ゆりの木動物病院|阪急庄内駅すぐ近く|大阪府豊中市

阪急宝塚線・庄内駅3分、犬・猫を診る動物病院です。

誘惑からのびっくり戸惑いスキップ

GW前の時期は本当に気持ちがいい。
通勤時、レンゲが咲いて、公園では白や紫のツツジが満開で、軒先ではコデマリやオオデマリの花がとてもかわいくて。
風にのって鼻腔を柔らかにくすぐるレンゲの芳香。
あたたかな、明るい陽射しと新緑。
あちこちで反射する光がきらきらと踊ってみえる。
自転車に乗っているだけでなんだか気分がウキウキ、ルンルン。
でもなあ。
季節はこんなに素晴らしいのに、仕事がら、日中、外に出る機会はほとんどない。
朝早く病院に来ては、休む暇もなく、帰るころにはお外は真っ暗。
もろん外出自粛ムードもあいまってのことだけど、外の新鮮な空気に接することができるのは朝の通勤と夜の帰宅時だけ。
こんな素晴らしい時期なのに。
なんだかもったいないような、少しもどかしいような。
こんな素晴らしき初夏なのに。
なんだか、悪いショッカーに囲まれたような運の悪さというか、そんなような。
ああ、散歩したい。ママチャリでサイクリングしたい。
そんな思いが張り詰めだした、ゴールデンウィーク間近のこと。
GW前の繁忙のせいか、日々患者さんたちの応対に目まぐるしく時間が過ぎていき、営業を終わるころにはへとへと。
スタッフもかなりぐったりとしている。
ツンドラは一人シフトが続いたせいか、目をまん丸に見開き、口はぽかん。息は絶え絶え。
まるで死んだサンマのような表情。
いや、そんなことを言ったら年頃の彼女に悪い。
まるでゾンビのよう・・・。
とてもじゃないが、見ていられない。
たまには早く帰してあげよう。
優しくて素敵でとても渋い私。
ある程度メドがついた時点で、「いいよ、もう帰りな。悪い大人には気をつけるんだ、べいびー」といつものように彼女をドア向こうに送り出し、あとは一人後片付けを黙々。
終えるともうかなりの夜闇になっていた。
外にでると、街頭の照らす通りには本当に人っ子一人いない。
外出自粛のせいか、どの店もシャッターを下ろし、通りはびっくりするほどシーンと静まりかえっている。
ほんの一か月前までにはこんなことはなかった。
都会のせいか、深夜だろうと、だれかかしら通りを歩き、電気のともった民家からは物音が聞こえていた。
時には酔っ払いが電信柱で用を済ましていたり、自販機の前では若い子たちがウンコ座りで話し込んでいたり。
それが。
今では本当に誰もいない。
なんだろう、この夜の静けさは。
じりじりと自販機が動く音だけが響いている。
黄色い街灯が真っ黒な路地をやんわりとドーナツ状に照らし、静まりかえる夜闇に自転車のスタンドをかちんと外す音がこだましていく。
自転車にまたぐ。
空気がじわっと生ぬるく、包み込まれる体に不思議な感覚が走る。
路地をもう一度見回す。
電信柱が等間隔に並ぶ夜の通りには、やっぱり誰もいない。
パーキングに一台車が止まっているだけ。
やはりしんと静まり返っている。
こんな静まり返った夜の庄内を見たことがない。
なんだかすぐに帰るのがもったいないような。
少し歩こうか。
自転車を郵便局前に止め、天竺川までの坂道まで歩く。
自分の小さな足音が、しーんとした闇の中に、かすかに、そしてひそかに響き渡る。
振り返ると、そこはまた静寂。人っ子一人いない。
夜という時間が、じっと止まっている。
そして暗い物陰から何者かが、じぃ~っと息をひそめてこちらを見ているような。
こんな庄内を見たことも感じたこともない。
不思議だった。
まただ。
いままでなかった感覚が心の中で巻き上がってきた。
これが誘惑というものだろうか。
だめだ。
悪い誘惑がおじさんの私にむかってひたひた、ひたひたと近づいてくる。
近づいてきたら、くすくす、くすくすと脇の下をくすぐってくる。
もうっ。
やめろ。やめてくれ。
我慢できないって。だから、やめろ。
やめてくれって。
でも誘惑は許してくれない。
スキップがしたいだろう。なあ、したいだろう。
ああ、したい、したい。
湧き上がる誘惑が心の中で砂塵のごとくざわっと一気に巻き上がっていく。
静まり返った夜の通り。
夜の街をスキップしたい。
だめだ。
ぼくちん、覚醒した誘惑にはもう勝てない。
恐る恐る。
一歩二歩。スキップ、スキップ、スキップ。
ああ。
やっぱり。
楽しい。
スキップは楽しい。
