ゆりの木動物病院|阪急庄内駅すぐ近く|大阪府豊中市

阪急宝塚線・庄内駅3分、犬・猫・ウサギを診る動物病院です。

お目よごしですが・・・。

ヒロシじゃなくてジョウシです。

ヒロシじゃありません。
ジョウシです。
先日のことです。
忙しかったため、「大丈夫? 疲れていない?」とスタッフに声をかけてみました。
ありがたいことに、「はい。全然大丈夫ですよ」と温暖さんがこたえてくれました。
念のためです。
「ほんとにほんと?」と再度二人に確認してみました。
二人は頷いてくれます。
「大丈夫ですよ。安心してください」
「だって私たち、ストレスがたまったら、先生のお腹をサンドバック替わりにしますから」
再び頷きながら、温暖さんが私の目の前でシャドーボクシングをしはじめました。
私、聞かなければよかったとです。

ジョウシです。
これまた最近のことです。
「俺さ、太極拳を始めてから、腰が痛い日が少なくなってきたんだよね」
と話したら、ツンドラさんに真顔で「えっ。あんなヘンな拳法で効果があるんですか」
と言われました。
そ、そうですかぁ。
やっぱりですか。
あなたの目にはそんな風に映っていたかとですか。

ジョウシです。
こいつはだいぶ前のことです。
床でつまづいて転びかけたとき、心配したツンドラさんが慌てて声をかけてくれました。
「おじいちゃん、大丈夫?」
そうですかぁ~。
やっぱりあなたの目には、私は、変な拳法使いの、悪く言えば、少し気が触れたお年寄りにしか映らなかとですね…。

ジョウシです。
この前、自分の丸いお腹を分服茶釜の狸のように一人悦に入って叩いていたら、「何も出てこないドラエモンのお腹」と横からスタッフに言われました。
とほほのほですばい。
本当に申し訳ございませんね。
私だって何か出せるものなら出してみたかとです。

以上、ジョウシです。じょうしです。上司です。一応、たぶん上司です。
そんな私が、最近、ソロキャンプに無性に行きたくなってきたのは、やっぱり気のせいではないと思います。
私、哀愁を帯びたあのヒロシさんの気持ちがなんとなく分からなくもなかとですから。
 
2020年08月01日 19:10

な、なんと。ボーアがボワッと火を噴いたぁ!!

先日まで毎朝、職場で、
「ボーア、マルテ打てんサンズ」
「ボーア、ぼあぼあしてんじゃないよ」
と負けるたびに助っ人三人衆について嘆いていたら、なんと昨日はそんなボーアが奇跡の満塁弾。
今宵もボヤ程度の火しか噴かないかと思っていたが。
当たれば飛ぶじゃないか。
もしかしたら、ようやく私のタコ釣りの怨念があなたのもとに届いてくれたのかい。
こんなことなら、もっと早くクロネコヤマト宅急便で届けておけばよかったよ。
まあ、とにかく良かった。良かった。
まあ、当たればだけどな。
と毎日文句ばっか言っている。
でも、いちおうは応援してるんよ。
と思いつつも、いつまで続くのかなあ・・・。
頼むよ、ほんまにボーア。
それにしても大阪はいまいち盛り上がらんのぉ。
阪神だけのせいやろうか?
いろんなスポーツの在阪チームも多く、さらにはファンも熱狂的なのにどこも成績はパッとせん。
先日は深夜のサッカー。
大好きなサッカー。
おまけに大阪ダービーや~ん。ちょ~楽しみ~。
頑張れ、セレッソ。打て、ガンバ。
あれれ。
いまいち盛り上がらん。
う~ん。
ダービーちゅうても迫力に欠けるなあ。
無観客やからか。
いやいや。がつがつとした激しさがありゃせんぞ。
テクニックはうまいけどな。
なんかなあ。それじゃあかんやろ。
そのボール、奪えよ。激しく追えよ。もっとがんがん走ってくれよ。
こちらはプレミアやリーガみたいな激しい球際の攻防がみたいんや。
Jリーグのすごいところをみせてくれ。
いやいや。あれまあ。もう前半終了?
これ、選手のせいだけちゃうんちゃう。
録画放送やしな。おまけにシュート場面ばかりの編集やんか。
なんや、またCM。コマーシャルばっかやんけ。
どうせならタケモトピアノをやってくれ。
あれ、何度みてもおもろいからな。
金鳥でもええで。
おっ、始まった。
おいおいおい。
へいへい。走れよ。ほんまに。なんか拍子抜けやな。
こっちは打ち合い見たいんや。ええ~、なんなんこれ。
もう終了? 結局2対1か。
しょぼいなぁ。どうせなら15対10くらいのおもろい打ち合いしてくりゃええのに。
ダービーだろ、ダービー。天下の大阪ダービーやんけ。
こんなん大阪ダービーちゃうで。ただの大阪漫談や。
頼むで、ほんまに。
また勝手なことばかり。
ぶつぶつ文句ばかり言いながら、それでも私はいつも在阪チームを応援している。
こんな、グダグダのおっさんの気持ち。
どうか天まで届いてほしい。
でも今日も雨。
あ~あ。
なんやねん。
今度はどしゃぶりやん。
あんたなあ、天に届く前に、これ以上、おっさんの思いを洗い流さんといて。
ボーア、ほんま次も頼むでぇ。
頼むで、ほんまに!!

