ゆりの木動物病院|阪急庄内駅すぐ近く|大阪府豊中市

阪急宝塚線・庄内駅3分、犬・猫を診る動物病院です。

暑かった、そして熱かった、そんな夏だった。

少し前の日曜日。
ちょっと気になる試合があった。
息子、高3。
最終学年で迎える全国高校サッカー選手権。
それなりにアホな息子だが、サッカーに対してはそれなりの情熱を入れていた。
毎日、汗と泥だらけ。
これがまた、臭い、臭い。
帰るなり「疲れたぁ!」「今日も練習きつかったぁ!」の繰り返し。
練習は相当ハードらしく、毎日バタンキューしては翌日朝早くから練習に行っていた。
遊びもせず、マックもポテチも食べず、勉強なんかまったくせず、ひたすらサッカー漬け。
そんな日々を過ごしながらも、昨年は疲労骨折をし、試合から遠ざかっていた。
だからこそ今年は。
かなりの気合を入れていたはずだ。
なのにコロナ禍。
春の試合がすべてなくなった。
学校にもいけない。
練習もない。
当然、年を通して行われるリーグ戦も昨年のようには全部を消化できず、本人の落胆も大きかったらしい。
在宅中、「ああ、つまんねえな」といわんばかりの表情が毎日透けて見えていた。
その念願だった予選がようやく開催されることが決まり、息子はもう一度、気合を入れなおしていた最中だった。
でも、今度は、対戦くじに落胆。
早々に同レベルの難敵と当たることとなってしまったらしい。
毎年、五回戦くらいまで進むのだが…。
今年はなかなかの難関らしい。
その対戦相手。
息子いわく、数年前に共学となり、サッカー部に強化をぐっと入れ始めたチームとのこと。
監督には元Jリーガーを招聘したとか。
その効果は絶大で、近年めきめきと力がついてきたそうな。
「スカウトビデオで見たけどさ、去年とは全然レベルが違うわ。まったく別のチーム」
相手チームは再開したリーグ戦でも6-0とか7-0とかで圧倒的な強さを誇り、現在、他組ダントツ1位で通過中とのこと。
「父さん、相当やばいわ」
そっか。相手として手ごわいのか。
「最後の試合になりそうか」
「いやいや。絶対に負けへんで。全力尽くすから。でもなあ…」
「そんなに強いのか」
「うん。本当に負けてもおかしくない。オレ、もっとサッカー続けたいんだけどなぁ」
「そっか…。仕事がなかったら見に行ってもいいか」
少し考えるような間。
「……うん。ま、いいよ」
あれ?
普段は「来なくていいよ」と言う息子が…。
やはり息子たちにとってはかなりの強敵ということか。
緊急な入院がなければ、見に行こうか。

で、前日の夜。
本人は当然そわそわ。
寝るに寝れないらしい。
「ああ、ちくしょう。勝ちてえなあ。もっとさ、納得できる最後の最後までサッカー続けてえよ。ほんま負けたくないわ」
家の中でリフティングをしながら何度もそうつぶやいている。

当日、朝から曇り空だった。
会場に行くまでの間、自転車から見上げる空はどこまでも怪しい。
今にも雨が降りそうだ。
それでもグラウンドにはすでに大勢の親や高校生が駆けつけている。
両校ともサッカー部に力を入れているせいか、観客はかなり多い。
そして九時。
運命のホイッスル。グラウンドに鳴り響く。
いきなり激しいボールの奪い合い。
体を投げ出してぶつかり合う。
意地の張り合いだ。
かなり激しい。根くらべのような当たり合いが続く。
最中、ボランチから左サイドの息子にボールが渡った。
全力で駆け上がっていく息子。一人を交わしクロスを上げるも、味方につながらない。
はああ~。
それでも白チームは手を緩めない。
早々に数度の攻めを畳みかける。
が、相手が底力を出し始めた。
だんだんと力関係が見えてくる。
相手の方がやはり少し格上だ。
ボールを納め、しっかりと落ち着いて回そうとする。
それでも白のユニホームたちも必死。
食らいつこうと、その相手の足元までボールを追い続けていく。
一人がかわされても、その次。
そして、またその次。
猛然と襲い掛かる。
シュートを打たれそうになれば、体を投げ出して止めに行く。
大声が響き渡る。
止めろよ。
ぜってえ、負けんな。
奪えって!!
気持ちで負けんなって。
いいか。
ぜってえ、勝つぞ。
仲間同士、大声で鼓舞しあい、次々と奪いに行く。
相手のシュートを何度も防ぎ、スライディングもいとわない。
このくそ蒸し暑い日に…。
グランドだってぬかるんでいる。
互いにもみくちゃ。
こけては立ち上がる。
どの子も必死だ。
激戦。
ほんまの熱戦。
みんな、歯を食いしばって走り続けている。
大声を仲間に向かって張り上げ、誰一人さぼらない。
手をまったく抜こうとしない。
選手たちのユニホームは汗まみれのどろだらけ。
顔なんて砂か泥か日焼けかわからないくらい真っ黒だ。
いつもはアホそうな息子も、今日は全然違う表情をしている。
そんな顔、知らなかった。
こんな息子の表情を見たことなんてなかった。

そうなのかぁ。
高校生ってこんなに熱いんだ。

だんだんと相手にボールを渡る回数が増えてくる。
敵はシュートを次から次へと浴びせてくる。
が、決まらない。
ひやりとする場面が何度も続くが、白のユニホームたちが必死で食い止めにいく。
ボールを奪えば、素早いカウンター。
奪った瞬間、すぐに前線全員が全力で前へ前へ。
走れ、走れ!!
声をからし、蜘蛛の子を散らしたように駆け出していく。
相手も必死だ。追いかけてくる。
気迫が伝わる。すごい奪い合い。
全力で。
止まらずに。
大声を張り上げ、駆け続ける子供たち。

