いでよ、ロビフッド!
先日、ロビンフッドなる金融アプリの話題を目にした。
アプリを利用し、小さな個人投資家たちが、呆れたほどの巨万の富を、わずか数秒で稼ぐ投資会社に対して揺さぶりをかけた。
そして、見事なまでに翻弄した。
海外で、大いに話題になったようだ。
なるほど、「ロビンフッド」か。
あの伝説の義賊らしいや。
裕福な者たちからお金を巻き上げ、その金を貧しいものたちに分配する。
緑の衣装に羽帽子。
そういえば昔、読んだことあるな。
正直、あまり覚えてないけど…。
どうやらアプリはアメリカの格差社会がもたらした産物らしい。
あっちでは、高利な教育ローンを背負わされた若者たちを中心に、不公平な経済格差が広がっているとのこと。
なぜ、お前ら金融機関だけが良い目を見る?
小さなロビンフッドたちはネットで情報交換し、団結行動に躍り出た。
そして巨大な利益を独り占めする投資会社にギャフンと一泡吹かせた。
そうかそうか。
なるほどね。
「全ての人々に金融を民主化する」
そんな意図で開発されたアプリが今回の「ロビンフッド」ということらしい。
うまいこと、不満の吐け口として活用されたようだ。
もちろんいいことばかりではなく、記事によれば、実際には素人が陥りやすい投資の危険性やいざこざもあるらしい。
が、一時的にせよ、なんだか胸がスカッとするような、そんな晴れやかさを感じもした。
だって。
これだけ貧富差の広がる中、一部の人間たちだけが天文学的な利益を貪っている。
そんな信じ難い現実が、この国でも実際に起きているのだ。
片隅では生理用品も買えない人がいたりするというのに。
配布される食料を前に、列に並び続ける人がいるというのに。
きっと、だからか。
ニュースを見た時、あの左利きのホームランバッターが、豪快に打球をレフトスタンドに打ち込んだような、そんな爽快感を覚えた。
快音を響かせ、打球が透き通った青空にぐんぐん吸い込まれていく。
そんな清涼感やら、なんとも言えな気持ちよさみたいなものが。
でも、そんな風に感じるのはそれだけが理由?
いやいや。
コロナという目に見えないウイルスに、日常が不格好に裁断され、溜まりに溜まった鬱憤がこの胸に酸いた胃液のように込み上げているからだろうか。
いや、いや。
これも違う。
自粛やらまん防やら、日常はいまだ制限されてはいるけれど、個人的にはそれほど鬱憤は抱えていない。
だって、辛い思いを抱えている人には申し訳ないが、オレ、外食ができない、旅行にいけないなんて、そんなもんいくらでも我慢できるもん。
それよりも頭にくるのは、日々、テレビや新聞などで目にする、不愉快な出来事の方だ。
連日、政治家たちの体たらくぶりがこの目に飛び込んでくる。
まるで悪代官の不祥事だ。
ほんま、なんたることやねん。
お前ら、全員、越後屋ちゃうか。
森友、桜における改ざんや隠ペイ。
IR汚職がバレたと思ったら、今度は歴代農相たちか。
収賄入りの菓子箱を前に、ニヤニヤとほくそ笑んでいやがる。
おまけに大企業はせっせと官僚中枢へ接待で。
その間も、代官たちは高級ラウンジへとお通いだ。
元法相は、妻のために大規模な選挙違反に手を出して。
さらには、新旧歴代の首相たちが、立派なはずの大臣たちが、こぞって失言を連発する。
大事な資料はいまだ不開示。
ファイルはいずこへ消えたのだ。
人が亡くなったというのに。
にもかかわらず。
すべてがいつもどこ吹く風。
難解な言葉で口を濁し、のらりくらりとごまかして、そしていつもの手口。
責任の所在など、ごっそりそのまま、公設秘書へとまる投げ。
検察は顔色を伺いながら、形や表面だけを取り繕い、有効な手立てなどまるで出さない。
おまけに、あれ?
汚染処理水って?
まさか本気で海へ放出するつもり?
