ドーナツを買って
日差しがようやく穏やかになった。寒さは苦手だから、暖かな日差しがとても嬉しい。
公園には梅が咲き、民家の花壇で菜の花がそよ風に揺れている。
散歩中、ミモザと桜が同時に咲いているのを楽しむことができた。
待ちに待った春がきたのだ。
心が自然と華やぐ。
まだほんのちょっぴり肌寒いけれど、あともう少し。
木々には緑が芽吹き、もうすぐ色鮮やかな花々を楽しむことができるだろう。
これからもっと春が深まるはずだ。
本当に楽しみ。
心も春めく。
ウキウキとした心のざわめきを鈴音に、近くにできたドーナツ屋へ行く。
あまーいドーナツを食べれば、心がもっと賑やかになるかも。
スタッフたちも喜んでくれるだろう。
ドーナツを購入し、陽気に誘われるように神崎川まで足を伸ばす。
三国橋。
お気に入りの場所だ。
小さな橋の上を自転車や徒歩の人々が行き交っている。
176の迂回路のせいか、とてものどかだ。
昔、三国の渡しといわれた、その往時の面影がなんとなく感じられる。
見渡せば、すぐそこに大きな橋。
阪急の高架も見え、マルーン色の電車が目の前をがたごと走り抜ける。
欄干に手をつき、川を見下ろした。
穏やか波模様。
潮の香りがかすかに漂ってくる。
キラキラと春の日差しが水面に反射し、河川敷に生え始めた草々がうっすら青い。
とてものどかで気持ちがいい。
揺れる波模様を見つめながら、見たこともない大河の流れに思いを馳せる。
遠いドニエプル川の流れはどうなのだろう。
こんな穏やかさであればいいのだが。
ガスも電気も使えない。
食糧もない。
かの地に流れる川はまだ冷え切っているのだろうか。
きらきらとした川面を眺めながら、紙袋からドーナツを取り出す。
人目を気にしながら、かぶりつく。
今日に限ってなぜかそれほど甘く感じない。
気持ちの問題のせいだろうか。
凍てつくような寒さの中、肥沃な地に流れるあの川に、早く平和という春が運ばれんことを。
2022年03月14日 10:19