 
2020年07月06日 14:45

今日の釣果はほんとに、ほんとのタコ

打たず、打てず、打たれて、また打てず。
阪神はまた負け。
矢野監督の顔が今日も青ざめている。
だいたい、助っ人、助っ人と騒ぐのもいいけどさ。でもなあ~。
バースの亡霊をいまだ追い続けて、はやどれほどの月日が過ぎているのだろう。
掛布さんや、岡田さんがもう一度復帰してくれればいいのに。
仙さんが生き返って、また監督してくれたらなあ。
早くヤクルトの村上選手のようなすごい若者が出てこないかなあ。
履正社出身の井上くんはまだ二軍なのかなあ。
早く出てきて、岡本やギータのようにバンバン打球をスタンドの遠く向こうまで飛ばしてくれないだろうか。
そんなもやもやした梅雨の時期。
気持ちはよ~くわかります。
私もその一人です。
勝って雄たけびをあげることもままならず、かといって愛するサッカーも試合がなく、趣味という趣味もないまま、日々仕事で生きている。
少し、すかっと気分を発散したいなあ。
そう思い、先日、スポーツの代わりに小さい阪神さんのビックフィッシングを見ていた。
へえ、釣りってそうやってやるんだ。
釣ってみたいなあ。
エギングってイカ釣りのことなんだ。
タコっておもろそう。
そう思った瞬間、なるへそ。
タコか。
これなら私にでもできるかも。稲妻に打たれたようにそう思った。
おまけにタコならつれなくてもタコじゃないか。
へへ。今日はタコでした。
そう笑って帰ることができるじゃないか。
よし、タコ釣りに挑戦だ。
今度はタコ釣り名人だ。
さっそくの翌日、スタッフにタコ釣り挑戦への意気込みを語る。
「私、タコ釣りを始めようと思う」
「ああ、そうですか。今度はタコですか」
調剤をしながら、二人はまったく興味のなさそうな生返事。
タコにはタコ返事でいいってか。
こいつら、私がまたアホなことを言い出したと思っているに違いない。
ふん。いいよ、いいよ。
家に帰って子供に話そう。
でもこいつもだ。
「はいはい。どうぞご勝手に。お好きにどうぞ。頑張って」とまったく相手にしてくれない。
なんだ、その冷たい態度は。
頭にきて、翌日スタッフにもう一度に言う。
「大量につってきたら、分けてあげようか」
「はいはい。頼みます」
「夕食の食材は何も買わなくていいよ。大量のタコがあるから。なんなら二人の家の近くまで持っててもいいけど」
「は~い。楽しみにしてま~すよ~」
「いいの。そんないいかたして。予定ではクーラーいっぱいに釣ってくるはずだけど」
「へえ。そうですか」
「そうだ。食べきれなかったら、凧上げ用に大空に飛ばしてくれてもいいし、なんなら車にタコメーターとして搭載してもいいと思うよ。夏場すぐ腐ると思うけどさ、だはは」
スタッフたちは笑わない。
それどころか「そうですか。はいはい。それはそれは。期待していますよ」とまったくつれない。
ほんとにどいつもこいつも。
なんだ、なんだ。ふん。
頭に来ながら、釣り具屋にタコ用の竿と仕掛けを見に行く。
「初心者です。タコ釣りをしたいと思います。何を選べばいいですか」
「タコ? 初めてじゃ、つれないと思いますよ」
「じゃあ、初心者向けの釣りは?」
「サビキかな」
「生臭いエサを触りたくないので、ルアー系がいいです」
「そんなんむりむり。つれないですよ。初心者じゃ」
こちらもにべもない。
いいよ。いいよ。ただ挑戦したいだけだから。タコでいいよ。タコにするよ。
タコがタコ釣って何が悪い、このたぁーこ。ふん、これ以上、バカにすんなって。
「じゃ、タコでいいですね。船ですか波止場ですか」
「波止場。私は船酔いするタイプ。好きなタイプは松下奈緒」
「あっ、そうですか。じゃ、竿と仕掛けはこれとこれで。一番安いやつにしときますね。じゃ、頑張ってたくさん釣ってきてください」
「えっ。釣れるんですか、素人でも」
「まずまず、無理です」
ふん。どいつもこいつも。釣りだけにつれない対応しやがって。
あれ、うまいダジャレじゃないか。おもろいからよしよしよ。ハハハ。
そして、高ぶる感情を抑えながら、本日タコ釣りに行ってまいりました。
タコと言えば、明石。そうそうタコは明石じゃなきゃ。おんぼろ車で江井島まで行き、さっそく釣りの準備をする。
でも、あれ。
まずもって結び方が分からない。調べもしなかった。
適当に外科結びで対処しよう。
まあ、なんとかなるだろう。
と思って、両軸リールの使い方さえ分からず、訳が分からないまま竿を海に向け、ゆらゆらタコくんという仕掛けをえいと投げると、いきなり糸が途方もない勢いで絡みだし、リールが止まってしまった。見ると、リールの中がちりちりのアフロヘアみたいになっている。どうすればいいのだ。波止場に座り込み、もつれた糸を懸命にほどく。むし暑さで汗がにじむ。ほどけない。ほどけない。あーれー。
そうやって二時間ほどが過ぎ、誰も助けてくれず、横の人はもたもたしている私を笑いながら、タイをバンバン釣っていて、なんという衝撃。
ようやく糸をほどきなおし、もう一度海に向かって竿を垂らすと、またリールがじゃがじゃがじゃん、じゃがじゃがじゃんと絡みだす。
くそっ。またか。
横のおっさんたちはくすくす。その周りの小さな子供がげらげら。
糸ほどきのコツだけはつかんだのか、今度は三十分くらいでほどける。
次こそは。糸をゆっくりと、どきどきしながら海面へ垂らす。
今度ばかりは大丈夫。すこし感覚が分かったかも。
でも竿にはまったく反応なし。手ごたえなんてまるでない。
テトラポットに座りながら、時間だけが過ぎていく。その間も汗がだらだら流れる。肌がひりひりして仕方がない。
結局、暑さと慣れない釣りに疲れ切ってしまい、朝早くから来ても、正味糸を垂らしていたのは一時間ばかりか。
釣果はやっぱりタコ中のタコ。
くそお。阪神め。あんたらが勝ってくれないからさ。
ファンはこんな羽目になるんだよ。ちぇ。
でも、あきらめずに次回。
必ずリベンジしてみせようぞ。
俺は男だからな。まあ、ダメダメのダメ中のダメだけど。
でも、悔しいからもう一回やってやる。
絶対にあいつらの通勤自転車とスクーターに生のタコメーターを搭載してやる。
そう決意し、また勝負に挑もう。
たぶん秋口くらいに、いや、冬かな。
それとも来年にしようかな。



