッケージで届けられた。
見た目はグリコのチーザみたい。
きれいな小袋。
海外産らしい。
二人が興奮気味に袋を眺めている。
そして袋を開けて、皿に…。
その手つきが妙に恭しい。
何か神妙な儀式が目の前で執り行わているかのような感じさえする。
こいつら、祢宜か、巫女さんか…。
そして、中身は全部で四種類の虫たちだった。
見た目はかなりグロテスク。
コオロギとサナギ。
どれも揚げられている。
正確に言えば、異なる大きさのコオロギらしき成虫が二種類。
同じように異なる大きさのサナギが二種類。
サナギたちの見た目は風の谷のナウシカに出てくるオーム……みたい。
そして、こいつら、ちゃんとそれぞれ三人分に振り分けてやがる。
有無を言わせないつもりらしい。
まじで、食べなきゃいけないのか…。
げんなりしていると、妙に嬉しそうな表情で二人が「では、先生、どれから行きましょうか」と私に尋ねてくる。
うるせえ。
食いたくねえって。
お前ら、バッカじぇねえの。
悪態をつきたくなるが、でも意気地なしとバカにされるのがいやだから、あきらめる。
サナギにしよう、サナギ。
これだったら、まだいけそうだ。
スコーン、スコーン、湖池屋スコーン。
だってさ、見た目がそのチーズ味に似てるもん。
そうだ、そう思えばいい…。
半泣きしながら、黄色いサナギスコーンを摘まむ。
「せぇ~のぉ~で」
二人が音頭を取り、口に運ぶも、ダメだ、無理。
二人がむしゃむしゃしている横で、涙を流しながら、何度もためらっている自分がいる。
「あれ、案外イケルかも」
「うん。食べられなくはないね。揚げたお菓子みたい」
「先生、早く食べてくださいよ」
そうせかされ、べそかきながら、なんとか口に運んで、むしゃむしゃ。
あれっ。
揚げた川エビの味だ。
不思議な食感で、案外、食べられなくもない。
「でしょ。大丈夫ですよ。なにかあったら、虫は食べられますよ」
「うむ。そうかな?」
なんだかはめられたような気がしながら、その他の虫も、食べさせられる。
でも、コオロギはダメだった。
見た目がグロテスクすぎる。
それでも二人は、むしゃむしゃ。
「まあイケルかな。なにかあってもこれで大丈夫」と納得したように食べている。
でも、私はダメ。
コオロギのような原型がわかる虫は、恐怖心が上回って最後まで味を楽しめない。

でもね、それは日本人の固定観念なんだよね~。
世界では昆虫を食す文化は確かにあるもん。
実際、東南アジアの市場で、大量に売られている光景を目にしたことがあるし。
日本だって、蜂の子などを食べる地域があるしな。
おまけに日本は食料自給率が低いから、いつか食糧難が訪れれば、そういった食材の開発も必然となってくるか。
もしかして案外、その手の開発や研究は進んでいるのかも。
確かに昆虫は大量に入手できる自然食材の一つであることは事実だから。
様々な味付けや見た目さえ改良すれば、エビやスルメの代わりにお酒のアテになるかもしれない。
となるとだ。
案外、虫かごのカブトムシをみながら、いつか「これ、おいしそう」と話し合っている時代が来るのか。
孵化を楽しむのではなく、食材としての興味として…。
そして、カップルたちが、昆虫館を、まるで水族館のように別の視点で楽しんで訪れる日が来る…かも。
ただ、だ。
私に関して言えば、その必要性が訪れる日まで食べない。
二度とだ。
それくらい衝撃的な食感だった…。
いまだに食べさせられたことが腑に落ちない。
くそっ。
覚えとけよ、お前らぁ!!