えっ。
解決してないのに、政官財こぞって原発復権を大合唱してんの。
なんでだよ。
なんで政治を夜に動くすんだ。
密室で決められる秘め事など、国益や国民のためにされているわけねぇよな。
自分たちの権力争いや、既得権益の維持のためだろ。
そのために、あんたら夜な夜な会食しているんだろ。
おまけにそんな飲み食い代も、官房機密費で出てるってほんと?
そなアホな。
誰が国に預けたお金やねん。
国民はバカだからええやん?
そうそう。
一人当たり10万でも配っておけば、あいつら犬みたいにシッポ振って喜ぶんだってさ。
ふん。
ふざけやがって。
いい加減にしてくれ。
いいか。
あんたらに、とびっきりの仕返ししたるわ。
いま流行りの歌で、どぎつい文句言ったる。
♪ひっでえ、ひっでえ、ひっでぇなっ♪ってな。
ああ。
悲しいことに、どうやら私にできるのはこの程度の反逆らしい。
あぁ、そっか。
だから、そういうことなのか。
それで、あっちではロビンフッドのお出ましなのか。
今の日本にも、そんな存在が出て来てくれたらいいのだが…。
いやいや。
おるおる。
昔おったわ。
日本版のロビンフッドが。
あの伝説の義賊がよ。
さあさ。
お呼びだぜ。
ねずみ小僧さんよ。
今こそ、うちらにも、あんたみたいな存在が必要だ。
出番だぜ。
起きてきな。
休んでねぇと、もうそろそろ現れてもいいタイミングじゃねぇの。
おいら、知ってんだ。
あんた、単なるこそ泥じゃねぇんだろ。
さあさ。
起きてきなよ。
何百年もの長い眠りから、おねむな目々を覚ましてさ、あのロビンフッドのように颯爽と俺たちの前に現れてくれねぇもんかい。
なあな。
頼むから出てきておくれよ。
恥ずかしければ、アプリの装いでいいさ。
トレードマークの黒布巾をさ。
頭からすっぽり被ってさ。
そんでもって、鼻先できちっと両端を括ってな。
あんときの馴染みの格好でいいからよ。
そんでよ。
夜闇に、すり足、さし足、しのび足で近づいてな。
永田町で、今もふかふかソファにふんぞりかえっている、あの大勢の悪代官たちに向かって、ちぃとばかりでもいいから、一泡ふかせておくんな。
与野党なんてケチな区別いらねえ。
どの党にも困った奴らはいるもんだ。
そんな呆れたような奴らにギャフンと言わしておくんなよ。
俺たち、SNSでいくらでも力を貸すぜ。
だって今も理不尽な目に合わされている人たちがこの世にはたくさんいるんだ。
あっちみたいに、投資なんてせせこましいレベルに囚われずさ。
国籍や立場に関係なくさ。
地域や年齢にも関係なくさ。
全ての日本にいる人たちに。
貧困や、偏見や、差別のない真の民主化をもたらしてくれよ。
ついでにさ。
世界のあちこちで、同じようにのさばっている悪代官たちに、今のこのときも、とんでもない目にあっているミャンマーやシリアのような国の人々にもさ。
真の民主化という平和をもたらせてくれたら、俺たち、本当に最高だよ。
そうそう。
日本じゃさ。
もうすぐ始まるらしいぜ。
奴らの一番怯える選挙がさ。
あのスピーカーで、ただひたすら名前を連呼するだけの狂騒が。
思い出すだけで、煩わしくて仕方ねぇな。
あれ、うざくてたまんねぇんだよ。
ガラスの10代でなくたって、心も脳みそもやられちまう。
ほんと、♪うっせえ、うっせえ、うっせえな♪だ。
な、だろ。
早くしねえと、奴ら、また自分たちだけ私腹を肥やしやがるぜ。
あいつ、失言しても、またいつものように平然と居直りやがるぜ。
だから、頼むよ。
早くしておくれよ
出て来ておくれよ。
誰か、そんな義賊アプリ、開発しておくんな。
ほんとに早くしねぇと間に合わねぇぜ。
できた暁にはよ。
おいら、たった一人だろうとスタンディングオベーションで出迎えるぜ。
よっ、待ってました!
っとばかりにさ。