 
2020年07月05日 21:05

線路はどこまで続くのか

六月は過ぎ去り、もう七月。
月日が過ぎるのは早いなあとつくづく思う。
開業してからというもの毎年六月には大きな出来事があった。
例えば一昨年。
起きたのは大阪北部の震災。
通勤での運転中、急にどん。
大きな縦揺れが起き、車内で体が真上にはねた。
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
目の前の電信柱はぐらぐらと揺れ、アスファルトも波打っている。
その後も、余震が続く日々。
そしてさらには大型台風。
あの日。
窓外の暴風雨を眺めながら、誰も来るはずがない受付に座っていた。
窓はみしみしときしみ、シャッターはガタゴトとうなり、暴風の中、窓外では樹々の枝葉やシート、すだれまでもが飛び交うのが目に映った。
一体、今年はどうなるのだろうか。
開業したばかりのなのに。
ひやひやしながら思っていた。
そして昨年。
六月に吹田での交番襲撃。
その日、患者さんが朝早く来院されるため、いつもより早く起きてテレビをつけた。
速報でのテロップ。
千里で銃撃があったとのこと。
犯人は捕まっていませんと、アナウンサーが何度も繰り返す。
嘘やろ。
結構近くやん。
ひやひやしながら、自転車に乗ると、空にはヘリコプターが物々しく旋回。
警官があちこちに立っている。
横を通り過ぎると、鋭い目をした警官に顔をじっと見つめられた。
ヘリコプターのブルブルとした地面を揺るがすような音が鳴り響く中、緑地公園近くを走っていると今度はパトカーのけたたましいサイレン音。
背後から迫ってきて、なにも凶悪なことはしていないのに自分が追われているような錯覚までした。
今年は、どんな六月になるのだろう。
正直、不安だった。
そんな気持ちでこの六月を過ごしていたのだが、ありがたいことに今年は大きな出来事はなかった。
でも、本当に何事もなかったか。
そうでもない。
コロナという災禍。
いまだに続いている。
今年はこのままずっとコロナウイルスに苛まれ続けるのだろうか。
そんな出口の見えない渦巻に巻き込まれたまま、毎日が過ぎている。
昨年暮れから、海外で起きた、対岸の火事のように眺めていた災禍。
気づくと、災いはいつの間にか燎原の火のごとく目の前へと迫っており、国家は自粛という一時的な鎮火を講じてはみたものの、それをあざ笑うかのように小さきウイルスは形を変え、姿をくらまし、それでもひっそりと、ひそかにくすぶり続けていたらしい。
咽頭や鼻腔の粘膜。さらには目には見えない肺野という、無限の広がりがありそうな人体という小宇宙で、はたまたその奥底の無数の肺胞で、粘着するかのようにねっとりとへばりついて。そのままじっと息を殺して潜み続けていたかと思うと、人の往来の自由化とともに、いよいよ待ったましたといわんばかりに飛び出してきて、それどころかさらなる勢いを増して、今ではもはや簡単には消えそうにもない飛沫という途方もない量の火の粉を、我々に向けてこれでもかとこれでもかと次から次へまき散らしてくる。
ネットやテレビでは様々な情報が飛び交い、いろんな立場の人間がときには罵倒のような議論を交わしている。
一体なにが正しいのか。
どこに責任の所在を求めようとしているのか。
一向に見えぬまま。
その間もコロナは素知らぬ顔で、次々と宿主を変え、己の姿を変幻自在に、ものの見事に亜型として変異しながら、次なる新たな人体という隠れ家へ住まいをすいすい巧みに遷していく。
本当は誰も知らない。わかりもしない。
専門家だって人間。
きっと本当のことまではわからず、困っていることだろう。
どうすべきか分かるはずがない。
だって私たちはすぐそばの隣人だって知らない。
隣の相手がどのような考えを持ち、どんな人間か、うわべや態度だけで判断しているけれど、本当はその心根まで推し量ることはできていない。
専門家も、試験管や顕微鏡下でのウイルスの振る舞いはある程度つかめてはいても、彼らの真の姿や、魔法のような変化体系まではいつまで経っても掌握することはできないだろう。
動物を相手に診療をしているといつも思うこと。
抱えた疾病を前にいつも思う。
目に見える多少なりの病に対応できてはいても、本当に真の意味で治しているのだろうか。
きっと体の隅々で傷つき、ダメージを受けた細胞まではケアできていない。
不安がる動物の体や心の機微、ストレスまでしっかりと対応できてはいない。
治せそうにない病気を前にしたときはなおさら。
彼らを前にどうすればいいかさっぱり分からないこともある。
掌握なんてまるでできやしない。
いや、考えてみれば、この自己さえ、私はコントロールも支配もできていない。
目の前の症例に、感情は波のようにいつも起伏を繰り返し、日々困惑し、悩んでいる。
日々いっぱいいっぱい。
そんな人間に未知の生き物を思いのまま本当にコントロールすることなどできようか。
そんなことは無理だ。
ならば、災禍には?
一体どうする?
対策は?
誰かへの責任の所存を求めるのではなく、わかっている情報をもとに自分自身どう振る舞うべきか判断していく。
見えない彼らと折り合いをつける対策を自分で考えながら講じていく。
だんだんと、そうすることが一番大事なことのような気がしてきた。
誰かの言葉をうのみにしていると、責任の所在を誰かになすり付けてしまいそうだ。
際限のない議論に踏み込めば、この小さな頭が混乱してくる。
それどころか下手にそこに首を突っ込めば、自分の心も体もどんどんダメージしていく。
大事なことは、なんだろう。
振り回されない。
誰かのせいにしない。
情報にかく乱されない。
最近、日々、様々な人の振る舞いや言動をテレビやネットで眺めながら、大事なのは密閉、密接、密集という三密行動だけではないように思われてきた。
ならば真のソーシャルディスタンスとはなんぞや。
あふれんばかりの情報という混乱から、適度に距離を保つこと。
その距離感も、ソーシャルディスタンスという言葉の意味合いの一つとして含めていいのでは。
マスコミやネットでは様々な情報があふれ、過剰な攻撃に傷つき、心痛めている人もいると聞く。
今もこの間も、ありもしない誹謗中傷に泣いている人や、命を絶つほどまで追い込まれている人もいるらしい。
ネットだけでなく、学校でも職場でも。
我々の周囲には、様々な災禍が渦巻いている。
今一度、私自身、距離をとることの大事さを考えてみようか。
近づきすぎず、離れすぎず。
月日は終われど、人災や自然災害、災禍はやまず。
私たちは今後も目の前で次々と起こる森羅万象と顔を突き合わせていくしかない。
今年の六月。
振り返れば、過ぎゆけど、考えさせられる、いつもの六月だったのかもしれない。

