わはは、春じゃ春じゃ! 行ったれ行ったれどこまでも!
桜が満開。心地よい春風を受けながら、自転車を漕ぐ。
花粉症の人たちには申し訳ないけれど、やっぱり春は気持ちがいい。
春といえば、もう一つ。
別れと始まりの季節。
卒業の後は、何があろうと桜咲く。
今年もだ。
淡き薄桃の花びらを背に、新入社員や新入生の姿をあちこちで見かけた。
駅できょろきょろしている若者なんかを見かけると、思わず「よっ!」と肩を叩きたくなる。
春光相まり、すべてキラキラ。
春は、なにもかも清く新しく見えるから不思議だ。
今年は当院でも。
暖かい春風に誘われるように別れと出会いがやってきた。
三月、温暖さんが去る。
とても優秀な方で、すぐに仕事を覚えてくれた。
混乱するような状況でも、てきぱきと立ち回ってくれる姿は本当にありがたかった。
手放すのは残念だけど、当初より三年間との約束。
それを無理言って、四年も在籍していただいた。
今後はペットシッターとして独立を目指すとのこと。
こうなったらもう応援するしかない。
いい日旅立ち、頑張って!
そして新たな出会いは二人。
補充をどうしようかと悩んでいると、ふわりと春風に乗ってやってきた。
今は慣れないことだらけでいっぱいいっぱい。
でも、温暖さんに劣らず、二人とも感じのよい応対を心がけてくれる。
感謝感謝。
おかげで私は毎日、嬉々としている。
そして、もう一つ、新たな変化が……。
息子、旅立つ。
あがいてあがいた末、なんとか頭上に遅咲きの桜。
第一希望でなかったが、そんなこと、まったく大事なことやない。
その目で何をみるか。
その手で何をするか。
たったそれだけの話や。
頑張った甲斐はあったのだと言い聞かせ、大阪からほんまの新世界へ送り出す。
そやそや。
これからや。
見るもの、触るもの、映るもの、全てが新しい。
めげることなく、とことん追いかけなはれ!
そう心の中で呟きながら、半ば新生活に浮かれ模様の息子を玄関から送り出す。
別れの余韻を胸に秘め、一人、近くの桜並木に出かけた。
池のほとり、桜の下でベンチに腰掛け、イヤホンでラジコを聴く。
偶然か。
DJが新生活を始める人に向けてエールを送った。
流れだした曲は、関取花さんの「むすめ」。
うちんとこは「むすめ」やなくて「むすこ」やけど、流れ続けるアコースティカルな歌詞に心が震えた。
気づくと、「そやな、そやな」と耳を澄ましていた。
そうそう。
ほんまにそやで。
息子よ。
わしも、歌詞のごとくエール吐き捨てたる。
学べ、学べ、とことん学びやがれ!
やりたいこと、好きなこととことんやってみなはれ!
とにかく。
新天地で自分なりの基盤を築いてくれることを切に祈る。
さあさあ。
送り出してるだけやあかんな。
わしも新年度を迎えよう。
いまさら若い子みたいに、ぎらぎらの野心持って、何かとんでもなく大きな夢を見ることはできないけど、こんなおっさんだって、ちょっとした一歩くらいは踏み出せる。
そう思って、威勢よく立ち上がると、道端で、すこーん。
こけた。
まあ、そんなもんよ。
春のはじめの一歩なんて、そんなもん、そんなもん。
こけたら、ええやん。
こけたってええねん。
呼吸整え、また立ちやがれ。
松下幸之助さんだって「こけたら、立ちなはれ」言うとったしな。
そやろ、そやろ。
たったそれだけの話やろ。
はる、春、ハル。
春、晴れ渡れ、ハレルーヤ!
まばゆい春光浴び、些細な失敗を屁とも思わず、どいつもこいつも、あんたもわしも、それがどこの「むすめ」だろうと「むすこ」やろうと、今日も明日もわしらは生きたるだけや!
せやせや。
2023年04月04日 14:24