 
2020年12月27日 20:14

あのぉ、Mさん。やっぱりでしたか……。

だんだん寒さが厳しくなりつつある。
コロナ禍もあり、休日、家から出るのが億劫というか、ほんま意地でも出たくないというか…。

で、少し前のこと。
外出をできるだけ控えているせいか、休日は特にやることもなし。
貯め撮りしていた番組でも見て、暇な時間を過ごそうか。
リモコンをいじりながら、録画リストから探偵ナイトスクープリターンズを選ぶ。
内容はもう何十年も前の再放送分だ。
いつものように笑いながら見ていると、最後の依頼が介護士だっただろうか…。
「拝啓探偵様 仕事がら老人と話すことが多い者です」と始まり、職場での老人たちとの会話から、ある一つの共通法則に気づいたとのこと。
それは、老人たちに好きな食べモノを訊ねると、必ず、「わたし? なーんでも食べます」と返答されること。
せっかく何かのお祝いの際だ。
好きなものを食べて喜んでもらおうと依頼者はたずねているのに、ご老人方は何度聞いても、十中八九同じ返答をしてくるので困るとのことだった。
で、依頼文。
「他のご老人も同じ返答をするのでしょうか」
探偵は若かりし頃の石田さん。
本当に老人は「な~んでも食べます」と答えるのか。
で、調査開始。
その場所は豊南市場だった。
十年ほど前の市場。
すごい活気で、人々が行きかっている。
な、な、なつかしい。
そして、そのにぎやかな市場で、あちこちから現れるご老人たちをつかまえ、石田さんが例の質問を繰り返す。
「好きな食べ物は?」
「わたし? なーんでも食べます」
「嫌いなものは?」
「ないない。な~んでも食べます」
「ハンバーグとかカレーとか好きな食べものあるでしょ」
「ないない。わたし、な~んでも食べます」
皆が皆同じようにそう答える。
それがまた、独特な大阪弁のイントネーションで、なんだか妙におかしい。
げらげら笑いながら見ていると、突然見たことのある顔が…。
「あっ、Mさんや」
Mさんとは現在90歳の近所に住むおばあちゃん。
いつも、老人用の買い物カートを押しながら、私の前に現れる。
トレードマークは、はだしにサンダル。
この寒さなのに…。
「寒くないの?」
と尋ねると、「わたし? 靴下きらいやねん」
「なんで?」
「足裏ごわごわすんのいややねん」
そういって、サンダルを脱ぎ、その小さなはだしを私に向けてくる。
ほんまに…。
しわくちゃの笑顔がどこか優しげ。
ほんとの近所付き合いだ。
「先生、寒いな。風邪ひくなや」
「Mさんもね」
「ほんまコロナは大変やで。先生も気を付け」
早朝、こんなMさんと会話するのがこちらも楽しみで、なんとなく朗らかな気分になる。
開業時にはいろいろとこの辺りの事を教えてもらい、ほんと助けてもらった。
でも、最近は少しバタバタして、なかなか姿を拝見することもなかった。
心配になって、早朝、玄関の外からおうちの中の気配に耳を澄ませてみたこともあったけど。
それでも気配を感じれば、「大丈夫やな」と一人安心して、Mさんちの玄関先から離れる。
でも会わないと、なんとなく一日気がかりというか…。

そのMさんを数週間ぶりに見た。
それも画面の中で。
思わず飲んでいたお茶を噴出した。
口元を袖で拭きながら、画面に食い入る。
う~ん、やっぱりだ。
若かりし頃のMさんだ。
画面の中では、石田さんにつかまって、「なんや?」と声をあげている。
へえ、Mさん、随分お若いじゃん。
はつらつとしてさ。
背筋はピシッ。歩き方も若い。
おまけに、昔から、はだしのサンダル…。
でも買い物カートは押してない。
で、早速、石田探偵から先ほどの質問が。
Mさんは、寸分変わらず「わたし? な~んでも食べます。嫌いなもの? ないない」と真顔で返答。
そのしゃべり方が今と同じで、またおかしくて…。

先日の早朝、シャッターを開けていると、Mさんが音を聞きつけたのか、久しぶりに外へとでてきた。
「先生、おはよう。久しく見いへんかったな。元気?」
「おはようございます。元気ですわ。それより寒いから靴下はいた方がいいですよ」
「わたし? いややわ」
「なんで?」
「あれ、足裏ごわごわするもん。苦手やねん」
サンダル脱いで、いつもと同じようにこちらに小さなはだしを向けてくる。
「見せなくてええですわ。サンダルはよ、はいてください。風邪ひきまっせ」
「ほんまやな。コロナもあるからな。気ぃ付けるわ」
といいながら、あなた、マスクしてへん。
「マスクした方がいいですよ」
「大丈夫。なにかあったらいつでも付けられるように、ポケットに入れたるから」
といって、ポケットから、ちらっと見せるだけ。
あのな。マスクは、かけるもんやで。
入れとくもんちゃう。
一通り、笑いながら話し合った後、ふとテレビで若かりし頃のMさんを見たことを思い出した。
「Mさん。昔、豊南市場で探偵ナイトスクープに出てませんでした?」
「はあ? そないことあったかな?」
いつもの買い物カートを押しながら、首をかしげている。
「すごい若かったですよ」
「そっか。でも、覚えてへんわ」
「ふ~ん」
耳も遠くないし、痴呆もない。頭も切れきれだ。
カートを押してはいるが、足腰もしっかりしている。
そんなおばあちゃんだから、いくらなんでもテレビに出たことは忘れないだろう。
他人の空似か…。
似てる人なんていくらでもいるからな。
と思いながら、ためしに、例の質問をしてみた。
「Mさん、好きな食べものなに?」
「はあ? わたし? なーんでも食べます」
「嫌いなものは?」
「嫌いなもの? ないない。わたしは、な~んでも食べます」
顔を上げ、胸を張って、そう答える。
それを聞いて、一人心の中で爆笑。
Mさん。
やっぱ、あなたやわ。
だって、口調も声も一緒やもん。
はは。
ほんま素敵です。
そのまま、な~んでも食べて、長生き続けてくださいな。
そうそう。
今度、からかったお詫びに、うちのスタッフのお気に入りのプリン持ってきますわ。
マスクして待っとってくださいな。
 
2020年12月13日 20:25

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