 
2020年07月04日 18:27

おおぶたこぶた。

最近、雨が多いです。
アジサイやタイサンボク、ヤマボウシ、夾竹桃の花々がとてもきれいです。
自転車での通勤途中、曇天にあちらこちらでひそやかに咲く花々に目を配りながら、今年は長い梅雨になりそうだなあ、と最近はなんとなく思っております。
ゲリラ豪雨にならなければいいのですが・・。
いつものことですが、夏生まれは暑さに強い。冬生まれは寒さに強い。
そんなことをよく聞きます。
が、本当に誕生月に暑さや寒さへの耐久性や好みが関係しているのでしょうか。
そんなの嘘やん。
いつも私は思っています。
なぜって私は六月生まれです。
でも、梅雨はあまり好きではありません。
じめじめとした暑さには毎年辟易するほどです。
ということで私に関しては、生まれ月と季節の好みに関するこの方程式は成り立たないようです。
まあ、そんなことはどうでもいいことです。
さて、それはさておき、さてさてさて。
先日のことです。
かなりの大雨でその日は患者さんの来院がほとんどなく、たまにはこんな日もいいね、とスタッフ一同気を休めておりました。
時間もあったので、お菓子好きの私が普段から用意してあるチョコレートやせんべいなどを食べながら、三人で談笑しておりますと、
ツンドラさんが
「やだ。先生また封を開けるんですか。そんなに食べたらコブタになります」
と平然とのたまいます。
「えっ?」
びっくりして彼女を見ると、
「違う、違う。おおぶたになるですね」
えっ。
ええぇ~。
いま、平然とひどいことを言っていませんか。
私をいよいよおおぶた呼ばわりするのですか。
思わず絶句していたら、彼女は「違いますよ。違います。安心してください。先生のことじゃありません。私のことです」
とパンツをはいた安村さんのような絶対的な自信ありげな表情で私に言います。
「ほんまか。ほんまに俺のことを言ったんじゃないな」
と疑いの目で、さらには念を押すように彼女を見つめて問いただすと、彼女はさらなる屈託のない笑顔を浮かべ、こういいました。
「だって先生の場合、フォアグラですから」
「・・・」
みなさん、どう思われますか?
そんなこと思ってても言いますか。
それとも私が言わせてしまっているのでしょうか。
これをなんといえばいいのでしょうか。
分かりません。
私にはさっぱり分かりません。
ただひとつだけお願いだけはさせてください。
ああ、雨よ。
願わくば、ひたひたと降り続けながら、彼女が繰り出す様々な言葉の毒も一緒に洗い流しておくれ。
そして願わくば、私の肝臓からもあふれ出した脂肪を流し切っておくれ。
六月生まれのこの私。
雨はすきになれそうにもありませんが、長くなりそうな雨空に、そうお願いしたい、そんな思いで先月はいっぱいでした。
 
2020年07月03日 16:56

どこのどなかた存じませぬが…

先日のこと。
診療中、バタバタしており、受付に誰もいない時がありました。
来院を知らせるピンポーンの音が鳴り響いているのに、一人は調剤、他は診療と手を離せず、「すみませ~ん。少しお待ちくださ~い」と声を上げるしか対応はできませんでした。
その間に、ピンポーンとまた鳴り、何も言わず帰られていく足音が…。
スタッフがようやく受付に戻ったころには誰もおらず。
その代わり、受付カウンターには四つ葉のクローバーがそっと置かれておりました。
どこのどなたか存じませぬが、スタッフ一同、うれしい気持ちになりました。
大事に押し花にしようとしております。
どうもありがとうございました。
2020年06月09日 14:36