後半もカウンターを狙いの息子たちのチームが必死で守り、チャンスがあれば相手に猛然と襲い掛かる。
でも決まらない。
じりじりと時間だけが過ぎ、選手たちは疲労困憊となりながらも全力で走るのをやめない。
そして0-0。
終了ホイッスル。
白もエンジのチームも、疲れからか地面にへたり込む。
中にはあおむけに倒れこんでいる者もいた。
どの胸も、はあはあと波打っている。
汗だらけの息子も、膝に手を当て、ものすごい息遣いをしていた。
さあ、休む時間はなし。
待ったもなし。
審判が両軍に声をかける。
いざ、PKへと突入。
円陣を組み、大声でグラウンドへ駆け出していく両軍。
ゴールに対峙し、白線上に一列に並ぶ。
相手が三人連続で決めた。
白チームは二人が連続で外し、もう後がなし。
1-3で迎えた時、息子が前に進み歩いていく姿が見えた。
まじか。
外したら……終わりやんけ。
勘弁してくれ。
拳を握りしめて、シーンと静まり返る中、遠くの息子をじっと見つめる。
静寂が包み込む中、息子が地面にボールをそっと置く。
そして願掛けするかのように何度もボールを置きなおす。
深く息を吐くと、顔を上げ、まっすぐに後ろ足で下がっていった。
キーパーに対峙し、ゴールに向き合う。
長い沈黙の中、走り出した。
とてもじゃないが見ていられない。
目をつむった瞬間、「よっしゃー」という大勢の声が背後から響きわたって、ホッ。
それが相手へのプレッシャーになったのか、続く相手が外し、こちらが決める。
そしてまた相手が外した。
よっしゃー。まだ終わらんぞや。
行ったれー。
打ったれー。
気持ちで負けんじゃねえぞ。
一列に並んだ選手が大声を張り上げる。
歓声。こだま。あちこちで連鎖していく。
両者5人目まで終えて3-3のイーブン。
いよいよサドンデスへ。
熱戦だ。ほんまの激戦だ。
上がる上がるボルテージ。
テンションなんてもう大変。
盛り上がりがすごいすごい。
空には晴れ間が見え、グラウンドには一筋の光。
向こうで練習をしていたハンドボール部やテニス部まで手を休め、側溝の上に並んでじっと見つめている。
その視線の先には、一列に並んだ両校の選手たち。
胸の前で両手を握り締めている子。
曇空を見上げる子。
両手を組み、俯いて祈る子。
肩を組みあう仲間。
息子は胸に手を当て、ゴールに背中を向けた。
そのチームメイトが連続で決めていく。
相手も同じ。
よっしゃー。
次、決めたれー。
後ろから声が聞こえる。
7-7で迎えた白。
緊張した面持ちの下級生が進み出た。
うむ? 動きが硬い?
走り出し、蹴る…が、やっぱり…。
ボールがバーに弾かれ飛んでいく。
ため息が広がる中、相手が落ち着いて決め、万事休す。
その途端、がくんと地面に膝から崩れる面々。
地面にひれ伏し、わんわんむせび泣く背中が目に映る。
痛々しかった。
泥だらけで汗まみれで。
どこまでも痛々しく、どこまでもすがすがしく。
こいつら、こんなに一生懸命にサッカーをしてたんか。

帰宅後、泥だらけの汗まみれの息子を拍手で迎えると、一瞬むせび泣いたものの、すぐに表情を隠しそうと照れくさそうに俯いた。
「やっぱ悔しいわ。決して負けてなかったからな」
肩が揺れている。涙声だ。
「そやな。でもなんかいいもん見させてもらったわ」
「でも勝たんとな」
「そやな」
さすがに負けのままで一日を終わりたくないらしい。
「父さん、将棋せえへんか」
「ええで」
こやつ、将棋ならいつも私に勝つ。
でも、息子はいつもの調子ではなく、疲れているのか不思議と詰めが甘い。
上目でちらりと見ると、盤上を見つめる息子の目は真っ赤だった。
負けてあげればよかった。
だけど無理。勝ってしまう。
心の傷口に、塩をたっぷりと塗り込むようなことを私はわざとした。
「くそっ。つまんねえな」
でも、終わったときには、あんなにグラウンドで泣きじゃくっていた姿とは別人のように、腫れた目をへの字に。
嬉しそうに笑っている。
「しゃあないな。まあ、今日はしゃあないわ。そういう日やねん。今度は受験でがんばるわ」
吹っ切れたように椅子から立ち上がっていく。
そして「今日だけだから」と言って、仲間たちとの最後の打ち上げへでかけていった。
もうさっさと切り替えて、次か。
高校生ってすごいな。
そう気づいた日。
そのなんとも言えない感動の余韻はなぜか翌日まで続き、こちらも仕事、頑張らなければ、と一段と気合を入れて一日を過ごしたような気持ちがする。
そうそう。
ほんまに頑張らなければ。
だって、あいつ、ほぼほぼのほぼ浪人決定やし。

今日も仕事からの帰り道、緑地公園のイチョウ並木は少し黄色く色づいて、街灯に照らされていた。
枝々には銀杏の白い実がいくつも鈴なりに連なってみえる。
風はいくぶん冷たい。
いつの間に。
秋はこんなに近づいていたのか。
そっか。
特段、今年の夏は何もしていない。
けど…。
なぜか、いい夏を過ごせた気がする。
るんるんと鼻歌混じりで…。
夜道、風を切って、自転車を漕ぐ。
いつもと変わらぬ帰り道。
夏、終わる。




 
2020年09月20日 23:57

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