スピードを上げる。足音のリズムが闇の静寂にすっとしみこんでいく。
うひゃひゃ。なんじゃこりゃ。
スキップひとつでこんなに楽しく、うきうきなれるなんて。
そんな人間はいまどき、私か、5歳児くらいなものだろう。
そのまま、クリーニング屋を過ぎ、喫茶店、居酒屋、郵便局、どんどん通過していく。
さあ、いざ病院前へ。
真っ暗な、生ぬるい空気が全身にまとわりつき、本当に不思議な感覚だ。
うひゃひゃ。なんだ、こりゃこりゃこりゃ。
町はどうなっているのだろう。
にぎやかだった駅周辺はどうなっているのだろう。
商店街は?
誰もいない静かな通りを一人、もっともっと満喫したい。
うひょひょ。行け、行け。
このままスキップで街中まで行ってしまえ。
勢いをつけたまま、中華屋の前を大きく手を振り振り、スキップ。
ヤマダ電機の看板が前にずんと立ちはだかり、目の前の信号は赤。
よし。ならば、そのまま176を曲がってしまえ。
と、思ったのが運のつき。
曲がった瞬間、ラップのようなだぶだぶの恰好をした若いカップルの姿が目の前に立ちはだかる。
ぶつかりそうになり、そのまま避けるようにスキップで交わした。
立ち止まった二人が「えっ」。
目を見開いて、きょとん。
そのまま点となった目で私を見る。
途端に湧き上がる恥ずかしさ。
いい年こいて、こんなことをするから。
でも止まれない。
恥辱のあまり、逃げるように私はスキップを加速させた。
後ろから弾けたような笑い声。
「嘘だろ」「まじか」
静まりかえった夜の街に、若い二人の声が広がっていく。
逃げろ、逃げるんだ。
スキップをやめ、そのまま、小走りに変える。この場を必死でしのぐのだ。
とてもじゃないが、駅まで行けない。商店街まで無理だ。交番なんてやばいだろ。
難題が多すぎる。
私は、信金横の路地で止まり、後ろをぜえぜえと振り返る。
二人の姿はもうない。176は暗く、しんと静まりかえっている。
車も走ってない。信号だけが煌々と黒々としたアスファルトを照らしている。
もうやめよう。
愚かなことはもうやめよう。
そう思い、裏道へ入る。
一本奥の路地に入り、病院の方へとぼとぼと歩き出す。
ありがたい。
路地は笑っていない。しんと静まりかえって、意気消沈した私を黙って受け入れてくれている。
じっとりとした闇が、恥辱にまみれた私の心を慰めてくれているようだ。
ほっとした。
ありがとう、ありがとう。
気を取り直して、とぼとぼ病院の方まで歩いていくと、なんてこった、パンナコッタ。
困ったもんだ、みのもんた。
有料パーキング前の自販機横に、悪夢の光景が。
街灯がじんわりと照らすアスファルト。
さきほどのラッパーカップルがどかっと地面に胡坐をかき、たばこをふかしている。
なんという、居心地の悪さ。
さあ、どうしよう。
仕方がない。何事もなかったのだ。
だんまりを決めよう。あの子たちだって、さっきの変質者が私だとは気づかないかもしれない。
下を向いて、さっさと前を通り過ぎてしまえ。
と思ったが、少しやんちゃで悪そうな彼と彼女は、下を向いて、いそいそと前を通り過ぎる私をそんなに優しく見過ごしてはくれなかった。
「あれ、さっきのおっさんちゃう」
「まじで。あのスキップしてたやつ」
「ぎゃはは」
途端に顔面が真っ赤になる。
「おっさん、なにやってんねん」
「ええ歳こいてアホやろ」
「ぎゃはは。ぎゃはは」
何も言い返せない私は、そのまま夜道を全力で郵便局まで走る。
自転車にまたぎ、そのまま逃げるように夜の道を必死で堤防をこぎまくる。
昔からわかっていた。
天性の愚かさを身にまとった人間が持つ、哀れさというものを。
ああ、スキップなんて幼少のころまでに卒業しておけばよかった。
いい年をこいてする行為では絶対にないんだ。
この世で許されるのはあの人だけ。
この年齢でスキップを許されるのは、現世にきっと川田アナだけだろう。
私みたいなみにくいアヒルはもうしてはいけない。
二度としない。
夜、誰もいない道を泣きそうになりながら、ペダルを必死に漕ぎ、私はそう心に誓いをたてたのであります。
言っておきますが、ペダルはペダルでも、これは泣き虫ペダルの話ではありません。
ですので、よいおとなのみなさまは、マナーをまもって、ぜったいにマネをしないでくださいね。
2020年05月04日 11:28

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