息子の優しいマッサージ

疲れて家に帰ると、居間で息子がイヤホンをし、スマホを見ながらにやにやしている。
勉強もせず、何かよからぬものでも見ているのではないか、おまえ。
学校が休校だとしても、勉強もせず、自堕落な生活を送っているなんていけないぞ。
そんなのはぜったいよ~くないぞぉ。
ここは親として一度注意しておこう。へっへ。
【息子よ。今日もスマホばかりやってただろ。たまにはやるべきことをやりなさい】
「はぁ~ん」
【はぁ~ん? なんだ、その態度は
「えっ、聞こえないんだけど」
息子がイヤホンをしたまま、スマホから視線を上げ、不機嫌そうに私を見る。
なんという反抗的な目。
一瞬、戸惑う。
でも、ひるんでいる場合ではないぞ。
私にだって、父親としての威厳というものがある。
多少せき込みながら、頑張れと自分の心に言いきかせる。
そうだ、よし。
なんならスマホ以外のなにか他のことをさせてみよう。
【どうだ、息子よ。たまには父の肩でももんでみたらどうだ】
思いつくままに提案してみた。
息子は椅子に座ったまま怪訝そうな顔でなおも私を見ている。
イヤホンを一向に外そうとしない。
お前、私の声が聞こえないのか。
お前には親の思いが届かないのか。
いつからそんな息子になったのだ。
戸惑いながら私は息子の耳からイヤホンを外す。
そして中腰になり、真正面から息子の顔を覗き込むように向き合う。
【息子よ。どうだ。たまには】
「たまにはってなに?」
【だから、敬愛し、尊敬してやまない父の腰をたまにはマッサージでもしたらどうだ】
ふん。
バカにしたように鼻をならし、「あほくせ」と息子は私の手からイヤホンを奪いとった。
また耳にはめる。
「尊敬なんかしてねえし」
【えっ。嘘だろ。お前、照れてる場合か】
「照れてねえし」
【素直じゃないやつめ。正直にいえばよろし。もう一度言う。敬愛し、尊敬してやまない、感謝してもしきれない父親の肩をもめ】
「だから尊敬も敬愛も感謝もしてねえし。ほんま、うぜえな」
な、なんと。
なんという照れ屋なんだ。
素直に認めないなんて。
私もまけてはいられない。イヤホンをぐいと奪い返す。
「なんだよ。勉強の合間に音楽くらい聴いててもいいじゃんか」
【音楽ばっかは良くない】
「音楽ばっかじゃないし」
【じゃ、スマホばっかは良くないし】
「ばっかじゃねえし」
【どうだ。たまには父さんと相撲でもどうだ。で、お前が負けたら肩と腰をもめ】
「なんでだよ」
【なんでだと。当たり前だろ。どうだ、敬愛し、尊敬してやまない、感謝してもしきれない、その背中をいつまでも追い続けたいとどうしても思わせてしまう父親の腰をもめ】
「ああ、うっとうしいなあ」
【とうとうもむ気になったか。尊敬し、敬愛してやまない・・・】
「もう、わかったって。ほんまうぜえな。でも、条件があるから」
【なんだ?
父さんが負けたら、5千円くれよ」
【なに? なんで5千円もやらなければいけない】
「ははぁ~ん。もしかして俺に負けるのが怖いんだろ」
【挑発的な奴め。お前、本気でこの偉大な父に勝てると思っているのか】
「なにが偉大だ。胃が大なだけだろ。だいたい父さんこそ俺に勝てると思ってんの?」
偉そうになりやがって。ああ、望むところだ。勝負だ。本気の勝負だ。
だいたい、お前が私に勝てるはずがない。
私を誰だと思っている。父親だぞ、父親。それも胃大じゃない方の偉大な。
お前なんて弱小だ。チキンだ。
ああ、弱小の弱小。キングオブチキンだ。
バンプオブチキンじゃないぞ。
ははは。
不敵に笑い返しながら、たがいに襟首をつかみあい、畳部屋へ移動。
ルールを決め、はっきょいのこった、の合図とともに組み合うと誓う。
中腰になる。
見合って見合ってのにらみ合い。
なんだ、その眼は。
私は許さんぞ。
ぐいと睨み返してやる。
ふん。
宣言は私が言おう。いくぞぉ。
はっきょおーいのこった。
と言ったとたん、息子が一気に突撃。
ふっと目の前で沈み込んで私の視界から消えたかと思ったら、太ももに強烈なタックルが。
布団が吹っ飛んだと思うより先に私がぶっ飛んだ。
気づくと秒殺。
畳に尻もちをつけられたあげく、そのまま息子は私に馬乗りになっている。
私の両手を太ももで締め付けるように馬乗りになった息子はどうだといわんばかりに大胆不敵に私を見下ろして笑っている。
やめろ。どけ。なにをする。
息子は重くて、身動きさえとれない。
足をバタバタするだけ。
息子はヒヒヒと嫌な笑みをうかべている。
「父さん、約束どおり5千円」
馬乗りになりながら、手を出してくる。
【わかった、わかった。やるからそこをどけ。余は苦しいぞ】
「ほんまにくれるな」
【偉大なる父に二言はない。だから早くどけ】
「ほんまに。ほんまにだな。ちゃんとくれるな」
【やるやる】
「そう言って、いつもごまかすだろ」
「しない。しない。たぶんしない」
畳の上で手足をバタバタさせながら、私は必死でいう。
「あっそ。そっちがそういう態度ならさ」
【態度?】
「父さん、お望みとおりマッサージしちゃるわ」
な、なんと。優しいじゃないか。
と思いきや、息子は私の胸に両手を重ねるように当ててきた。
何をする、息子よ。
息子は私を見下ろし、ギャハハと笑う。
どすどすどす。
違う、違う、それはちがーう。
マッサージはマッサージでもそれは心臓マッサージだ。
【おえ、おえっ。やめろ、息子よ。いいか、心臓マッサージは止まった心臓にするものだぞ】
「え~っ。止まってんじゃないの。黙ってな。いま動かしてやっから」
息子はヒヒヒと笑いながら、ドスドスドスを一向にやめてくれない。
へっへっへ。
にたにた笑いながら、ひたすら心臓マッサージを繰り返してくる。
私はただただ【おえおえおえ】
いずれ子は親を追い越すという。
どの親にも訪れる末路だ。
にしても早すぎる。
おまけに私の薄っぺらい財布から5千円もうばいやがって。
なんてひでえ末路なんだ。
もう挑発なんてするもんか。
心臓マッサージを受けながら、私は自分の心臓にそう誓いました。
ふん、だ。
 
2020年06月04日 21:25

リモートワークをしてみたい

あちこちでリモートワークという言葉を耳にする。
当院でも飼主さんから「リモートワークになりまして」と結構な頻度で聞くようになってきた。
へえ、そうですか。
仕事が捗り、おうち時間も取れるんですか。
話を聞いているとなかなか羨ましいなあと思えるようになってきた。
それどころか「テレワーク」「リモートワーク」と目の前でいわれると、なんだかこの人たちには憧れの仕事についているような神々しさやオーラを感じるような。
いいよな。羨ましいよなあ。
なんなら、私も一度くらいはこのフレーズを使ってみたいなあ。
で、そのためだけに「うちもテレワークの導入をしてみよっかなあ」と試しに言ってみた。
すると、
「へえ。先生、やれるもんならやってみてくださいよぉ~」
「へっへっ。ほーんと、どうやって動物病院がリモートワークを行うのか知りたいもんですなあ」
「いいんですかぁ~。私たちが病院に来なくても」
「私たち、一生来なくなるかもしれませんよ。えへっ、えへっ」
な、なんと。
やめてくれ、にこにこしながら、どこかの組関係者みたいな脅しは。
怖い。怖い。
少年のように純真な私が、本気でおろおろ戸惑う姿に、この人たちは嬉しそうに次々とかぶせてくる。
そんなに脅さなくても。
私はただ憧れのフレーズを一度言ってみたかっただけなんだ。
で、結局テレワーク導入は当院ではできないと悟ったのですが、なんだかさみしいので自分なりにリモートワークをしている自分を想像してみた。
まず起きる。
起きても、いままでのように慌てて家を飛び出す必要もないため、少しゆったりと朝食をとってみよう。
誰も作ってくれないから、自分でフレンチトーストでも作ってみよっかな。
おまけに目玉焼きとソーセージでもつけちゃおうかなぁ。紅茶なんて優雅だな。
朝食を作り終えてテーブルにひとり着席。
いつものように隅から隅まで新聞5紙をめくり、時代の進捗を確認しながら、フレンチトーストを食べていると、やがて「ちょっと邪魔」という言葉が聞こえ始める。
聞き流していると「もうっ」と嫌がらせのように足元へ、掃除機のヘッドがびゅんびゅんと飛んで来始める。
最初のうちはフレンチトーストを口にくわえ、キングカズ並みの軽やかなステップで掃除機ヘッドを交わしているも、だんだん威圧が強くなり、立ち上がってトイレに向かう。
便座に座り、ゆったりと快便にため息をついていると、今度は「早く出ろ」と息子がドアをどんどん叩いてくる。
ここにも居場所がないのかと舌打ちをしながら、仕方なくいそいそとトイレをでる。
「ほんま邪魔やな」
背中にひどい捨て台詞を浴び、次はどこにいようかと廊下で立ち尽くして考えてみる。
そうだ、天気がいいからべランダで日向ぼっこでもしよう。
でも、ただの日向ぼっこではつまらないから、コロナ予防に紫外線による全身消毒としよう。
着ている服の両裾からまっすぐ物干しざおを通し、そのまま自分ごと物干しにぶらさがっていよう。
ぶらんぶらんと風に揺られながら、消毒がてら日向ぼっこなんて素敵じゃないか。
きらめく日差しに当たりながら、ぶらんぶらんして一人にこにこ幸せな自分時間を過ごしていると、まただ。
「邪魔っ!!そんなに場所をとって。大事な洗濯ものを干せないでしょ」
とここでもお叱りの言葉を受ける。
やがて裾に通した物干しざおのせいで、動きたくても動けないまま、一方的に布団たたきでお尻をビシバシビシバシしばかれはじめ、ここもとうとう本当に出ていかざるをなくなる。
かといって不要不急の外出はできない。
となると、最終的には、いつもの自分の居場所、そう、押し入れに閉じこもるしかない。
考えてみれば、テレワークどころか、むなしさしか感じない、いつもの休日の過ごし方と同じではないか。
フェイクニュースが多い昨今、テレワークで家庭の空気が悪くなる、という報道だけはこりゃたしかだな。
休日にいつも思うことだが、中年男性のおうち時間は悲惨である。
 
2020年05月23日 19:07

OK,Google

AIの進歩はすごい。
テレビを見ていて、いつも感嘆する。
で、もうだいぶ前になるが、スマートスピーカーの宣伝が苛烈化しだしたころ、「電気をつけて」というだけで部屋のライトがつく光景に感銘し、私も病院用に導入をしました。
「OK、Google。ラジオをつけて」
と言えば、スマートスピーカーはラジコからお目当てのラジオ局を流してくれるのだが、「電気をつけて」と言っても一向に電気はつかない。
スピーカー前で中腰になり、必死で「OK、Google。電気をつけて」と繰り返していたら、こういう世界に詳しいスタッフが「先生、スマート家電じゃないと言うことは聞いてくれませんよ」とやんわりと教えてくれ、赤っ恥をかいた。
そうか、開業当時にそういうことも考えておくべきだったのか。
でも、予算なんてなかったしな。
今ではあきらめているけれど、でも「OK、○○」というフレーズはいまだにとても気に入っている。
それだけで、すべての世界が一段と利便良くなると思うと、胸が高鳴る気がする。
で、最近も思い出したようにこの「OK」フレーズを口にしてみるのだが、問題もある。
たとえば、
「OK、ツンドラ。入院室の電気をつけて」
などと言おうものなら、「もうっ!」という黒毛和牛のような鳴き声が聞こえたかと思うと、ティラノザウルスのようなドシドシとした足音が床に響き、そしてようやく電気がともるのだ。
それどころか、虫の居所が悪ければ、数日は口もきいてもらえない危険性を今後はらんでくることになるだろう。
どこの職場でも、人間関係を円滑に営む上で、このような、おっさんと若い女性スタッフとのハラハラドキドキする一発触発のやりとりを繰り返しながら、今後AIの導入が必要不可欠となってくることだろう。
当院も、ジェネレーションギャップが生み出す職場クライシスを早々に乗り切るため、この喫緊の課題改善を図らなければならないはずだ。
ただ予算が・・。
2020年05月13日 19:07

誘惑からのびっくり戸惑いスキップ

GW前の時期は本当に気持ちがいい。
通勤時、レンゲが咲いて、公園では白や紫のツツジが満開で、軒先ではコデマリやオオデマリの花がとてもかわいくて。
風にのって鼻腔を柔らかにくすぐるレンゲの芳香。
あたたかな、明るい陽射しと新緑。
あちこちで反射する光がきらきらと踊ってみえる。
自転車に乗っているだけでなんだか気分がウキウキ、ルンルン。
でもなあ。
季節はこんなに素晴らしいのに、仕事がら、日中、外に出る機会はほとんどない。
朝早く病院に来ては、休む暇もなく、帰るころにはお外は真っ暗。
もろん外出自粛ムードもあいまってのことだけど、外の新鮮な空気に接することができるのは朝の通勤と夜の帰宅時だけ。
こんな素晴らしい時期なのに。
なんだかもったいないような、少しもどかしいような。
こんな素晴らしき初夏なのに。
なんだか、悪いショッカーに囲まれたような運の悪さというか、そんなような。
ああ、散歩したい。ママチャリでサイクリングしたい。
そんな思いが張り詰めだした、ゴールデンウィーク間近のこと。
GW前の繁忙のせいか、日々患者さんたちの応対に目まぐるしく時間が過ぎていき、営業を終わるころにはへとへと。
スタッフもかなりぐったりとしている。
ツンドラは一人シフトが続いたせいか、目をまん丸に見開き、口はぽかん。息は絶え絶え。
まるで死んだサンマのような表情。
いや、そんなことを言ったら年頃の彼女に悪い。
まるでゾンビのよう・・・。
とてもじゃないが、見ていられない。
たまには早く帰してあげよう。
優しくて素敵でとても渋い私。
ある程度メドがついた時点で、「いいよ、もう帰りな。悪い大人には気をつけるんだ、べいびー」といつものように彼女をドア向こうに送り出し、あとは一人後片付けを黙々。
終えるともうかなりの夜闇になっていた。
外にでると、街頭の照らす通りには本当に人っ子一人いない。
外出自粛のせいか、どの店もシャッターを下ろし、通りはびっくりするほどシーンと静まりかえっている。
ほんの一か月前までにはこんなことはなかった。
都会のせいか、深夜だろうと、だれかかしら通りを歩き、電気のともった民家からは物音が聞こえていた。
時には酔っ払いが電信柱で用を済ましていたり、自販機の前では若い子たちがウンコ座りで話し込んでいたり。
それが。
今では本当に誰もいない。
なんだろう、この夜の静けさは。
じりじりと自販機が動く音だけが響いている。
黄色い街灯が真っ黒な路地をやんわりとドーナツ状に照らし、静まりかえる夜闇に自転車のスタンドをかちんと外す音がこだましていく。
自転車にまたぐ。
空気がじわっと生ぬるく、包み込まれる体に不思議な感覚が走る。
路地をもう一度見回す。
電信柱が等間隔に並ぶ夜の通りには、やっぱり誰もいない。
パーキングに一台車が止まっているだけ。
やはりしんと静まり返っている。
こんな静まり返った夜の庄内を見たことがない。
なんだかすぐに帰るのがもったいないような。
少し歩こうか。
自転車を郵便局前に止め、天竺川までの坂道まで歩く。
自分の小さな足音が、しーんとした闇の中に、かすかに、そしてひそかに響き渡る。
振り返ると、そこはまた静寂。人っ子一人いない。
夜という時間が、じっと止まっている。
そして暗い物陰から何者かが、じぃ~っと息をひそめてこちらを見ているような。
こんな庄内を見たことも感じたこともない。
不思議だった。
まただ。
いままでなかった感覚が心の中で巻き上がってきた。
これが誘惑というものだろうか。
だめだ。
悪い誘惑がおじさんの私にむかってひたひた、ひたひたと近づいてくる。
近づいてきたら、くすくす、くすくすと脇の下をくすぐってくる。
もうっ。
やめろ。やめてくれ。
我慢できないって。だから、やめろ。
やめてくれって。
でも誘惑は許してくれない。
スキップがしたいだろう。なあ、したいだろう。
ああ、したい、したい。
湧き上がる誘惑が心の中で砂塵のごとくざわっと一気に巻き上がっていく。
静まり返った夜の通り。
夜の街をスキップしたい。
だめだ。
ぼくちん、覚醒した誘惑にはもう勝てない。
恐る恐る。
一歩二歩。スキップ、スキップ、スキップ。
ああ。
やっぱり。
楽しい。
スキップは楽しい。
スピードを上げる。足音のリズムが闇の静寂にすっとしみこんでいく。
うひゃひゃ。なんじゃこりゃ。
スキップひとつでこんなに楽しく、うきうきなれるなんて。
そんな人間はいまどき、私か、5歳児くらいなものだろう。
そのまま、クリーニング屋を過ぎ、喫茶店、居酒屋、郵便局、どんどん通過していく。
さあ、いざ病院前へ。
真っ暗な、生ぬるい空気が全身にまとわりつき、本当に不思議な感覚だ。
うひゃひゃ。なんだ、こりゃこりゃこりゃ。
町はどうなっているのだろう。
にぎやかだった駅周辺はどうなっているのだろう。
商店街は?
誰もいない静かな通りを一人、もっともっと満喫したい。
うひょひょ。行け、行け。
このままスキップで街中まで行ってしまえ。
勢いをつけたまま、中華屋の前を大きく手を振り振り、スキップ。
ヤマダ電機の看板が前にずんと立ちはだかり、目の前の信号は赤。
よし。ならば、そのまま176を曲がってしまえ。
と、思ったのが運のつき。
曲がった瞬間、ラップのようなだぶだぶの恰好をした若いカップルの姿が目の前に立ちはだかる。
ぶつかりそうになり、そのまま避けるようにスキップで交わした。
立ち止まった二人が「えっ」。
目を見開いて、きょとん。
そのまま点となった目で私を見る。
途端に湧き上がる恥ずかしさ。
いい年こいて、こんなことをするから。
でも止まれない。
恥辱のあまり、逃げるように私はスキップを加速させた。
後ろから弾けたような笑い声。
「嘘だろ」「まじか」
静まりかえった夜の街に、若い二人の声が広がっていく。
逃げろ、逃げるんだ。
スキップをやめ、そのまま、小走りに変える。この場を必死でしのぐのだ。
とてもじゃないが、駅まで行けない。商店街まで無理だ。交番なんてやばいだろ。
難題が多すぎる。
私は、信金横の路地で止まり、後ろをぜえぜえと振り返る。
二人の姿はもうない。176は暗く、しんと静まりかえっている。
車も走ってない。信号だけが煌々と黒々としたアスファルトを照らしている。
もうやめよう。
愚かなことはもうやめよう。
そう思い、裏道へ入る。
一本奥の路地に入り、病院の方へとぼとぼと歩き出す。
ありがたい。
路地は笑っていない。しんと静まりかえって、意気消沈した私を黙って受け入れてくれている。
じっとりとした闇が、恥辱にまみれた私の心を慰めてくれているようだ。
ほっとした。
ありがとう、ありがとう。
気を取り直して、とぼとぼ病院の方まで歩いていくと、なんてこった、パンナコッタ。
困ったもんだ、みのもんた。
有料パーキング前の自販機横に、悪夢の光景が。
街灯がじんわりと照らすアスファルト。
さきほどのラッパーカップルがどかっと地面に胡坐をかき、たばこをふかしている。
なんという、居心地の悪さ。
さあ、どうしよう。
仕方がない。何事もなかったのだ。
だんまりを決めよう。あの子たちだって、さっきの変質者が私だとは気づかないかもしれない。
下を向いて、さっさと前を通り過ぎてしまえ。
と思ったが、少しやんちゃで悪そうな彼と彼女は、下を向いて、いそいそと前を通り過ぎる私をそんなに優しく見過ごしてはくれなかった。
「あれ、さっきのおっさんちゃう」
「まじで。あのスキップしてたやつ」
「ぎゃはは」
途端に顔面が真っ赤になる。
「おっさん、なにやってんねん」
「ええ歳こいてアホやろ」
「ぎゃはは。ぎゃはは」
何も言い返せない私は、そのまま夜道を全力で郵便局まで走る。
自転車にまたぎ、そのまま逃げるように夜の道を必死で堤防をこぎまくる。
昔からわかっていた。
天性の愚かさを身にまとった人間が持つ、哀れさというものを。
ああ、スキップなんて幼少のころまでに卒業しておけばよかった。
いい年をこいてする行為では絶対にないんだ。
この世で許されるのはあの人だけ。
この年齢でスキップを許されるのは、現世にきっと川田アナだけだろう。
私みたいなみにくいアヒルはもうしてはいけない。
二度としない。
夜、誰もいない道を泣きそうになりながら、ペダルを必死に漕ぎ、私はそう心に誓いをたてたのであります。
言っておきますが、ペダルはペダルでも、これは泣き虫ペダルの話ではありません。
ですので、よいおとなのみなさまは、マナーをまもって、ぜったいにマネをしないでくださいね。
2020年05月04日 11:28

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